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孫子 第2章 作戦篇 7 敵の貨を取る者は利なり

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 競合(コンペチター)から奪ったシェアは通常の倍の価値があります

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敵兵を殺すのは、憤怒の感情からですが、敵の物資を奪い取るのは利益を得ようとする精神がそうさせるのです。

戦車戦で敵の兵車を十台以上捕獲したときには全部を最初に捕獲した部隊長に恩賞として与え、自軍の旗印に差し替えたうえで、賞を受けた者の部隊に加えます。

その戦功のあった部隊の兵卒には、特別に飲食を供与して厚遇します。

こうすることで、敵に勝つたびに、自軍の戦力を強めることになるのです。

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前節の「敵に食む」を承けて、今度は「敵の財貨を奪って我が物とする」ことを説いています。このことは、現代ビジネスにおいて、2つの示唆を与えてくれます。

ひとつは、競合(コンペチター)から奪った顧客の価値は、広く一般的な市場から獲得した顧客と比べて、競合との競争戦略上、単純に倍の価値がある、ということです。こちらのプラス10は、相手のマイナス10なので、合算して20の競争差が生じたとみなせるからです。

どうせシェア拡大競争をコンペチターとやるなら、ひとつ上の階層、またはひとつ下の階層に位置する競合から顧客を奪うことが効果的です。

もうひとつは、資金調達(財務戦略)の視点から、「自己金融(Self-funding)効果」が生じることです。これは、ファイナンスや会計の世界では、「減価償却費」や「内部留保」といった社内で発生するキャッシュフローから資金調達をすることを意味しています。

競合のシェアを奪って、売上規模・事業規模を拡大させると、決まって、事業拡大に必要な、設備投資や在庫増加、はたまた売掛金が回収されるまで、お預け状態になっている「未回収のお金」がどんどん増えていきます。事業運営するのに、資金供給が絶たれると、せっかく商機があるビジネスも日の目を見えなくさせられてしまいます。そこで、社外から資金を調達しようとしますが、これが結構苦労するのです。金融機関は貸し渋り、株主も一株当たり利益の希薄化を嫌って、増資を避けようとします。

結局のところ、自分が使うお金は自分で準備するのが一番確実な手段ということになります。しかし、急成長しているビジネスや、中長期的な先行投資が必要で、利益が上がるまで時間がかかるものについては、自分で資金を用意、ということはハードルが結構高くなります。

そこで、同じ社内なのですが、別事業で資金に余裕があるところから、お金を融通してもらって自事業の成長を図ろうとするのが、「PPM(Product Portfolio Management)理論」ということになります。

⇒「事業ポートフォリオ管理(3) - ポートフォリオ組み換え方法

でも同じ社内といっても、自分で稼いだ利益(資金)を他の事業部に回すなんて、ちょっと抵抗がありませんか?うまく、儲かっている人達を説得する必要がありますね。ですので、自分でシェアを高めて(競合から顧客を奪って)、その果実から次の資金を捻出する、これが一番使い勝手があるということになります。

多角化している企業の経営者は、こうした事業間の資金融通を上手にやる必要がありますね。

孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 7 敵の貨を取る者は利なり

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