■ 意外なものが宝になる! 日本の魅力爆発スペシャル
ここ日本橋に地方都市が作ったアンテナショップがある。
「日本橋とやま館」。
品揃えが一風変わっている。が全て冨山の庶民の食卓で楽しまれている味ばかり。
・カジキマグロの昆布じめ
・こんかいわし
・かぶす汁
(山下館長)
「高級品はほとんどない。冨山で「当たり前」「普通」と言われるものを東京の人に伝えたい。冨山の人にとって当たり前すぎて気付かないままだが、皆さんに「いいわね」と言ってもらえるのは私たちにとって再発見。」
北陸新幹線開通の手ごたえが全くないと答える砺波商工会議所の森田さん。
「砺波市にはPRするものが無い」
しかし、砺波には「となみ夜高祭り」がある。行燈できれいに飾られた2つの山車が壊れるまでぶつかり合う、派手で見ていて面白いお祭りだ。
村上龍は、我々日本人が気にも留めない文化にこそ大きな可能性が秘められていると考えている。
(村上氏)
「僕らは当たり前になっている「七夕」も、笹の葉に願い事を書いて結びつけるのはすごくロマンチックなイベント。僕らにとって当たり前なことが外国の人から見るとすごかったり、いいものだったりするのがたくさんある。」
『日本には”価値あるもの“がまだまだある!』
(ちなみに、筆者の故郷は富山県なので、本当に全て知っている当たり前のことで何の驚きもなかったのですが、それらに驚いている人の姿を見て驚いています)(^^)/
■ “あの2人”が日本を再発見 まだまだ“売り物”はある!
アートディレクター 佐藤可士和
ジャパネットたかた創業者 髙田明
(番組公式ホームページより)
可士和は、伝統に革新を加え、新たな価値を生み出すことに力を注いでいる。例えば、有田焼。その売上は世界的な競争に巻き込まれ、今や最盛期の5分の一。
(可士和)
「創造性が介在することで、有田の強みが引き出せたらと。そうなると最高」
ARITA400プロジェクト(佐賀県主催)で有田焼を世界に発信。2016年1月、フランスの国際見本市に奥山清行、佐藤可士和など4人の作品を出品。
(可士和)
「“伝統”は守っていくだけでなく、“革新”していって初めて続いていく。守っていくために攻める。グローバル化したからこそ、日本のアイデンティティーをしっかり考えないと、逆にグローバルに出て行けない。その考えが有田にもつながっている。」
そしてもう一人、知られざる日本を伝えようという男が。独自の話術でテレビ通販企業を創業し、年商1500億円に育て上げた。ジャパネットたかた創業者 髙田明。
2015年1月に社長を退任した髙田、人知れず田舎の店々を回り、珍しい品物を紹介していく。実は髙田、地方の名品を発掘する番組に出演している。そんな髙田がこの仕事に執念を燃やす秘密とは。
(髙田)
「眠っているものが山ほどある。もっと日本の隠れた商品を発掘して世界に広げたい。いろいろ歩きますよ、まだまだ。」
「社長業29年でラジオの前、テレビの前に立ち過ぎて、“伝えること”がすごく大事だと学んだ。日本の中にたくさん眠っているものがあって、それを掘り起こすには“伝える”がないと、「価値が伝わらない」素晴らしいものでも。だから“伝えたい”という思いから「歩いてみたい」と。どこに行っても感動する。」
(可士和)
「日本の人口もどんどん減るので、売り先を海外に見つけていかないと。伝えないと、どの程度の価値なのか理解されないという“危機感”を持っている。」
(村上氏)
「有田焼も伊万里焼も、世界の、例えば、ウェッジウッドとかロイヤルコペンハーゲンのお手本にされている。そう公言もされているが、どうみても世界的にはウェッジウッドの方が有名になっている。商品も豊富で知名度もある。それはなんでなんでしょう?」
(可士和)
「僕はブランディングの仕事をしているが、有田焼にはブランディングの概念が少し足りない。例えば、ユニクロの仕事も、ユニクロというメディアに乗せて、日本を世界に紹介していくと考えてやっていたので、有田焼は“もったいない”と。」
(髙田)
「もともとの素材はいいし、世界最高の陶器を作っているので、伝え方がわかっていないのだと思う。」
