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(一目均衡)「ROE10%の壁」を超えろ

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■ ROEを高めるためには

経営管理会計トピック
日経新聞(朝刊)のコラムにて、ROE10%の壁を超えるために、「分子対策」と「分母対策」という言葉が出ていたので、今回この記事を取り上げました。
「フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントのアジアのファンドマネジャーらが先週、東京に集まった。各国の経済や投資テーマを検討するためだ。最高投資責任者のドミニク・ロッシ氏もロンドンから駆けつけ、150人余りの議論の輪に加わった。」

2014/12/2付 |日本経済新聞|朝刊
(一目均衡)「ROE10%の壁」を超えろ

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

コラム記事を要約すると、
ROEを高めるには、

  • 「分子対策」:利益成長
  • 「分母対策」:株主配分の重視

の2つがともに重要というものです。

■ ROE向上のための「分子対策」

何度も繰り返しますが、ROEは割り算で計算される収益性を測るための財務指標です。

ROE = 当期純利益 ÷ 純資産(自己資本)

したがって、このROEを良く見せるためには、できるだけ分子を大きくし、できるだけ分母を小さくすることが採り得る手段となります。
ちなみに、この記事では、分子対策の例として、
「社外取締役の活用や事業の絞り込みによって自己資本利益率(ROE)を向上させた日立製作所などの事例研究を通じてロッシ氏は確信した。」
という言及がありました。
筆者には、これにはちょっと、違和感がありまして、企業統治方法の改善として、社外取締役を招聘するだけで、簡単にはROEは向上しないと思うのですが、欧米の専門家から見れば、「社内昇格者だけの取締役会では、株主からの受諾責任が全うできない。株主利益の代弁者として、社外取締役をおく必要がある」、という論法なのでしょう。株主利益と経営者利益の相反が生じるのを、社外取締役が予防する、ということらしいです。
社外取締役には、そうした予防機能はあることは認めましょう。しかし、事業の目利き力があって、社外取締役の助言に頼った方が事業収益性が高まる、ということには簡単には至らないようです。社外取締役の資質として、ビジネスの目利きができる人材が日本のマネジメント人材市場にどれくらいいるのか、という問題と、事業の目利きができる/できない、と社外/社内とは別次元の話と思っています。
2014/10/26に投稿した記事、「発掘長期保有株(3)ROE改善度 人員、資金を最適配分 上位20社、半数が上場来高値」では、分子対策によりランキングインした企業が大半だったと説明しました。
参考まで、ランキング表を再掲します。
社外取締役が、当時在籍していた会社には「○」を付けています。

◆ 5年間でROEが改善した企業

1 ユナイテッドアローズ  ○
2 サイバーエージェント ×
3 DIC ○
4 富士通ゼネラル ○
5 セリア ×
6 日本ペイント○
7 日本瓦斯 ×
8 東海東京F・HD ○
9 住友ゴム工業 ○
10 朝日インテック ○
11 日本M&Aセンター ○
12 平和 ○
13 大東建託 ○
14 ミネベア ○
15 テイ・エス テック ×
16 SCSK ○
17 ブリヂストン ○
18 あいHD ○
19 リゾートトラスト ○
20 大和ハウス工業 ○

■ ROE向上のための「分母対策」

記事には、
「中期的に10%の壁を超えるには、配当・自社株買いによる総配分性向を現状の35%から50%へと高めていく必要があると西山氏は試算する。」
とあり、税引き後利益の半分は株主に還元しないといけないということになります。
ずっと、管理会計の数字を見てきた筆者にとっては、内部留保が半分しかできない、というのは、かなりの資本制約になりそうな感じがしています。個々の会社が直面している市場の成長ステージによって、かなり資金需要というものは変動しますが、統計的に半分、というのは無理なような。。。
もうひとつ、記事では、
「大胆な株主配分で市場の人気を集めたアマダ。最近は株価が一進一退を続け、PBR(株価純資産倍率)は市場平均を下回る。資本政策だけで現状3%のROEを会社が目標とする10%に高めるのは難しい、と有力アナリストは見ている。M&A(合併・買収)など成長戦略に関する次の一手こそ、市場の聞きたいメッセージだ。」
とあり、分母対策だけでは、継続性が担保しにくい、という傾向あり、という感じです。
すでに、本ブロクでも、2014/10/10の投稿記事、
スクランブル 自社株買いに賞味期限?  高ROE、持続力で選別
にて、ROEの維持と、それに連動して高株価の維持についても、継続性に疑念がある旨、指摘させて頂きております。
将来の利益成長のためには、足下の資金需要をどうするか、時間軸に沿って、経営者は株主(投資家)に、事業プランの確実性について納得してもらう必要があります。
「投資と回収」および「将来と現在」のキャッシュバランス、事業への目利き、事業ポートフォリオの構築、経営者が説明しなければばらない事項は盛り沢山です。

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