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一筋縄でない高ROE株  持続性と改善度に着目(1)

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■ 今回は投資家目線でROEを斬る!

経営管理会計トピック
本ブログは、株式投資指南が目的ではなく、あくまで企業経営に管理会計目線で切り込むことを目的としています。その限りで財務指標の作られ方・見方を議論しています。今回は、投資家からみた「ROE」について、すなわち、「外部からROEがどう見られているか」を意識して経営管理にあたって頂きたい、という趣旨で新聞記事を深堀りしていきたいと思います。

2014/12/10付 |日本経済新聞|朝刊
一筋縄でない高ROE株  持続性と改善度に着目

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「株式市場で自己資本利益率(ROE)が脚光を浴びている。政府の成長戦略がグローバル水準のROE達成を目標に掲げ、ROEの向上を意識する企業も増えているからだ。投資指標としては、どう活用できるのか。」
「ROEは企業の純利益を自己資本で割った数値。自己資本は株主が出資した資本金やそれを使って稼いだ利益の蓄積などで、株主の持ち分とみなされる。株主からすれば、その持ち分を企業がどれだけ効率的に使って利益を上げたか、持ち分の運用利回りを示す重要な指標だ。」

■ 高ROE株を買っても必ず儲かるわけではない理由

新聞記事によると、マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストから、「単純に高ROE銘柄を買ってはいけない」と注意を喚起されています。
その理由として、次の3点を指摘されています。

① 実績ROEが高い銘柄は、株価が資本効率の高さをすでに織り込んでいる
② 日本市場では高ROE銘柄などより割安株が好まれてきた
③ 日本では高いROEを維持できる企業が少ない

①は、投下資本からのリターンの高さが高ROEで証明されている企業の株は、投資家から人気で、すでに好んで買われているので、既に株価が高くなっており、もう一段の株価上昇が難しいということを意味しています。
②は、株式市場が上昇局面にある場合、資産価値に比べて株価が安い「低PBR」株の株価上昇率の方が、「高PBR」株の上昇率より高いことが経験則から分かっており、と同時に「高PBR」の株は「高ROE」の確率が高い、ということを意味しています。
ちょっと、これは「ROE」と「PBR」という指標の関係性に対する説明不足があると思うので、補足します。
(詳しくは、「動くか長期マネー 海外投資家に聞く(上)」をご覧ください)

PBR = ROE × PER

という関係が成立しており、それぞれ分解すると、

(時価総額 ÷ 自己資本) = (純利益 ÷ 自己資本) × (時価総額 ÷ 純利益)

となります。
PBRは、既に「時価総額 = 株価 × 株式数」という株価が既に計算式に組み込まれている指標なので、「PBRが高い・低い」ということが、「株価が高い・安い」ということを完全に説明しきれないのですよね。だって「説明変数」の中に「被説明変数」が組み込まれていることになるので。
「『高株価』の株は高い」って、説明になっていませんよね。
それと、「高ROE」 = 「高PBR」 という恒等式も、「PER」が一定である、という前提条件が必要になるので、この時点で、数学的に恒等式とはならないですよね。
この辺は、有名な経済紙の記事といえども、説明をそのまま鵜呑みにしないでください。
③は、「ROEの平均回帰性」ということで、新聞記事内にて明快な説明がされているので、その部分を下記に引用します。
「ROEの高い企業は効率的に稼ぐほど、分母の自己資本が増えてROEには低下圧力がかかる。利益率の高い事業への投資でROEを維持したくても、そんな新規事業はなかなか見つからない。一方、低ROE企業も景気や市況が回復するとROEはそこそこ改善する。結果として、資本効率の高い企業と低い企業のROEは時間の経過とともに平均的な水準に収まっていく。」

■ 上手にROEを投資に活用する方法

とすると、「ROE」は投資尺度にはならないのか、という疑問にぶち当たります。そこで、大和証券の吉野貴晶チーフクオンツアナリストがきちんと指南をしています。
① 高ROEを維持できる企業の株を買うこと
② ROEがこれから上昇する企業の株を買うこと
そして、ダメ押しで、田辺経済研究所の田辺孝則代表が「高ROEを持続する企業は株価が高くても長期保有できる銘柄が多い。ROEは長期投資では大切な指標」とアドバイスしてくれています。
しかし、①も②も、それが分かれば苦労しません。そして、企業経営サイドも、高ROEを維持したいし、ROEを今よりもっと上げていきたいに違いありません。
②については、中期計画を丹念に読んで、将来ROEの予測精度を上げる、ROEの数値目標が掲げられている場合は、チェックすること、だそうです。
①については、吉野氏から、高ROEを維持する企業の条件として次の3点が挙げられています。

1.「売上高成長率」が高いこと
2.「自己資本比率」が高いこと
3.「売上高営業利益率」が高いこと

それぞれ理由も付されています。

1.「売上高成長率」:売上の伸長は利益の源泉だから
2.「自己資本比率」:景気変動への高い抵抗力があるから
3.「売上高営業利益率」:経費削減や市況回復などでROEが改善しても一過性で終わりかねないので、安定的で高い利益率が必要だから

これらの、条件を備えた企業が10社、「高ROEの持続が期待される主な銘柄」として表になっていました。下記に、転載します(どの時点の実績ROEかを明確にするために、決算期は筆者が追記しました)。

会社   実績ROE (%)   決算期
カカクコム        40.4 2014/3期
エムスリー        28.3 2014/3期
日本ペイントHD        18.1 2014/3期
良品計画        17.0 2014/2期
エービーシー・マート        16.6 2014/2期
シスメックス        15.6 2014/3期
ツルハホールディングス        13.2 2014/5期
ファーストリテイリング        12.5 2013/8期
キーエンス        11.3 2014/3期
ファナック          9.7 2014/3期

ここで、ようやく筆者の財務分析の出番です。次回は、この10社が選ばれた根拠になっている3つの財務指標について、筆者の分析結果をお伝えしたいと思います。

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