(可士和)
「当事者になると“普通”だと思って、「人に伝えるまでもない」と。“今治タオル”の時には、コンセプトを「安心・安全・高品質」にしたが、今治の人たちは「当たり前でしょ」と、「安心・安全・高品質」に作ってきたが、世界中を見ても、そんなクオリティーで作っている産地は無い。その視点が、コンセプトになるとは思っていなかった。」
(髙田)
「普通にやっていたら、普通なんですが、僕も「今治タオル」の製造現場に入ったが、ビックリしたのは“水”。繊維から油分などを取り除く作業を渓流で行うことで今治タオルができている。その水を伝えなければと思って、水の話をしたが、地元の人は「当たり前」だから気づかない。すごく当たり前のことが伝わっていないから、当たり前のことを伝えていけば、日本の文化も伝わっていく気がする。」
『当たり前の中に宝の山はある!』
■ 急拡大ハロウィンに異論! 村上龍が目を付けた“宝”
急拡大する日本のハロウィン市場。最初に火をつけたのが、1997年、東京ディズニーランドが初めてハロウィンイベントを開催してからだと言われている。それから20年、今やハロウィン市場は1000億円を超えたと言われている。
(村上氏)
「ハロウィンは1400億円くらいの経済効果があるが、誰も「ひまなつり」「月見」「七五三」の経済効果は言わない。日本のイベントなのに。どう説明すれば日本の伝統行事や文化の魅力がちゃんと伝わるのか、今まで考えられてこなかった。資源と思っていない、ほとんどの人が。」
『伝統行事の可能性』
そして7年の年月をかけて完成させたのがこの新刊。
「日本の伝統行事」(JTF:Japanese Traditional Events)
(筆者注:表紙が綾瀬はるかでとてもきれい。でも新刊の宣伝か!)(^^;)
村上龍は語りかける。ハロウィンではなく、日本の伝統行事にこそ世界に誇る価値があることを。村上龍の時代を挑発する新刊。その真意とは?
(村上氏)
「伝統行事は、今の自分が昔の自分に会いに行く、故郷に戻る感覚のものと思う」
(髙田)
「今の時代、子供がなかなか故郷に戻らないと言われるが、私は子供の頃、お祭りで化粧をした記憶がある。母に連れられて、口紅をしたり、化粧をした。それで山車を引く経験があって、その部分が凄く頭に残っている。僕にとっての故郷は、そういう思い出と共に生きている。だから「故郷に戻ってみたい」と。そういう“郷愁”が都会化されるとなくなってくる。だから僕は、“日本の伝統行事”を絶対残していくべきだと思う。」
(可士和)
「「行事」に注目した切り口も面白い。僕は、デザイナーなので、“モノ”に意識が向くが、「行事」という切り口を思いついたのは、すごく面白い、まさに“日本”を感じる。」
■ “七夕”を知らない若者たち ディズニー衝撃の戦略
七夕を知らない、ここ10年、七夕の行事をやっていないという10代20代の若者が急増している。しかしそんな中、七夕でとんでもないことをやっている企業が。東京ディズニーランド(オリエンタルランド)だ。笹と仙台七夕の吹き流しをイメージした巨大モニュメントが目に飛び込んできた。
(山村オリエンタルランドイベントグループマネージャー)
「1997年から、最初は4日間のイベントから始めた。今年から3週間実施している。毎年毎年少しずつ工夫をしている。今年は竹灯篭といって、灯篭の形をデザインした。」
短冊もミッキーマウスの顔の形に象られている。七夕グッズも拡充し、今年は約30種類。七夕イベント期間も長くすれば、その分グッズも売れる。開発するのは関連グッズだけではない。「帯マウス」といって、浴衣の帯の結び目がミッキーマウスの形になるような帯の締め方。ディズニーのHPやYouTube等の動画で、結び方情報を拡散している。ショーも七夕アレンジがされている。曲も「星に願いを」と「七夕」をミックスしてアレンジしている。
(村上氏)
「こうやって伝統行事は残っていくのかもしれない。」
(可士和)
