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■ 絵本の出版にも潜む、あなたの身近に存在するイノベーションのジレンマ

コンサルタントのつぶやき

日本経済新聞日曜版の読書欄を読む時間は、忙しくて読みたい本も満足して読む時間を確保できない筆者の楽しいひとときです。そこに大変興味深い記事を発見したので皆さんとシェアさせて頂きたいと思います。

2016/5/8付 |日本経済新聞|朝刊 (活字の海で)読むだけではない 絵本が「参加型」に進化

「絵本が進化している。子供が自分でイラストなどを描いて本を完成させるものや、拡張現実(AR)技術を活用したものなど、「参加型」に仕立てた編集が目立つ。編集者の細かい工夫から、本の新しい可能性もみえてくる。
 今月刊行の絵本『なんかへんな日』(広済堂出版)は「50%えほん」と銘打っている。一部のセリフや絵が空欄で、読者が自由に描き込めるのだ。発案者はデザイナーの東海林太氏で、ロックバンド「チャットモンチー」のメンバー、福岡晃子氏らが制作に関わっている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

ここからは、この絵本の出版に漕ぎ着けることができたクラウドファンディングのホームページ、「Makuake」に掲載されている写真を転載させて頂きます。

Makuake |スチャダラパーBose&チャットモンチー福岡晃子と一緒に、君だけの絵本を作ろう!

この絵本を作ったのは、このふたり。

 

作った絵本は、この「なんか変な日」

どんな特徴があるかというと、

① お話の途中に空欄があるので、お子さんが自由にことばを書き入れられます。

 

② 絵が描いていない所があるので、お子さんが自由に絵を描き入れることができます。

 

③ 色が着いていない所があるので、お子さんが自由に色を塗ることができます。

この絵本の発売は5/5。既に手に入れられた方もいらっしゃるかもしれません。

 

■ イノベーションのジレンマは、ハイテク企業だけでの問題ではない

「「デジタル化の中で物が簡単に捨てられるようになった。親子で共有できて、物としても残る本を作りたかった」と東海林氏。出版社を回ったが、描き込みを前提とした絵本は図書館への納入が難しいとの理由などで話が進まない。ならばとクラウドファンディングの手法で出版費用を集めた。今後は親子で共に絵本に描き込みを行うイベントなどを開催し、本の新しい楽しみ方を提案したいという。」

従来の出版のビジネスモデルでは、描き込み前提の絵本は、図書館への納入が難しく、従来ならば、そこでこの絵本の企画はボツになっていたところです。しかし、ファイナンス技法で、新たな「クラウドファンディング」を用いて何とか資金繰りをつけて出版に漕ぎ着けました。そして今回、出版社から改めての発売にとつながったわけです。

絵本はすでに完成しているものをただ読むもの。そう思い込んで、「図書館に納入できないから、うちではその企画は無理です」と言ってしまうのも、すでにその会社が築いた市場の内輪ルールを壊すことができずにいたから。過去のビジネスの成功体験が次のビジネスチャンスを、既成のビジネス成功を破壊するもの以外の何物にも思えなくなり、手を出すことがためらわれてしまう。その実例は、何もハイテク企業だけに内在する問題ではないことの証左です。

そして、このジレンマは、ビジネスモデル全体におけるもので、製品の技術的進歩だけに限った話ではありません。この例では、「商流」もしくは「顧客セグメンテーション」と「資金調達」がその前に立ちはだかりました。

全ての企業についての警鐘となる小稿だと思い、ここに紹介させて頂きました。

 

■ (おまけ)ここにもAR(拡張現実)が。。。

この記事では冒頭の『なんかへんな日』のお話とは別に、最新のテクノロジーを駆使した絵本も紹介されています。

「講談社は3月、AR対応の絵本『おでかけ版 新幹線のたび with English』(コマヤスカン作)を刊行した。スマートフォンで専用アプリをダウンロードし、絵本上の路線名や駅名をスマホで読み取ると、関連情報や写真を見ることができる。担当編集者の森絵美氏は「アクセス数やニュース次第で関連情報の内容を差し替えてゆきたい」と話す。
 読むだけではない、触れて楽しむ絵本もじわじわと増えている。2月に福音館書店から出た点字付き絵本『ぞうくんのさんぽ』(なかのひろたか作・絵)は、透明な樹脂の凹凸で「水」や動物の肌を細やかに表現し、新鮮な読書体験を提供する。「視覚障害の有無にかかわらず、触る楽しさを味わってほしい」(同社)という。」

こういうケースは、典型的なテクノロジー型のイノベーションのお話し。これはこれで、既存の市場の中で、イノベーティブな新製品をいち早く提供し、顧客への価値提案を製品機能で押し切るスタイルのもの。これはこれで、世の中の生活をより豊かにしてくれるイノベーションの主流的な方法論ですが、デジタル全盛の時代に、アナログ的な『なんかへんな日』のようなプロセス・イノベーションがあってもいいんじゃないでしょうか。

