■ グローバル課税強化の流れ
『ダブルアイリッシュ』『ダッチサンドイッチ』など、様々な国際税務的な節税対策が有名になりましたが、世界(あくまで経済先進国の間)では、規制強化の流れが強まっています。 (参考ブログ記事はこちら)
2014/9/17付 |日本経済新聞|朝刊
国際企業、税逃れ歯止め OECD指針 グループ取引報告義務
この記事は1面でしたが、同日の紙面では、3面に、
「きょうのことば 多国籍企業の課税逃れ 低税率国に利益移転」
5面に、
「ネット取引、課税強化へ OECD新指針 日本には来年度にも」
と、関連記事が3連発でした。
■ 徴税コストと納税コスト
この課税強化の流れの課題としては次の通りです。
- 税務当局の徴収事務コストの増大
- 納税義務者の報告事務コストの増大
- 優遇税制を活用した産業育成政策の無効化
まず、1つ目の「税務当局の徴収事務コストの増大」ですが、二重課税回避(属人主義的な立場からの全世界所得課税や、属地主義的な立場からの源泉地国課税など)のための事前事後の租税条約締結や協議にかける手間暇がきっと増えるはずです。税収は国家の売上。売上を伸ばすためのコストの伸びの方が大きいと、利益(最終的に国庫に納まる税金)は減ります。
2つ目の「納税義務者の報告事務コストの増大」ですが、日本を例にすると、2002年度の連結納税制度の導入、2010年度のグループ法人税制など、個社から連結主体への課税に一定の流れがあります。グループ全体(連結主体)に課税するなら、属地主義の視点はいったん脇に置くと、いちいち移転価格を報告する必要がなくなります。グローバルに属地主義か属人主義か統一的なルールを定め、連結主体で課税すれば、納税コストは下げられるはずです。その場合は、二国間ルールでない方がよいでしょう。
3つ目の「優遇税制を活用した産業育成政策の無効化」は、あまりに画一的な税制への統一をOECDが促進してしまうと、特定の場所に特定の産業・企業を誘致する手段を各国の経済産業管轄部署から奪ってしまうことになります。税務当局と産業育成当局間で、利害が対立したままになるのではないでしょか。
■ 企業側が準備しておくべきこと
グローバルに展開している企業でも意外に、グループ内の商流そのもの、商流上の品目単位の付加価値が把握できるような管理会計・連結経営管理の仕組みになっていません。グループ会社間での仕切取引の基準となる価格が、インコタームズのFOBとかCIPとか、貿易実務としては親しみを持って決めているかもしれませんが、そのPricingの基準はあいまいなところが多いようです。
また、二国間FTA等でも、「原産地証明」が必要になり、一つの完成品を構成する原料や部品が国境を跨いでいる場合は、その取引と金額の把握ができるインフラを整える必要があります。
まあ、そういう仕組みづくりを主な生業としていますので、もしご興味がありましたら、画面右の問い合わせフォームからご連絡くださいませ。
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