■ 大秘密第三番
このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。
前回ご紹介したワインバーグ氏の義兄であるマービンから聞いた話から着想を得たペニシリンのお話の続き。ペニシリンぐらい強力な薬ならば、副作用もしかるべき大きさになります。しかし、不必要な薬を不用意に服用するのはよくないことと、心配して、医者の処方や服用の指示に逆らい、早めに抗生物質を飲むのをやめる人がいます。
医者から言われた処方通りの手当てがまだ終わっていないのに、目立つ不快な症状が直ちに消えないとか、自覚症状が無くなったとか、様々な理由をつけて、服用をやめようとするのです。
細菌による感染症の場合、対象微生物が制圧された後にまで症状が残ることもあるそうですが、あまりに早めに処置をやめてしまうと、病気がぶり返したり、次に症状が悪化した際に、同じ抗生物質が効かなくなる体質になっている恐れがあります。
そこでマービンの大秘密第三番の登場。
どんな処方にも2つの部分がある。その一つは薬、もう一つはそれが正しく使われることを保証するための方法だ。
■ その薬の服用方法は正しいですか?
マービン義兄の実体験として(お医者様なのに本当かなと疑わしき点はありますが)、彼がフランス旅行中に、座薬をまるまる一箱食べてしまったそうなのです。
正しく処方された薬は、適切に出されたものかもしれない。しかし服用方法(使い方)を誤れば、どんな薬であっても、薬効(薬の効き目)が当初の思い通りに出るとは限らないのです。
私の経験でも、とある基幹情報システムのとある機能で、画面上でいろいろと補助計算機能を使いながら、数字を打ち込む仕様を作り込むことがあるのですが、
1)そもそも、補助計算機能が実態にそぐわないように設計されて使い物にならない
2)エンドユーザが補助計算機能の存在を知らされていないので全く使われていない
ということが発生して、目を丸くしたものです。どちらも、何百万円、何千万円を投下して構築した機能なのに、ユーザは従前通り、手持ちのローカルPCでお手製のExcelワークシートを駆使して、入力用データを一体作成してから、それを一つ一つ画面に転記していたのです。
そのExcelワークシートの出来が良ければ、Excelワークシートを画面貼り付けやuploadする機能を構築したり、そのワークシートの計算機構をアプリケーション化すればよかったのに、、、
■ 喉元過ぎれば熱さを忘れる
もう一つの体験は、人はアフターフォローの大切さを忘れがちになる、というものです。
基幹情報システムの改修が大がかりであればある程、関連する業務プロセスやデータ定義がガラッと変わるものです。そういう場合、情報システムの改修を無事終えることが大前提なのですが、そのうえで、新しい業務がきちんと定着することが次に大事なことになります。
(実際にはソフトウェアは目に見えないのですが)目に見えると錯覚してしまう情報システムが出来上がってしまうと、たちまちコンサルタントにこれまで支払った大金がとても負担に感じてしまうのです。それゆえ、その後、コンサルタントが新システムの実運用のアフターフォローの提案をするのですが、これ以上に大金を支払うのが大変勿体ないと感じてしまい、そこでコンサル契約を打ち切ることをよく目にします。
本当の業務改善や経営改革は、なにかしらの仕組みを作った時がピークなのではなくて、その新しい仕組みを使って、初めて結果を出すところなのです。月次実績レポートを出す、予算編成を終える、初めての製品を出荷するなど。
できれば、新しい業務マニュアル、新しい情報システムに魂を吹き込み、それが芽吹くまでが勝負なので、そこまで、伴走してきた頼りになるコンサルタントのアドバイスをきっちりもらえる体制で初期運用を迎えた方が最終的にはコスト的にも成果的にも良い結果になることが多いというのが実感です。
画竜点睛を欠く
ということにならないように、どこが業務改革推進のピークアウトなのか、きちんと見極めて、コンサルタントにはどこまでアドバイアスを仰ぐのがいいのかを判断した方がいいと思います。
当然、バグを仕込んで、いたずらに契約延長に持ち込む悪徳コンサルタントは、その前にふるいにかけられて選別されているという前提がありますが。(^^;)
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(16)大秘密第一番 - こわれてねえのなら、なおすなよ。」
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(17)大秘密第二番 - 自分で自分を治せるシステムを繰り返し治療していると、ついには自分を治せないシステムができる。」
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