※ 筆者の二人の子供も幼少の頃は、シールを貼ったり、水だけで色を付ける絵本を楽しんでいたり、ほほえましい光景を見せてくれていたことを、ほのぼのと思い出しています。今じゃ、めっきり会話することもなくなりましたが。。。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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(活字の海で)読むだけではない 絵本が「参加型」に進化『なんかへんな日』- イノベーションのジレンマはハイテク企業だけで起きているんじゃない!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭新聞記事・コラム50%えほん,AR,Bose,Makuake,なんかへんな日,イノベーションのジレンマ,クラウドファンディング,スチャダラパー,チャットモンチー,東海林太,福岡晃子■ 絵本の出版にも潜む、あなたの身近に存在するイノベーションのジレンマ 日本経済新聞日曜版の読書欄を読む時間は、忙しくて読みたい本も満足して読む時間を確保できない筆者の楽しいひとときです。そこに大変興味深い記事を発見したので皆さんとシェアさせて頂きたいと思います。 2016/5/8付 |日本経済新聞|朝刊 (活字の海で)読むだけではない 絵本が「参加型」に進化 「絵本が進化している。子供が自分でイラストなどを描いて本を完成させるものや、拡張現実(AR)技術を活用したものなど、「参加型」に仕立てた編集が目立つ。編集者の細かい工夫から、本の新しい可能性もみえてくる。  今月刊行の絵本『なんかへんな日』(広済堂出版)は「50%えほん」と銘打っている。一部のセリフや絵が空欄で、読者が自由に描き込めるのだ。発案者はデザイナーの東海林太氏で、ロックバンド「チャットモンチー」のメンバー、福岡晃子氏らが制作に関わっている。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます ここからは、この絵本の出版に漕ぎ着けることができたクラウドファンディングのホームページ、「Makuake」に掲載されている写真を転載させて頂きます。 ● Makuake |スチャダラパーBose&チャットモンチー福岡晃子と一緒に、君だけの絵本を作ろう! この絵本を作ったのは、このふたり。   作った絵本は、この「なんか変な日」 どんな特徴があるかというと、 ① お話の途中に空欄があるので、お子さんが自由にことばを書き入れられます。   ② 絵が描いていない所があるので、お子さんが自由に絵を描き入れることができます。   ③ 色が着いていない所があるので、お子さんが自由に色を塗ることができます。 この絵本の発売は5/5。既に手に入れられた方もいらっしゃるかもしれません。   ■ イノベーションのジレンマは、ハイテク企業だけでの問題ではない 「「デジタル化の中で物が簡単に捨てられるようになった。親子で共有できて、物としても残る本を作りたかった」と東海林氏。出版社を回ったが、描き込みを前提とした絵本は図書館への納入が難しいとの理由などで話が進まない。ならばとクラウドファンディングの手法で出版費用を集めた。今後は親子で共に絵本に描き込みを行うイベントなどを開催し、本の新しい楽しみ方を提案したいという。」 従来の出版のビジネスモデルでは、描き込み前提の絵本は、図書館への納入が難しく、従来ならば、そこでこの絵本の企画はボツになっていたところです。しかし、ファイナンス技法で、新たな「クラウドファンディング」を用いて何とか資金繰りをつけて出版に漕ぎ着けました。そして今回、出版社から改めての発売にとつながったわけです。 絵本はすでに完成しているものをただ読むもの。そう思い込んで、「図書館に納入できないから、うちではその企画は無理です」と言ってしまうのも、すでにその会社が築いた市場の内輪ルールを壊すことができずにいたから。過去のビジネスの成功体験が次のビジネスチャンスを、既成のビジネス成功を破壊するもの以外の何物にも思えなくなり、手を出すことがためらわれてしまう。その実例は、何もハイテク企業だけに内在する問題ではないことの証左です。 そして、このジレンマは、ビジネスモデル全体におけるもので、製品の技術的進歩だけに限った話ではありません。この例では、「商流」もしくは「顧客セグメンテーション」と「資金調達」がその前に立ちはだかりました。 全ての企業についての警鐘となる小稿だと思い、ここに紹介させて頂きました。   ■ (おまけ)ここにもAR(拡張現実)が。。。 この記事では冒頭の『なんかへんな日』のお話とは別に、最新のテクノロジーを駆使した絵本も紹介されています。 「講談社は3月、AR対応の絵本『おでかけ版 新幹線のたび with English』(コマヤスカン作)を刊行した。スマートフォンで専用アプリをダウンロードし、絵本上の路線名や駅名をスマホで読み取ると、関連情報や写真を見ることができる。担当編集者の森絵美氏は「アクセス数やニュース次第で関連情報の内容を差し替えてゆきたい」と話す。  読むだけではない、触れて楽しむ絵本もじわじわと増えている。2月に福音館書店から出た点字付き絵本『ぞうくんのさんぽ』(なかのひろたか作・絵)は、透明な樹脂の凹凸で「水」や動物の肌を細やかに表現し、新鮮な読書体験を提供する。「視覚障害の有無にかかわらず、触る楽しさを味わってほしい」(同社)という。」 こういうケースは、典型的なテクノロジー型のイノベーションのお話し。これはこれで、既存の市場の中で、イノベーティブな新製品をいち早く提供し、顧客への価値提案を製品機能で押し切るスタイルのもの。これはこれで、世の中の生活をより豊かにしてくれるイノベーションの主流的な方法論ですが、デジタル全盛の時代に、アナログ的な『なんかへんな日』のようなプロセス・イノベーションがあってもいいんじゃないでしょうか。 ※ 筆者の二人の子供も幼少の頃は、シールを貼ったり、水だけで色を付ける絵本を楽しんでいたり、ほほえましい光景を見せてくれていたことを、ほのぼのと思い出しています。今じゃ、めっきり会話することもなくなりましたが。。。(^^;) (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します