■ 予算管理プロセスでPDCAを回すことができている状態を想像してみてください!
単年度予算を策定して、月次決算を実施して、予実差異分析をおこなって、目標未達を埋めるためのアクションプランを決定する。この一連の作業を、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルと一般的には呼ばれており、PDCAを回すための指南書や、コンサルティングサービスが世の中を闊歩しています。この現状に対して、どうにも筆者は首を傾げざるを得ません。
以下は、よくある企業の予算管理プロセスの実態です。
P: 予算策定は、前年の第3四半期末前後の需要予測に基づいてスタートする
D: 月次決算は、前月末実績レポートが出るのが翌月末ぐらい
C: 予実差異は、勘定科目別で、ざっくりとしたセグメント・組織別でしかでない
A: 改善プランは、過去に起きた問題にフォーカスして立案される
Pについて
3月決算会社の場合、単年度予算を作り始めるのが、前年の12月前後から。市場動向・技術動向の変化が激しい現代において、15カ月前の市場予測に基づく目標設定は、どれだけ精度が担保されているのでしょうか?
Dについて
例えば、5月実績レポートが出るのに、6月の第12~15営業日ぐらいまで待つこともざら。そこから分析を開始していては、分析結果が出るのが、翌々月になりますよ。2か月前の実績報告はもはや、誰の注意も引きません。
Cについて
予実差異、目標と実績の差異をレポートできるのは、勘定科目のざっくりセグメントだったりします。例えば、産業機械セグメントの売上高が予算比:20%減、対前年比:13%減、みたいな。皆が本当に知りたいのは、売れ筋のハズだった●●機器の納期遅れが発生して、売上が立つのが2か月遅れる、とか、主要顧客からの見込受注が顧客都合で半減してしまった、とかが知りたいのでは、、、
Aについて
期初からこれまで経過した売上未達に対してどうするか? というプランを考えるのが妥当と皆が考えるかもしれません。でも、年度末目標の未達部分を挽回する短期的な話と、競争市場で、コンペチターに売り負けしない製品ラインナップ作りと、大口顧客の攻め方という本質的な話とは、打ち手が随分変わってしまいます。それでも、年度末の売上目標値にこだわりますか?
■ 過去にこだわったPDCAではなく、現在をどうするかにフォーカスしたPDCAにしましょう!
ということで、通説で世間にまかり通っている常識として、「予算管理」「目標管理」の領域で「PDCA」プロセスを回す、というのは、たとえ、プロセスを効率化したり、ITを駆使してタイムラグをどんなに縮めたりしても、目指すべきゴールが後ろ向きな、15カ月前の目標未達のギャップを埋める、ことに執着していてはだめだと思います。
「手段」の問題ではなくて、「目的」の問題。現状目指すべき、現状ありたい姿を「目標値」とおいて、そこからの乖離を上下共に、できるだけ少なくするような補正活動を行うこと。これが本家本元の「PDCA」だったはず。というのは、PDCAの提唱者であるデミング博士は、「予算管理」「目標管理」の領域でこのコンセプトを世に広めようとしたのではなく、「品質管理」の領域で上下の外れ値を無くして、「標準化」「平準化」をそもそもの目的としていたから。巷に溢れる「PDCA」本のほとんど全ては、デミング博士の意図とは全く異なることを世に広めようとしています。
(参考)
⇒「経営管理 その管理方法」
⇒「PDCAサイクルと経営管理」
あなたの会社のPDCAへのスタンス、いつ変えるんですか? 今でしょ!(林修風)
(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。
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