■ インバージョン(納税地変換)も立派な企業戦略のひとつ
2014/9/8付 |日本経済新聞|朝刊
(グローバルオピニオン)米法人税の改革が必要 米ハーバード大教授 マーチン・フェルドシュタイン氏
企業にとって、タックスプランニングも企業価値向上に有効な手段となっています。特にグローバル展開されている企業にとっては、各国の税制や税率の違いにより、グループ内の商取引の形態やルートを変更し、あまつさえ現地法人の立地すら変更するに至ります。
筆者は、各国税法の網の目をかいくぐって脱税まがいの節税をするのではないのだから、このような国際税務戦略は一考に値すると考えています。
ただし、合わせて課題も企業側・当局側含めて下記のように認識しております。
- OECDなどが各国の経済・産業政策の違いに口出しして、各国の主権(徴税権)を侵害することはあってはならない
- タックスプランニングにばかりかまけていると、かえって本業の収益力に支障が出る可能性がある
- 目立った、そして極端な税務戦略はかえって企業のレピュテーションにマイナスとなる
日本も、アベノミクスの打ち手がどんどん少なくなってきている中、法人税減税の方向性を打ち出し、経済界もこれを支持しています。財政に相応の税収は必要。法人減税をする場合はどこか別のところから財源を確保する必要があります。法人減税することでかえって税収が増えることを期待している場合は、レーガノミクスでの大幅な減税政策の精神的支柱であった「ラッファーカーブ」の効用がどれくらいか、試算して納税者に示してほしいと考えます(多分、そのような試算はできないものと思いますが)。
■ 関連した事例をご参考まで
東京エレクトロンと米アプライドマテリアルは合併の際の持ち株会社をオランダに置くことに決めたという記事が出たことがあります。これは、規模の違う両社の対等合併を演出する目的もありますが、オランダの各種税制を最大限に有効活用することも目的の一つとしています。もっとも、すでに合併処理の会計基準も米国基準を採用していることも含めて、目端の利く投資家から材料視されて既にこの分は株価に反映済みですが。
2013/9/30付|日本経済新聞|朝刊
東京エレクなどM&A企業、オランダ拠点相次ぐ 法制度充実、税制を考慮
レピュテーションに対して大きくマイナスとなり、自主的に寄付金を英国政府に差し出し、さらに欧州事業会社の本社を英国に移したスターバックスの例もご参照ください。
2014/4/17付|日本経済新聞|朝刊
スタバ、欧州本社を英に移転 課税逃れ批判に対応
なお、日本の当局もこうした流れに対抗処置を施しております。かなり旧聞に属する施策ですが、こちらもご参考にしてみてください。
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