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(池上彰の大岡山通信 若者たちへ)新しく踏み出す君に(39)目標は常に実力より高く

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■ コラムの孫引きで4月から一歩踏み出す若者に伝えたいメッセージを!

コンサルタントのつぶやき

毎週楽しみにしているコラムのひとつから、新社会人に向けたメッセージに目が留まりましたので、孫引きになるのですが、さらにコメントを上書いていきたいと思います。池上氏が、この3月までNHKのニュース番組「ニュースウォッチ9」でキャスターを務めていた大越氏のコラムを引用しています。なんと、大物二人のコラムにさらにメッセージを付す大胆さ!

2015/4/6|日本経済新聞|朝刊 (池上彰の大岡山通信 若者たちへ)新しく踏み出す君に(39)目標は常に実力より高く

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「彼は少年時代から大学まで野球に打ち込んできました。その彼が高校時代に監督から教わったことをコラムの中で披露しています。

 〈平凡な内野ゴロを打ってしまったとき。それでもうまくすれば内野安打になるかもしれないし、相手野手がお手玉をするかもしれません。コンマ1秒でも早くベースに到達するためにどうすればいいか。そこで口を酸っぱくして言われたのが、ベースの2~3メートル先をベースと思え、という言葉です。ベースそのものを目標にすると直前でスピードが落ちてしまうし、気持ちが勝ってヘッド・スライディングをするのも得策ではないと教わりました。

 ベースがその先にあると心得ることで、スピードを落とすことなく本物のベースを駆け抜けることができるというわけです〉

 この監督のアドバイスを、大越氏は自己への戒めにしてきたそうです。私は、この言葉を、若者たちに送りたいと思ったのです。」

と、まず池上氏が大越氏のコラムを紹介しています。

「勉強でも仕事でも、目先の目標があります。でも、それを目指していたのでは、それより大きな業績を残すことはできません。

 自分の実力より高い目標を目指して、一歩一歩進んで行く。ふと気がつくと、当初の目標をクリアし、その先に進み出している。そんなことが可能になるはずなのです。「ベースの2~3メートル先」を目標に努力してください。きっと成果が出るはずです。」

という感じで、池上氏が学生や新社会人に向けてメッセージを手向けています。
次章で理由は説明していますが、こういう高めの目標設定は、あくまで自己管理のためにご活用ください。

 

■ 強い共感を示すと共に、注意事項もお伝えいたしたく

同様の話は、戦国大名の毛利元就の逸話にも見られます。
(「江譜拾遺」より)

まだ元服前の頃、家臣と共に厳島神社へ参拝に行った際に、家臣が「松寿丸(元就の幼名)様が安芸の主になられるよう願いました」と願掛けの内容を披露したところ、元就は「天下の主になると祈願して、やっと中国地方が取れよう。まして、最初から安芸一国を目標にしていたのでは、安芸一国すら取れず仕舞いだ」と返したといわれています。

私は、この話を胸に、大学生の頃、ディベートサークルの共同創設者として、サークル活動を盛り上げようと、メンバ拡大に奔走していました。当然、幹部メンバにこの逸話を披露して、協力をお願いしました。しかしながら、私の話を聞いた幹部メンバからは、「そういう無理はしたくない。純粋に活動を楽しむためにサークルに参加しているのだから。創設者の自己満足に付き合う義理は無い」とにべもない答えが返ってきただけ、という苦い経験があります。

後々、組織拡大の目標設定が創設者としての全くの独りよがりであることに気が付きました。きちんと組織参加者全員の意識の共有がなされていないといけませんね、という教訓になりました。

サラリーマンになっていろんな上司にお仕えし、コンサルタントとして様々な企業の経営者にお会いした中で、時々、そういった自己満足の充足のためだけに組織を動かし、部下を指揮し、事業を営んでいる方を目にすることがあります。

成果主義を敷いている成熟企業で、各事業部長に中期経営計画の元ネタとして、3年後の売り上げ目標をヒアリングして回り、全事業部長の言い値で売上目標を合計したところ、今期の売上高見込みの3倍以上になってしまい、慌てて企画スタッフが下方修正に汗をかいた、という場面にも遭遇したこともあります。

それでも、ある事業部長は、「経営会議では、企画スタッフから言われた数値で全社計画資料を社長に見せてもよい。しかし、事業部ごとの発表では、自分の(強気の)売上計画を報告する」と頑として修正案を受け付けず、我を通しました。3年後、企画スタッフが調整した数値よりもさらに実際は下回り、目標は未達に終わりましたが。。。

報告を受ける社長も、実は、その事業部の実情を分かった上でその報告を受けていました。あくまで現場の士気を損なわないことだけを重要視して。成果主義による人事評価制度の導入直後だったので、高めの目標を言った者勝ち、という間違った風潮が蔓延していました。事業部スタッフも苦笑いしながら、「3年後は、どうせこの役員は他事業部に異動になって、計画未達の責任を負うことはないから。でも強気の目標を言った方が、初年度の評価は高く出るからね。しょうがないよ!」と語ってくれたことがあります。

私は、管理会計の視点から、P/Lだけ意識して高めの売上目標を設定することは、

① 3年後の高めの売上目標を達成するためには、その実現を裏打ちする先行投資がB/Sの資産に乗ってくるため、設備投資の厳格な目利きが必要。固定費の回収漏れだけは回避したい

② 上記①と設備投資用の資金と、売上規模が急拡大した時には、運転資金が不足するので、財務部と調整して、資金調達計画をしっかり練らねばならない

という点から、ファイナンス面に不安を残すため、B/SやC/Fにも留意した中期経営計画にすべきと提言したことがあります。

でも、上には上がいるものですね。資金調達を担当していた財務部長は、全社中期計画を表面上だけ受け入れ、財務部内だけの秘密の我流事業計画から資金需要を読み取り、勝手に資金調達計画をウラで作成していました。

ムリ目の経営計画は、至る所に支障が出てきます。
(こういうのを「予算スラック」といい、ムダな社内管理活動のひとつです)

最近流行のクラウドファイナンスの手法に、「ストレッチゴール」というものがあります。

「当初の調達目標金額は●●円です。でも、この目標金額を超えて■■円を達成したら、▲▲サービスを追加提供します」

こういうオプション計画手法を取り入れた方が、単純な高めの目標を与えて「ガンバリズム(もう死語でしょうね)」で組織を運営するよりは、適切な目標管理になりそうです。

その辺の、知恵出しもまた機会があったらご紹介したいと思います。

いやあ、池上氏や大越氏のコラムへの共感コメントから、結局は会計の話になってしまいましたね。

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