孫子 第11章 九地篇 55 兵を往く所毋きに投ずれば - 敵地深くに侵攻した軍が取るべき行動とは?

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■ 外征軍が成功するためには?

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

敵国内に進攻して上手に戦う方法としては、

1)徹底的に奥深くまで侵入する
行き場のない自軍の兵士たちは結束するので、散地(故郷が近すぎて兵士たちが逃亡するリスクのある場所)で戦う迎撃軍は対抗することができなくなります。

2)兵士たちに望郷の念を抱かせない
複雑に軍を移動させては策謀を巡らし、自軍の兵士たちが目的地を推測できないように細工しながら、最後に軍を八方塞がりの状況に投げ込めば、兵士たちは死んでも敗走したりはしません。

3)兵士たちをあえて危地に追い込む
兵士たちは、あまりに危険な状況にはまり込んでしまうと、もはや危険を恐れなくなり、どこにも行き場がなくなってしまうと、決死の覚悟を固め、敵国内に深く入り込んでしまうと、一致団結し、逃げ場のない窮地に追いつめられてしまうと、奮戦力闘します。

それゆえ、絶体絶命の外征軍は、ことさらに指揮官が調教しなくても、自分たちで進んで戒め合い、口に出して要求しなくても、期待通りに働き、いさかいを禁ずる約束を交えさせなくても、自主的に親しみ合い、軍令の罰則で脅されなくても、任務を忠実に果たすようになるのです。

その他のポイントとしては、
① 肥沃な土地で掠奪すれば、全軍の食料も充足することができます。
② 慎重に兵士たちを休養させては疲労させないようにします。
③ 士気をひとつにまとめて戦力を蓄えます。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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孫子が実際に戦を実践していた古代中国の事情を知らないと、今一つ、この節の説明が頭に入らないと思います。大前提として、当時の軍隊は徴募された農民兵であるため、一般的に士気が非常に低い状態にあります。それゆえ、自国防衛のためではなく、わざわざ敵国まで出かけて行って戦を仕掛ける際には、中途半端な侵入に留まって軽地(まだ母国に近く、兵士たちはまだ望郷の念を捨てきれず、進みにくくて退きやすい場所)で敵と戦うことになれば、兵士たちは逃亡による生還を夢見て戦意喪失すると考えられているのです。そこで、すばやく敵国の奥深くに侵入したうえで、兵士たちが行先に感づいて怯えないように、わざと自軍を逃げ場のない窮地へと投げ込み、一見して帰国の望みが少ない状況を作り、兵士たちに必死の覚悟を決めさせるという、具体的な戦場の設定方法を兵士たちの心理を読んで説いているのです。

孫子の心理戦の奥深さの一端が垣間見られます。絶体絶命に陥った兵士たちは、指揮官が調教しなくとも、自発的に互いに協力し合うなど、現代ビジネスにおける中間管理職にとっても、とても理想的な組織統率方法ではありませんか?(笑)

確かに経営危機に陥った企業では、従業員が一致団結し、V字回復で業績を立て直すというケースはよく耳にします。背水の陣というか、窮鼠猫を噛むというか、リスクとうらはらの統率方法ですね。

ただし、孫子が説く進攻軍の在り方は、上記のような兵士の心理を読むだけが理由ではありません。あえて敵国深くに入り込むことで、迎撃軍が侵入軍殲滅の好機とばかり集結した所を一網打尽に撃破することで大勝利を収めようという理屈も実はあるのです。つまり、ただ一度の大会戦で速やかに勝負を決定づけ、外征がもたらす国力の消耗を最小限に抑えるという意図もあるのです。

ただでは起きない! 一つの行動に複数のメリットを持たせる。そういう指揮官に私はなりたい!(^^;)

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