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絶対値とコンサルティング  - コンサルタントに必須な素養とは?

所感
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■ 「絶対」は「絶対」に無い!?

コンサルタントのつぶやき

いきなりアニソンの一節で恐縮です。

「いつだって
 絶対 なんて 言葉 なんか ないんだ 絶対」

題名:monochrome
作詞:meg rock
作曲・編曲:kz
歌:Dancing Dolls

私も、「絶対」なんて「絶対にない」と心に言い聞かせて日々のコンサルティングサービスを実践しております。「絶対」と最初から決めてかかると、あらゆる可能性や課題を見逃してしまいがちになります。そうすると、目指すべき課題解決や課題発見のゴールに到達することが難しくなります。

しかし一方で、逆説的なのですが、クライアントは「絶対」をコンサルタントに望みます。そしてコンサルタントも「これは絶対に●●です」といってプレゼンをするのが常でしょう。それは、クライアントがコンサルタントに「絶対」と言ってもらうことで「安心」を得たいからです。

そして、私もクライアントに「絶対」を提供しています。目的は、クライアントに「安心」をお届けするため。それじゃ、他のコンサルタントと変わらないじゃないか、と突っ込みがありそうですが、「絶対」の提供方法が違います(と自分では思っています)。

それは、「結論」を「絶対に●●です」と言明するのではなく、クライアントの賢明な決断に資する判断基準となるような「絶対値」を示す、という意味です。つまり、「判断基準」「クライテリア」を提供する、ということです。

プレゼン用の資料(パワーポイント等を使ったスライド)を一枚作るにしても、「時間軸」「金額軸」「百分率」「事業分類」「地理的分類」「業種」など、スライドの縦軸、横軸を必ず明確にした資料作成を心がけます。それは、グラフでなくても、概念図でも同じ。大きな概念は上に配置して詳細は下に配置する、プロセスフローを示す場合は、左から右へ時間が流れるように作図する、などなど。

「時間」「金額」はより客観的な基準で、「事業分類」や「業種」などは、より主観的な分類なので、なるべく客観的な基準で説明することを心がけています。そうすると、聞いている方も、論点の座標が明確になり、安心してジャッジできることにつながります。

 

■ でも「客観的な基準」は本当に「絶対」なの?

これだけだと、一人のコンサルの心がけの発表文になるので、読んでいて面白くないですよね。そこで、「客観的な基準」についてもひとこと(というよりここからが本番で話が長くなります!)。

まず「時間」ですが、皆さんは1日の長さはどれくらいかご存知ですか?

決して皆さんを馬鹿にはしていませんよ! そうです。1日は24時間ですね。ですけど、この前の2015年7月1日は、いわゆる「うるう秒」があって、1日の長さが、24時間と1秒でした。

これは、以下のように、1秒を決めるやり方の変遷を見ると大変興味深いものがあります。

「従来」:地球の自転
・南中(太陽が真南に来た時)から次の南中までの時間の8万6400分の1
 ↓
「1956年~」:公転
・太陽を1周する時間の約3155万6926分の1
 ↓
「1967年~」:原子時計
・セシウム原子が91億9263万1770回振動した時間(→いわゆる原子時計)

セシウム原子が、、、とやると、地球の自転が、月の引力(による潮の満ち引き)や、巨大地震や台風といった気象変化により微妙に変化するため、「うるう秒」で「原子時計」とのズレを調整する必要があるのです。でもこのズレって、「原子時計」の方を正しいとするから起きるんですよね。

つまり、自然科学の分野でも、何を「絶対基準値」に採用するかで、何が相対的に補正されるべき対象か、どれくらい補正すべきか、変わってくるということです。

いわんや、コンサルの資料をや!

所詮、社会科学(ここでは一旦ビジネスや経営の領域とお考えください)なんて、主観的判断の妥当性を評価するにすぎません。こんなところで、「絶対値」による「絶対的評価」なんて成立するはずがないんです!

自然科学の話に戻り、今度は「長さ(高さ)」をやってみましょう。所詮、「測量」技術の話になってしまうのですが、エベレストの高さは何メートルかご存知ですか?

