■ なぜの呪い
このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。
ワインバーグ氏がいうには、他の人では手に入れることができない種類の情報を手に入れることができるコツを知っていれば、決して飢えることはない(職に困らない、経営コンサルタントとしてやっていける)のだそうです。
クライアントの多くは、コンサルタントを一種の「鏡」として雇うのです。つまり、クライアント自身の姿を正視することで、自分自身または自分が属する組織にどんな問題が生じているのかを発見するための道具として使うためにです。
これを読んでなるほどなあと思いました。さらに、長い長い第七ナショナル銀行のランバートから「なぜ、そんな服装をしているんですか?」という質問に答えようと理由を探すのに大変苦労したワインバーグ氏の体験談の後に、鏡のお名無しの次に、この「なぜ」という問いかけの持つ力のすごさにも感心させられます。
ワインバーグ氏は自分のファッションについて一晩考えさせられた後、この他人に「なぜ?」をぶつける質問の強力さについて再確認しました。そして一つの法則を見つけることになるのです。
理由のストック切れは決して起こらない
そして、ワインバーグ氏は父の言葉を思い出します。
「エネルギーや空気や水や食物は品切れになるかもしらんが、理由ばかりは決して品切れにはらんもんだぞ。」
人は、なぜ・・・・するのか? という問いに対して、いくらでも理由を挙げることができるものだというものです。そしてその理由に対して不満を持とうものなら、問いかけ側の方も、「なぜ?」「どうして?」をいくらでも繰り返すことができるというものです。
トヨタウェイに「なぜ」を5回繰り返せよ、というものがありました。人は5回もなぜを繰り返せば、そのうちに答えに窮し、窮するということは、その場におけるBest Answer (真因)に辿り着けたのではないかという仮説に基づく意見です。
これに対して、真っ向から反対の意を唱えるつもりはありませんが、弁が立つ人ならば、徐々に論点を微調整して、そのまま永遠に質問を繰り返すことができるのだろうなあとも思わないでもありません。自分にも当てはまるものが少なからずありますから。(^^;)
ワインバーグ氏は、このことを、気の利いたコメントを思いつかなかったミーティングで利用することで窮地を脱したそうです。逆に、クライアントに「なぜ、おたくは・・・・?」と質問を続けたそうです。クライアントは真剣にその質問に答えようとして、大いに議論し、ミーティングは大いに盛り上がり、それまでワインバーグ氏が時間をかけて実態調査をして見つけた情報より、短時間でより多くの事実を発見することができたそうです。しかも、そうしたやり取りの中で、クライアントからワインバーグ氏は、素晴らしい観察眼の持ち主だということですっかり感心され、コンサルティング契約の延長まで勝ち取ったそうです。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
といいますが、「聞く」だけで、鋭い観察眼の持ち主ということで持ち上げられることもあるという事実は覚えておいて損はないかもしれません。
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