■ 英会話学校も回転寿司も失敗 7つの事業を潰した破天荒人生
厨房機器リサイクル、新品もメーカーから大量仕入れで破格の値段を実現! 中小の飲食店がこぞって頼りにするお助け企業、テンポスバスターズ。食器も瀬戸や多治見といった産地から直接買い付け、その量は企業としては日本一という。他にも飲食店が開業するものに必要なものは全て揃っている。
現在日本では、年間16万軒の飲食店が廃業し、同数だけ新規開店する。その中でテンポスバスターズは活躍している。創業者の森下さんは、役場勤めの父と教員の母を持ち、堅実な家庭に育ったが、自分は両親とは異なり、破天荒な人生を歩んできた。大学卒業後、1971年、レジスター販売会社に就職。4年でトップセールスマンに。しかし、上層部と対立して解雇の憂き目に。それならばと36歳で独立、1983年、給食センターなどで使用される食器洗浄機販売会社を設立。
(番組公式ホームページより)
しかし、大型食器洗浄機はそんなに需要があるわけでもなく、販売していくうちに売り上げは頭打ちに。「社長としては、次の商品を出さないと。洗浄機だけで拡大しても「おしまいだな」ということで、次の商品をいろいろ挑戦したが、食器洗浄機ほど安定したヒットにはならなかった」
そこで、森下さんは様々な事業に乗り出す。英会話学校に回転寿司、環境調査会社、合計7つの事業に挑んだ。だが、いずれも失敗。そんな時、あるTV番組を見てショックを受ける。それは一世を風靡したリサイクルチェーン「生活創庫」。「拾ってきて磨いて売ればベンツに乗れる!」、これは中古販売店をやらなければと思ってスタートした。
1997年、テンポスバスターズ設立。食器洗浄機販売の経験を活かして、中古厨房機器に狙いを絞った。ほとんどが小規模店という業態にあって、全国チェーン化に成功。店舗数48、従業員2247人にまで拡大させた。
人気の秘密は価格の安さだけではない。店内に掲げられた、こんな看板もお客が集まる理由。テンポスのお客様支援。
・店長教育 5250円~
・人材採用 3150円~
・覆面調査 1050円~
・計数管理 588円/日~
・集客 25円/通~
・開業支援 0円~
・資金調達 0円~ (日本政策金融公庫からの借り入れのお手伝いなど)
飲食店を開業しようとしている人へのサービスが揃っている。
■ “ベンチャー魂”で業界トップシェアに!
森下さんのとある1日を追った。実家の近くで90kg以上あるワラを背負って汗だくになっている姿があった。「金持ちがクルーザーに乗るのと同じで、おそらく金持ちがヨットに乗るのも運転してもらうのではなく、自分が運転している。そういうふうに、“自分でなにかをしたい”に行き着くんじゃないかと思う」
「この炎天下でワラを背負ったらヘトヘトになる。ヘトヘトになるのが好き。」
ビジネスに成功したのもヘトヘトになった時に次に何かが見えてくるとおっしゃっていたが?
「腕立て伏せを50回やりたい人で、今25回できるとしたら、26回目をやって手が震える経験をしない限り50回には到達できない。23回や22回でも疲れるが、それを繰り返しても50回には到達しない。これを「イテテの法則」と名付けたが、「いらっしゃいませ」と100回やっても床に手が届くようにはならないが、それを(前屈の体勢で)「イテテ」までやり続ければ次のステップに行けるじゃないかと。ビジネスの「イテテ」は何かというと、やってもやってもやり方が分からなくて「もう無理」という時にようやく「イテテ」になる。そこまでやらないで「うまくいかない」というのはダメ。
- 限界の先に成長がある -
「今、リサイクルは「お金がないから」ではなく、「合理的だから」という考え方。(テンポスは)トップシェアというより1強100弱。テンポスのグループ売上高が235億円だが、2番手は5億円前後」
厨房機器に特化したリサイクルショップはテンポスが最初だったのか?
「いっぱいあったが、シンクなどを広い屋外で売っていた。雨ざらしで。盛岡から宮崎まで20軒ほど視察したが、みんな結構稼いでいた。稼いでいた人たちは毎月フィリピンに行って遊んだり。お金がどんどん入ってくるから。こちらはお金を使って遊ぶより、これだけ儲かるならチェーン展開して先輩諸氏が気付いた時には「テンポスには勝てない」という程の店を作ろうという方針にした。そこが分かれ目だったと思う。」
本当の狙いは中小飲食店の支援では?
