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孫子 第11章 九地篇 58 諸侯の情は、遠ければ則ち禦ぎ - 九種の地勢によって戦術を使い分ける

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 九種の地勢によって軍を指揮する方法を使い分けます。状況見えていますか?

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敵国への侵攻が深ければ、兵士たちは一致団結するが、入り方が浅ければ兵士たちは逃げ散ってしまうでしょう。九種の地勢での対応方法は次の通り。

(1)散地(さんち)
自国領地
→散地では戦意が固まりにくいから、指揮官は兵士たちの意志を一つにまとめようとします。

(2)軽地(けいち)
浅く踏み入れた地域

→軽地ではこの段階で敵に阻止されては困るので、指揮官は敵の目につかぬよう軍をこっそりと通過させようとします。

(3)争地(そうち)
奪い取った方が有利になる箇所

→争地では、指揮官は先に争地を占領した敵軍がそこに居座れないようにしようとします。

(4)交地(こうち)
自軍も敵軍も自由に行き来できる箇所

→交地では不意に現れた的に見方を分断される恐れがあるから、指揮官は各部隊の連結を堅固にしようとします。

(5)衢地(くち)
諸侯の領地に三方で接続していて、先着すれば諸国と好を通じて天下の人々の支援が得られる箇所

→衢地では、交通の便を利して諸国に使節を送り、頼みとする諸侯たちとの親交を念入りに結ぼうとします。

(6)重地(じゅうち)
敵国深くに侵入し、多数の敵城を後方に背負っている箇所

→重地では、途中の敵城に足止めを喰わぬように、指揮官は後続部隊の進軍を急がせようとします

(7)泛地(はんち)
山林や沼沢地を踏み越えて、進軍が困難な箇所

→泛地では、敵襲への機敏な対応ができないから、指揮官は軍を早く先に進めようとします

(8)囲地(いち)
侵入経路が狭く、引き返すためには通路が曲がりくねって遠く、敵軍が寡兵で見方の大部隊を攻撃できる箇所

→囲地では、脱出の時間的余裕を稼ぐために、指揮官は前方の通路を封鎖しようとします。

(9)死地(しち)
突撃が迅速ならば生き残れるが、突撃が遅れればたちまち全滅する箇所
→間髪をいれずに死闘する

→死地では、勇戦力闘を促すため、指揮官は兵士たちにもはや生還の望みがないことを思い知らせようとします。

これを踏まえて、諸侯たちの心情を推理します。

1)侵攻軍がまだ自国の中心部から遠くを行動していれば、それ以上の侵入をその線で防ぎ止めようとします
2)奥深くまで侵入を許し、首都など重要拠点を攻撃されて、のっぴきならない窮状に追い込まれれば、はじめて主力軍を繰り出し得て決戦しようとします
3)侵攻軍が自国の中心部を通り過ぎて危機が去ってしまえば、今度は追撃したがるものです。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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孫子がこう説くのは、古代中国の戦争終結の方法が次のように考えられていたからです。

九地篇における最大の眼目は、敵の主力軍との大会戦によって一挙に勝利を収め、戦争を短期に効率よく終結させようというものです。この狙いを実現するためには、2つの条件が存在します。

① 旗下の兵士たちが軍を逃亡しないこと
② 旺盛な戦意で敵の主力軍を圧倒すること

この二つの条件をそろえるためにこそ、孫子は重地へと侵入し、わざと自軍を死地に投げ込む戦術を主張しているのです。こうすれば、自軍の兵士たちは、どこへも逃亡せずに悲壮な覚悟で死闘しますし、一方の敵も、自軍の中枢を攻撃されるリスクを取り除こうと、そして同時にこの機会に侵入軍を殲滅しようと、主力軍を差し向けてくることが予想されるからです。

決戦主義は、ナポレオンの時代を経て、第二次世界大戦まで軍略思想として残っていましたが、私は、楽をして勝負に勝ちたいし、楽に仕事をやっつけて終わらせたいので、できれば、敵は個別撃破して、抵抗が小さいうちにひとつずつ片付けていきたいと考えます。敵も仕事(課題)も小さいうちにけりをつけた方がいいと思うのですが、、、

策謀の無い行動と、戦力の逐次投入は、敗戦の理由にこそなれ、勝利への近道とは思いません。孫子の兵法といえども、逐語理解ではダメで、その時代背景や真のメッセージをちゃんと汲み取ることをしないと、本当に読み込んだことになりません。

この節は、

① 自軍の兵士を誘導して、士気を高めて戦に勝つ!
② 相手を誘導して、自軍に有利な戦術を適用できるように環境を整備する!

これを必勝のセオリーとしてください、と説いているのです。

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