経営デザインシートとは
経営デザインシートは、内閣府が2018年5月に公表したビジネスモデル構築を支援するツールです。この経営デザインシートがすばらしいところは、
①シンプルで一覧性のあるフォーマットを採用している
②使い方や作り方の説明が簡潔でかつ分かりやすい
③どうして経営デザインが必要であるかの意味付けを明確にしている
という3点です。それに加えて、④内閣府 知的財産戦略本部という公的機関がお墨付きを与えている「権威付け」も大きな特徴になるでしょう。
外部リンク 経営をデザインする|知的財産戦略本部|内閣府まずは、その最終完成物である1枚ものの経営デザインシートの構成を見てみましょう。
17個のブランクを埋めることで完成します。当然、17個の空白欄を一気に埋めることは大層骨が折れる作業には違いありません。でも、この経営デザインシートは皆さんが納めた税金で作成されたものなので、きちんと専門家による作り方(ノウハウ)も一緒に提供されていますので安心してください。
そのガイドラインにしたがってワンステップずつ空欄を埋めていけば、きっと完成させることができるはずです。また、必ずここから書き始めるべき、という型にはめた運用というより、柔軟に書けるところから、書き始めるというアプローチを採用しているので、その点も、とっつきやすいツールのひとつではないかと思います。
デザイン経営の大切さ
左記が、経営デザインシートのロゴマークになります。このロゴマークは、基本的に、公序良俗に反する使い方をしない、勝手に意匠を変える(文字、色彩、縦横比率等)を変えて使用しない限り、だれでも「経営デザインシート」の活用促進のためなら使えるというものです。最初に、このようなロゴマークの使用についての規定が示されているところが、知的財産戦略本部らしいではありませんか。
考え方」を理解しかつこれに賛同して刊行物等を作成して公表し、又は「経
営デザインシート」に関連するイベントを開催する者は、第3項各号に掲げ
る場合を除き、当該「経営デザインシート」、資料又はイベントに関連する
物品等にロゴマークを使用することができます。
内閣府知的財産戦略推進事務局『「経営デザインシート」ロゴマーク使用要領』より
ちなみに、英語のロゴマークもきちんと用意されています。
なぜ、英語のロゴマークまでご紹介したかというと、「Business Management Design Sheet」という英訳にも注意を払って頂きたかったからです。
Business:
事業そのもの。市場、顧客、提供価値、提供商品(財、サービス)、サプライヤー、規制など、事業を構成する必須要素のすべてが、このシートの記述対象範囲に含まれます。
Management:
ミッションやバリューなど、会社の存在価値に立脚した基本的考え方、従業員や経営者の行動様式(ビヘイビア)、内在する自社の強みを探す・増やす営み。企業運営に必要が要素がすべてこのシートに含まれます。
Design:
最近、デザイン経営というものがもてはやされるようになりました。こちらは、経済産業省・特許庁「産業競争力とデザインを考える研究会」が2018年5月23日に公表した『「デザイン経営」宣言』(外部リンク)から、2枚の挿絵を抜粋・引用させて頂きます。
デザインは、企業が大切にしている価値とそれを実現しようとする経営意思を表現する営みです。その価値と意思が顧客に正しく伝わることで、他の企業とは代替することができないブランド価値を顧客に生じさせることができます。
また、デザインは、顧客(消費者)自身の潜在的ニーズを掘り起こす力も合わせ持っています。供給者の思い込みを排し、潜在的ニーズと企業の意思と照らし合わせて、他者にはまねできない企業価値を提供するためには、誰のためにどんな価値を提供すべきかを具現化するデザイン(消費者がハッピーと思える財・サービスの使い方)を考えることが最も効果的だからです。
もうひとつのデザインの効能は、単発的な発明(Invention)を、生活に根差した社会的なイノベーションに昇華させるための触媒ともなり得ます。
2019/10/25 |日本経済新聞|夕刊(十字路)「枯れた技術」に活路あり
経営デザインシートのフレームワーク
先程は空のテンプレートをお見せしたので、次は、いろいろと解説が書き込まれたものを同じく、知的財産戦略本部のホームページで公開されている「「経営デザインシート」について(PDF)-外部リンク」から抜粋・引用してご紹介します。