「15年ほど前、川口店にいた時に、「厨房機器が半値で買えた」というお客さんがいた。1週間後に、いい車に乗ってきたので、「どうした?」と聞いたら、「これが欲しかったんだよ」と。これから開店するという時に、資金が浮いたから車を買っている場合かと。そういう人がすごく多い。そんな人達を“お助け”しなければ、「自分たちだけ儲かればいいではダメ」となる」
■ 社員がやる気に! 仰天 人事制度の秘密
ベンチャーを立ち上げた森下さんならではの独自ルールがある。
① 定年は社員が決める
「キヤノンやトヨタは高齢者を働かせるわけにはいかない。テンポスの役目は、「キヤノンやトヨタは世界と戦ってくれ」「俺は高齢者に職場を提供するから」と。それで社員の3分の1以上が高齢者になった」
さらに退職後もフォロー。
② バツイチクラブ制度
一度辞めても戻ってこられる制度。退職前の待遇で復職できる
③ フリーエージェント制度
従業員が異動を希望した場合、受け入れ先の店長が了承すれば異動できる
④ ドラフト制度
店長が他店に欲しい人材がいれば引き抜ける
⑤社長の椅子争奪戦
テンポスの社長は社内公募で決まる。
「「社長はいいな、降格しないから」と言われて、それなら競争で勝つ仕組みにすればいいだろうとなった」
この仕組みは、次の通り。
・オリンピックと同じで4年おきに争奪戦が開催される
・応募資格は店長以上
・審査項目は、利益目標の達成度合い、教育力など、会社の監査役等が採点
・優勝者は、社長の椅子と年収2000万円を手にする
「基本的に社長になりたいんだったら立候補して争奪して社長になればいいという仕組み。全部「自分の人生は自分で決める」競争の中で揉まれながら決まる仕組み。そういう仕組みの中で店長も立候補制にしていて、転勤も1年間働いて嫌なら他の部署にいける。全て「自分で決める」制度。社員には、入社した時、パートも高齢者も全ての社員に自分の人生を本人に選ばせている。出戻りもOK。だから会社を辞める社員にも、「辞めたければ辞めろ」と。だけど、“辞める”決断が間違っている場合も多いので、社員同士が「そろそろ戻ってくるかも」と連絡を取り合っている。だから出戻り社員が大量にいる」
社員が上司や部下を選べるということは、ミスマッチなど、問題が起きないか?
「問題も起こるが、結局その制度をやっているのは「嫌いだ」と感じる人と短い人生を一緒に過ごすということは面白くない。だから「嫌いだ」と思ったら、「フリーエージェント制で異動する」と言える。人手は足りないので、どの店でも受け入れてくれる。「嫌いだから」となって異動するでしょ、3,4回異動するうちに、35~40歳になり、だんだん分かってくる。つまり、「納得のいく上司や部下に出会うことはない」。それを教えても、体得するまでに時間がかかるから好きなように回っていろ」と。「それはお前が決めた人生だ」、だから「文句を言ってはいけない」と。
- 自分で決めるのが人生 -
■ 赤字ステーキ店が復活! カギを握る“やまんば軍団”
飲食店の再生事業も始めた。現在、7つの外食チェーンの再生中。そのひとつ、「ステーキのあさくま」の例を紹介。
「とにかく、「自分でやる」という意識がなく、オペレータばかり。昨日と同じことを黙々とやるだけ」
何か再生のヒントはないかと数字を隈なくチェック。ある店長グループが黒字を出していることに気がついた。森下さんいわく、“やまんば軍団”。女性4人の店長たちだった。彼女たちを起爆剤として店の改革に乗り出す。
森下さんが抜擢して、加藤さんは7店舗を担当するエリアマネージャーに。この加藤さんが店長チェックリストで挙げている項目はとにかく具体的で分かりやすい。
・歩く速度が速い
・ぐちを言わない
・言い訳を言わない など
変えるべき項目をはっきりさせている。
やる気を伸ばす仕組みは他にも。
① 店舗ごとのランキングを導入
<ランキング項目例>
・メール会員の獲得数
・土産物の売上
・予約件数
・限定メニューの販売数
全店舗で競わせる。ランキング上位者(店長)には報奨金も出る。
・1-7位 35000円
・8-17位 25000円
・18-22位 10000円
厳しい指導と嬉しい現ナマで店舗体質は著しく変わった。
② スタッフへのボーナス制度を導入
毎月利益の前年比増加分の10%を店舗スタッフに分配。
「みんなで喜べる。一人で何かをやり切る喜びもあるが、チームで達成した時はその100倍も嬉しくなる」(とあるスタッフの弁)
こうした刺激的な戦略で“やる気集団”へ変貌。オペレータと言われていた従業員が自ら動く集団に変身。業績もわずか5年でV字回復させた。
「飲食店の店長やマネージャーは現場で“顧客満足”と言っているだけではダメ。マネージャーの仕事は野球のコーチ。コーチがフライの捕り方を教えるのに、能書きを教えるコーチはいない。ひたすらノックを繰り返す。現場でトレーニングを何時間やったか、そこに尽きることがこの1年間で分かってきた。トレーニングをやらせない、なぜか“論理を教える”ことばかりになっている。ところが加藤マネージャーは「私が決めたことはやる!」という人だから売上もパッと上がる」
人間関係を大事にされている感じを受けるが?
「私には身分の上下や年齢は関係ない。自分の周りにいる人と話して、その人生を応援するのが役目だと思っている。だから、目標を持たずに、ただ生きている人を見ていると面白くない。「目標に向かって生きる」ことが人間にとっての価値。「毎日充実して生きる」というのが応援の価値」
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