孫子 第12章 用間篇 61 敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり -事を成す前に十分に情報収集を行うことの大切さとは

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■ 情報収集が会戦での勝利への近道である!

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十万規模の軍隊を編成し、千里の彼方に外征するとなれば、民衆の出費や政府支出は、1日千金ほどになり、遠征軍を後方で支えるために朝野(公共部門と民間部門)を問わず慌ただしく動き回り、物資輸送に動員された人員は補給輸送に動員された人民は補給路の維持に疲れ苦しんで、農事に専念できない者たちは70万戸にも達します。こうした苦しい状態で数年にも及ぶ持久戦を続けた後に、たった1日の決戦で勝敗を争うのです。

このように莫大な犠牲を払い続けながら、たった一度の決戦に敗北すれば、これまでの努力の全てが一瞬のうちに水の泡と消えてしまいます。にもかかわらず、間諜(スパイ、情報収集担当者)に爵位・俸禄・賞金を与えることを惜しんで、決戦を有利に導くために敵情を探知しようとしないのは、民衆の長い労苦を無にするもので、民を愛し憐れむ心の無い不仁の最たるものです。そんなことではとても民衆を統率する将軍とは言えず、君主の補佐役ともいえず、勝利の主宰者とも言えないのです。

ゆえに、聡明な君主や智謀に優れた将軍が、軍事行動を起こして敵に勝ち、抜群の成功を収める要因は、あらかじめ敵情を察知するところにこそあります。事前に情報を知ることは、鬼神から聞き出して実現できるものではなく、天界の事象になぞらえて実現できるものでもなく、天道の理(ことわり)と突き合わせて実現することもできません。そうした神秘的な方法によってではなく、必ず人間の知性の働きによってのみ獲得できるのです。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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第12章「用間」は、5種類の間諜(スパイ)を駆使し、敵の実情を事前に探知することの重要性を説く篇です。

孫子の真骨頂は情報戦の重視。なぜなら、戦争は大変なコストがかかる極めて不経済な行動だからです。したがって、できるだけ実戦を避けて、戦いの果実だけ得られるように努力することを最善と主張しているのです。戦争の高いコストはそのまま民衆への高い税金と強制労働につながりますので。

その一貫した主張は他の節にもたびたび登場します。

第2章 作戦編 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久を睹ざるなり

第3章 謀攻篇 9 戦わずして人の兵を屈する

ただ、その戦争思想は、「決戦主義」です。ただ一度の会戦で勝敗を決する。そのための準備をより怠った者が敗北する。そしてそれまでの努力を全て失う。孫子が活躍した時代はそういう戦争のやり方が主流でした。それゆえ、戦争をしないで有利な状況を作るのならば、市内で勝利の果実を得られる方法を選択しましょう、と主張しているのです。

その前に、そうした会戦で勝利するための準備の一環として、具体的な方法論として、「情報収集」の重要性をこの篇で説明を続けるのです。

さてさて、補助的情報ですが、孫子がこの書を著すまで、古代中国は、怪しげな陰陽流兵学の考えが一般的でした。例えば、彗星が現われ、その柄の方角に位置する軍が勝つ、という類のものです。現代ならば、そういう迷信めいたものは鼻にもかけないでしょうが、それはその時代時代の限界というものです。中世ヨーロッパでは、病気になるのは悪魔が体に入り込むから、という理由で、病気に対する治療は体の中から悪魔を追い出す「悪魔祓い」が中心でした。

原題ビジネスにおいて、徹底的に合理的に、理性的に、科学的に、コンペチターや消費者の動向を知りぬくことが勝利への近道であると読み替えることができましょう。その情報収集の方法は、AIによるビッグデータ解析なのか、それとも生身の人間の頭脳による情報分析なのか、それはそれぞれの得意分野を使い分けるのが肝要かと。この後の節で孫子の視点で、情報収集の方法論の使い分け方を学習していきましょう。

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