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三菱電、資産効率上げ 今期単独 回転率10.9回と最高

経営管理会計トピック とことんROE
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■ 自己資本利益率(ROE)の10%以上継続達成に向けて

経営管理会計トピック

2014/9/9付 |日本経済新聞|朝刊
三菱電、資産効率上げ 今期単独 回転率10.9回と最高

三菱電機がROE 10%以上達成の施策として、今期の棚卸し資産回転率を過去最高の10.9回に引き上げることを目標としました。
まず、ROEの計算式を確認しましょう。(←昨今の連結財務諸表の細かい表示規則は一旦忘れてください)
ROE = 当期純利益 / 自己資本
= (当期純利益/売上高) × (売上高/総資産) × (総資産/自己資本)
= 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
記事からは、FA機器などの主力事業が好調で、今期も純利益は前期比14%増の1750億円と過去最高を更新する見通しだそうです。そこで、右辺の真ん中にある「総資産回転率」を向上させ、さらにROEの上昇を目指す、という財務戦略のようです。

■ ROEの計算は合っている?

前期ROEは、10.9%だそうです。この数字がどう導かれたか、まず確認しましょう。新聞報道の数字は鵜呑みにせず、自分で検証することが勉強になります。
以下の数字はすべて第143期の「有価証券報告書」からの抜粋です。(EDINETより)
三菱電機 ROE
なるほど!三菱電機の会計部門は、ROEを「経済的単一体説」ではなく、「親会社説」で作成しているようです。また、計算技法として、「平残」方式を採用しているようです。
では、同じ記事で取り上げられている単独の前期棚卸し資産回転率の10.72回を次に検証してみましょう。
三菱電機 棚卸し回転率
なんと!こちらは、「平残」ではなく、「期末在高」方式で計算しているようです。

■ 本当に大事な指標でしょうか?

さらに、資産効率を高めるために、棚卸し資産の効率化を重視するという方針を確認しましょう。
連結で、棚卸し資産の総資産に占める割合は、記事に倣(なら)って「期末在高」方式で、

  • 602,341(百万円)÷ 3,612,966(百万円)× 100 = 16.7%

単体では、

  • 231,425(百万円)÷ 2,421,659(百万円)× 100 = 9.6%

新聞報道では、他の電機大手に比べて単独業績の重要性が高いとのこと。しかし、総資産に占める棚卸し資産の割合は、単体では1割以下。これはどのような財務戦略が裏に隠されていると解釈すればよいのでしょうか?
ちなみに、連結財務諸表では、総資産に占める割合が一番大きいのは、売上債権:983,468(百万円)で、総資産に対する構成比は、27.2% になります。
ROE計算式の右辺と左辺で、「平残」方式の採用の有無が異なり、「親会社説」による当期純利益で資産効率を測り、さらに、いちばん割合の大きい資産項目を優先して管理しようとする意思が感じられない、、、記者のインタビュー時に何かの行き違いがあっただけですよね。

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