ご存知ない人でもググればすぐにわかります。  8848メートルです。

でも、この8848メートルも、1950年代にインドの調査隊が「三角測量」という方法ではじき出したもので、全地球測位システム(GPS)を使うと違う結果がはじき出されました。99年に米国の学術調査隊が8850メートル、2005年に中国の政府機関が8844メートルと発表しています。

これらの差異というのは、単に「三角測量」か「GPS」か、という測量技法の違いだけでなく、そもそも山の高さの定義には、雪や氷の厚みを含むので、そりゃ気候条件の変動により、それらの厚みも年々変わっていくわけです。さらに、エベレストがあるヒマラヤ山脈自体が、ユーラシア大陸とインド亜大陸がぶつかり合って盛り上がって形成されているわけだから、プレートテクトニクス理論的には、年々エベレストの高さは高くなっていくわけ。

自然科学の分野でも、ついつい、

「絶対 なんて 言葉 なんか ないんだ 絶対」

といいたくなりますよね。

 

■ もうすぐ七夕ですね?

最後に、自然科学と社会科学の交差するところでも、「絶対」が無いということをお話します。

みなさん、七夕は何月何日ですか?

また、馬鹿にするな! と怒られそうですね。 それともまたひっかけがあるかと、用心しました?

そうですよね。7月7日ですよね。 でも、不思議じゃありません? 7月上旬といえば、梅雨真っ最中です。夜空を見上げても星が見えることは極めてまれです。それなのに、どうして「織姫(ベガ)」と「彦星(アルタイル)」が見えていること前提で、二人の恋バナ(逢引、古っ、今風に言うとデート)が伝承や行事になるんでしょうか?

それは、明治6年(1873年12月3日)に、旧暦(太陰暦)から新暦(太陽暦:グレゴリオ暦)に切り替わり、おおよそ、季節が1ヶ月早くなったからです。つまり、七夕の伝承や行事が社会に浸透したのは、現在の8月の良く晴れる時期の夜空を見上げてのことだったのです。

それでは、旧暦の7月7日は新暦の何月何日か? すみません。これは一概に言えません。だって、そもそも旧暦は月の満ち欠けで決まるので、毎年の太陰暦での7月7日は太陽暦では変わってしまうんです。ちなみにですが、2015年は太陽暦で8月20日、2016年は8月9日になります。

それゆえ、明治の世の人の知恵で、新暦の8月7日を伝統行事的な「七夕祭りの日」にしている代表例が仙台の七夕まつり。新暦に1ヶ月足したものを「中歴」といって、これに従って、毎年、8/6~8の三日間、仙台では華やかな七夕飾りを見ることができます。

300px-Sendai_Tanabata_Festival_2010

結論。七夕は何月何日? それは、新暦だと「7月7日」、中歴だと「8月7日」、旧暦だと8月の不定日。おそらく、こう回答すると、質問者に嫌われること間違いなし!

と、同時にコンサルタントに必要な素養は、「絶対」が無いことを前提に議論ができ、あまつさえ日常生活に支障がでないこと。簡単に言うと、他人や世の中の常識にとらわれない、自由人であることです。もっと本音でいうと、「自己中」であること。

私ですか? もちろん、自己中のかたまりです!

最後の最後に七夕の薀蓄をダメ押しでもう一つ。

「織姫(ベガ)」と地球の距離は25光年、「彦星(アルタイル)」と地球の距離は17光年。だから、短冊に願いを書いて笹に飾っても、その願いが神?に届くのは、光の速さでも17~25年後。ですんで、だいたい20年後にかなえて欲しい願いを短冊に書きましょう、と純真な子供たちに教えてあげてください。そして、ベガとアルタイルの間の距離は16光年。年1回のデートはそもそもできっこないのだよ、と真実を伝えてあげましょう!

そうです。コンサルタントのもう一つの必須な素養。それは「理屈っぽくあること」。よく言うと、真理の探究を恐れない、知的好奇心の塊であること。私はこっちも合格であると自負しています。(^^;)

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