「恐れずにやりきる感じがすごい。それがパワーにつながっている。でも、こういう伝統的なものを革新していくときに、「変えてはいけない」と「変えていい」を見極めるのが重要。それを取り組む前にものすごく考えているが、そこを誤ってしまうと、人を傷つけてしまうことになる。リスペクトが無いとダメだと思う。結局、企業の考え方と一緒で、「本質は何だ」という視点だと思う。」
(髙田)
「七夕でも月見でも、例えば七夕をよく知っている人が来ても、日本の文化のベースがあって、そこにミッキーマウスが動いているから誇りになる、日本の文化があるんだと。そこが本質をつかんでいる所。「一番変えてはいけないもの」のベースが絶対残っているということ。」
(可士和)
「最初のスタンスにリスペクトを感じるから、いい気分になる。「行事」のプロデュースの仕事の依頼はこれまであまりない。でも、すごく面白いと思った。」
■ 外国人36万人!田舎町の秘密 “世界熱狂”絶品の郷土料理
岐阜県高山市に、あることで1位を獲ったお店がある。
「平安楽」
外国人に人気の日本のレストラン2016で、1位になったお店。珍しい料理を出しているわけでもないのに、トップとなった理由は、おかみさんの古田直子さんの英語で接客が行われている点だ。おかみさんと世間話しながら、日本の庶民料理を楽しむことができるのだ。
更にここも外国人に人気。
人気の理由は、店内で配る、そばの食べ方を記した英語によるマンガ。
実は高山市、街全体を上げて、外国人が旅を楽しめるような工夫がなされていた。英語やスペイン語の標識がここかしこに普通にあったり、外国人が手にする観光ガイドは、英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ヘブライ語、タイ語、韓国語、中国語の9か国語に対応している。そうした取り組みのおかげで、人口わずか9万人の高山市に、年間36万人の外国人観光客が殺到するようにまでなった。
(髙田)
「私も通販番組をやっていて、食の通販もやっているが、「柚子胡椒」や「ワサビ」などは外国人も気に入ると思う。こういうところも日本が伝えられる食の文化かもしれない。」
限界集落に存在するその土地土地に残る郷土料理を食べ歩いている翻訳家がいる。日本の郷土料理に興味を持ったのは、ちょうど、日本政府から日本の食文化を外国に発信するための本の翻訳を依頼されてからだそうだ。それを受けて、
(髙田)
「でも「10年もしたら(過疎化で集落が無くなって、そうした郷土料理は)全部なくなる」と心配していたが、もったいない。」
(村上氏)
「小泉八雲に始まって、日本の良さを世界に発信してくれる形というのは、外国人(の翻訳家)が日本の良さを気に入って、それを世界に紹介するというもの。これはいい循環だ。」
(髙田)
「(私が日本全国を歩いて探し出した商品は)どの商品でも世界に打って出られると思う。ただ、やり方の工夫はしなければいけない。長崎県平戸市で定置網の漁師体験を、海外の人に向けてやってみたら、アンケートで満足度が1番だった。普通の観光地を巡るよりも、「漁師体験」や「農業体験」の方が、感動が大きかった。そういう日本にしかできないものを“体験型”にしていくとか、やり方を変えていけば、伝わっていくような気がする。」
(可士和)
「まさに、“エクスペリエンスデザイン”、体験をデザインすることがすごく大事。」
■ 編集後記
佐藤可士和さんは、日本の伝統的な価値に対し「リスペクト」という言葉を使った。
髙田さんは、大企業によって大量生産されたものではなく、地方に眠る小さな商品に価値を見出し、知らしめる活動をされている。
私事で恐縮だが、わたしは「日本の伝統行事」という本を作った。
共通しているには、「脱亜入欧」ではじまった近代化以来忘れがちな何かを「見つめ直す」ということだ。
資源としての伝統を再発見したとき、わたしたちは、ごく自然に「敬意と愛情」を抱く。
それは既成のイデオロギーとは無縁の、素朴で、かつ現実的な「心情」である。
Respect & Love
村上龍
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