孫子 第11章 九地篇 59 衆は害に陥りて、然る後に能く敗を為す - ギリギリの所まで追いつめて組織力を発揮させる

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■ 将は黙って指示出しをして、本心は決して明かさない!

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

諸侯たちの胸の内が読めないようでは、事前に親交を結ぶことはできません。
山岳や森林地帯、険しい要害の地や水沢地帯の地形を呑み込んでいないようでは、軍隊を行軍させることはできません。
地理に精通した案内役を活用しないようでは、地形がもたらす利益を享受することはできません。

この3点のうち、たった一つでも知らないようでは、王者や覇者の軍隊とは呼べません。王者や覇者の軍が、大国を討伐しにかかれば、その大国の強大な兵力は結集することができず、実際に敵国に武威を加え始めれば、その敵国の外交は孤立して諸国と同盟を結べなくなるものです。それゆえ、国際外交での勝利を敵国と争ったりせず、また天下の覇権を築き上げたりしなくても、自己の意志を押し通し、自国の利害を優先させながら、しかもその武威は敵国を圧倒していくのです。さればこそ、敵の国都も陥落させることができるし、城郭も破壊することができるのです。

法外な厚賞や、非常措置の厳命の効力は、全軍の大兵力を動かしながらも、まるでたった一人を使いこなしているかのようです。全軍の兵士たちを思い通りに動かせるには、ただ仕事だけを指令して、その理由を説明してはいけません。全軍の兵士たちを意のままに使役するには、ただ不利な状況だけを周知させて、その陰に潜む利益の面を教えてはいけません。兵士たちは彼らを滅亡必至の窮地に放り込んだ後に、はじめて命を長らえるのであり、彼らを死ぬほかない窮地に突き落とした後に、はじめて生き延びるのです。兵士たちは、とてつもない危険にはまり込んだ後に、ようやく破れかぶれの奮戦をするものなのです。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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「55 兵を往く所毋きに投ずれば」からこの節まで繰り返し、孫子が説いているのは、農民兵からなる士気と練度が低い徴募兵をいかに、将軍の思いのままに動かすかのテクニックを当時の社会状態に照らして説明しているにすぎません。現代日本のビジネス環境でも、どうしても短期工やバイト中心で現場を運営するために、こうした手法が採られることもありましょう。しかし、劇薬ですので、副作用には十分に留意して頂きたいと思います。

孫子のメッセージを集約すると次の通り。

1)どこそこの地点に直行せよとか、どこそこを攻略せよとか、表面的な任務のみを指示して、なぜそのように行動させようとするのか、その真意までを告知してはいけない

→理由:自軍を死地に投ぜんとする意図を、将軍(管理職)が心の内に秘めているから

2)自軍が既に死地に陥ったとの危害のみを兵士たちに思い知らせて、実はそれによって敵の主力を誘い出し、会戦で一挙に撃破できるといった利益の側面は決して知らせてはならない

→理由:将軍(管理職)が事前にそうした種明かしをしてしまえば、途端に兵士たちの緊張感がゆるむから

このように、孫子の主張には、動機や途中経過は一切秘匿したままでも構わず、要は所期の結果さえ達成できれば良しとする、秘密主義・結果主義の色彩が濃厚に漂っているのです。一種の愚民主義ともいえますが、戦意も技量も劣悪な烏合の衆を率いて戦わねばならない状況下では、これが最善の方法と言えなくもありません。

逆に、このような手法に違和感を覚える管理職の方は、部下や構成メンバの習熟度やモチベーションがある程度高い環境に身を置いているのでしょう。逆説的に、そういう職場の場合は、上記の孫子のやり方の真逆の方法、

① リーダーはビジョンをしっかりとメンバに説明する
② 途中プロセスや最終目標達成までの道のりを何度も周知徹底する
③ より良き知恵をだすために、メンバの意見まで求めて、合議を徹底する
④ メンバから出たアイデアを検証・評価するための、技量や経験をリーダーは備えておく

ということが必要である、といえます。書いてあることをそのまま鵜呑みにするのではなく、こういう風に読み込むことが古典に目を通す際の本当の姿勢といえるのではないでしょうか?(^^;)

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