いろいろと書き込まれているので、これも一覧ではすぐに理解が難しいかもしれません。それでは、もっとこれらを集約した説明スライドだとどうでしょうか。
17個の空欄は、突き詰めると次の4つのそれぞれを明確に可視化することと、それらの関係性を理解することに実現するために埋めなければならないということが理解できます。
①自社や事業の存在意義を明確に意識する
②これまでの価値創造メカニズムを再認識する
③将来の実現したい価値創造メカニズムを構想する
④現在から将来へ価値創造メカニズムを変えるためにやるべきことを洗い出す
この4ステップの思考で必要十分な戦略策定を行うための思考補助ツール、それが「経営デザインシート」なのです。
ここまで説明しても、いまいちピンとこない方向けに、もっと簡略的なフォーマットでこの「経営デザインシート」を眺めることができるチャートもあります。
この簡易版を筆者が超解説してみますと、次のようになります。
1.将来構想のキャッチフレーズを考えてみましょう
2.これまでどうやってビジネスをやっていたか思い出してみましょう
思い出すためのヒントはつぎの3つです
①お客さんにどんな価値を提供していましたか?
・お客さんはどんな人たちですか?
・お客さんとはいつ接点を持ちますか?
・お客さんにはどんなものを提供していましたか?
②お客さんに価値提供しているとき、気を付けていることはなんでしたか?
③お客さんに価値提供しているとき、社内や社外の関係者のどんな協力がありましたか?
④現在、うまくいかないなあと感じる問題はありますか? あるとしたらそれは何ですか?
3.将来のビジネスをどうしたいという考えはありますか? それはどんなものですか?
①それは、いつまでの目標ですか?具体的な締め切りを考えましょう。
②その時、お客さんはどういう人たちだと思いますか?
③その時、気を付けるべきポイントには何があるか想像がつきますか?
④そのビジネスのために、他の人からどんな支援・協力があるといいですか?
⑤そのビジネスを成功させるために、どんな条件が揃っていると会社にとって都合がいいですか?
4.将来こうしたいと思うビジネスを実現するために、あなたがやらねばならないと考えていることは何ですか?
(できるだけ、いつ、だれが、何をする、という形で箇条書きにしてみましょう)
こういう感じになります。
ただし、内閣府知的財産戦略本部の方も注意を喚起しているのですが、大事なことは、経営課題の気づき・整理、ビジネスモデルの見直しにとって、何らかの気づきを得ることがこの経営デザインシートを作ってみることの目的だということです。経営デザインシートを作り上げることが最終目的でもないし最終ゴールでもない、ということです。
それより、「経営デザインシート」を作る・使う人たちに大事してほしいことが2つあります。
- できるところから埋めていく。分からないわからないことはそこが分からないだという自覚を持つことがこのシートを作成する目的である
- できるだけ、「価値」→「ビジネスモデル」→「資源」の順番で考えるクセをつける
2.は、すべては「顧客本位に考える」という言葉に集約されています。ドラッカーも言っています。企業の目的は顧客の創造であると。お客さん視点で物事を考えるクセをつけましょう。
次回以降、できるだけ、実践的な「経営デザインシート」の使いこなし方、他の経営戦略理論やビジネスモデルのフレームワークとの関係性について、できるだけ分かりやすい説明を続けていきたいと考えています。
それまで待てない方向けに、内閣府知的財産戦略本部が用意しているFaceBookアカウントと、作成テキスト(作成マニュアル)【入門編】【応用編】のリンクと日経新聞記事もご紹介しておきます。^^)
外部リンク 経営をデザインする|知的財産戦略本部|内閣府
外部リンク 作成テキスト【入門編】(PDF)
外部リンク 作成テキスト【応用編】(PDF)
2019/10/28 |日本経済新聞|朝刊 内閣府の「経営デザインシート」 次の成長、知財で探る 中小、事業承継に生かす 大企業、M&Aのきっかけ
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