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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(47)三の法則 - 思考の手綱をゆるめてみる(その1)

経営コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ 本レビュー
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弱点が分かっているから利点を生かすことができる

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

外部リンク  G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)

人は誰しも利口でありたい、成功したい、いつも正当でありたい、と願うものです。その願いが強ければ強いほど、自分の思考過程に何かが欠落していることに気づくのが格別に困難になるものです。

前回取り上げた、女学生との双子・三つ子問題を発端にして、ワインバーグ氏は自分の思考の中に何が欠けているのかを見つける技法の必要性を十二分に思い知り、自分の思考を自主点検できるツールをいろいろ探すことになったそうです。

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それは、現代では当たり前のツールになっており、筆者もコンサルティングの現場でしょっちゅう活用させてもらっているものが、「三の法則」です。

自分の計画を駄目にする原因が三つ考えられないようなら、思考過程の方に何か問題がある

G.W.ワインバーグ著「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」(P89)

政策(policy)というものは、①狙い、②方策、③影響度(感応度)、④副作用、の4つがワンセットになっています。最近目を引くのは、金融政策における副作用です。日欧では、景気対策他のために金融緩和策をとり、金利をマイナスにまで引き下げていますが、「リバーサル・レート」という言葉がやたら目につくようになりました。

リバーサル・レート:
金融緩和政策の導入により金利がある一定水準を下回ると、かえって金融緩和の効果が反転してしまうという理論。本来経済の安定化をはかるための金融緩和だが、金利を下げすぎると金融機関の預貸金の利ざやが縮小し金融仲介機能に悪影響を及ぼすことから、経済にとってむしろマイナスになるという考え方。米プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイアー氏が提唱し、日銀の黒田東彦総裁が講演で言及したことで話題となった。

外部リンク リバーサル・レート|証券用語解説集|野村證券

ある政策が、狙った通りに効果を発揮しているかは、採用した施策の結果の影響度または施策に向ける努力と結果の相対的バランス(効率・感応度)のどちらかで評価することになっています。勿論、狙いと逆または異なる方向へ思惑がずれていくのは、副作用として、どれだけ許容できるか、または発生を回避する手立てをいくつかあらかじめ用意しておく必要があります。

このとき、自分で立てた政策を、推進者ではなく、否定者の視点から、ダメなところ、骨抜きになる弱点を探していくと、自分の建策が後々報われることにつながります。この「三の法則」は驚くほど効果を発揮します。

どうやって弱点を見つけていくか

しかしながら、自分がこの作戦がいいと思ったからこそ、建策したわけで、おいそれと自分が建てた作戦を否定するのには心理的抵抗が大きいわけで、なかなか上手く否定的検証が機能しない可能性があります。

社会科学が相手の場合は特に、ブレインストーミングとか、ブレインライティングとか、ゲーミフィケーションなど、ある種のコミュニケーション・ツール、アイデア整理法を用いると、多面的にものごとを観察できるかもしれません。

ただし、漫然とホワイトボードや付箋を眺めていても、時間ばかりが過ぎてしまうかもしれませんので、ここでは、ワインバーグ氏の知恵を借りて、そういうブレインストーミングの場で、まさにどんな視点をもって批判的に自分の建策を検証していくのか、tipsを5つに整理して説明してみたいと思います。

  1.  類似性を探す
  2. 極限値に変えてみる
  3. 境界線の外に目を向ける
  4. 説明の顔をしたアリバイに注意する
  5. 情緒的不調和の原因を探る

いずれも、ITシステム構築プロジェクトにおいて、特にソフトウェアのテスト工程にて、業務要件や非機能要件の確認、バグの発見に実際に役立っている代物ばかりです。

類似性を探す

今、皆さんが検証したいシステム、制度、ルール、施策などと、何らかの意味で類似したものを探し出してみてください。例えば、新しいITシステムを企画する場合は、同業他社の成功または失敗事例を調べるのもよいですし、組織内の現行または過去の事案を引き合いに出してもいいかもしれません。

もし、ピタッと当てはまるものがない場合でも、検証対象の中でもどの部分を検証したいのか、ある程度アタリがついているのなら、その当たりを付けた部分だけ似ているものをもってきても構いません。いうなれば、人間に効く薬を開発するのに、マウスやチンパンジーを実験に使うのと同じ要領です。

(注:動物実験に倫理的な問題があることは承知しています。気になる人は、ヒトを対象とする研究の研究倫理原則の一つ、「ヘルシンキ宣言」をググって調べてください)

ワインバーグ氏の洞察から、類似案件との比較で得られる知見のすばらしさは、検証対象の内容はもちろんのこと、その検証対象を含めた暗黙も大前提についても気づきが得られることです。

例えば、「生産管理の技能向上のためのトレーニング・コースの企画」という課題に取り組んでいると仮定します。サーカスでの見世物やペットとしての動物に訓練・しつけをする事例を参考に引いてくるとします。企画時にはトレーニング内容にばかり目が行きがちですが、動物のしつけという観点から、「賞罰」という視点が抜けていることに気づくかもしれません。

これまで、会社組織が「生産管理の技能向上のためのトレーニング・コース」として、ビデオ視聴を主要なコンテンツにしていたと仮定します。その組織では、ビデオ視聴する場合は、換気が悪くて汚れた保管庫で、しかもたった一人で見せられる環境しか用意していなかったとします。結果として、そのビデオ視聴は、技能向上のためのトレーニングというより、なにか仕事をしくじった場合の懲罰として、生産ラインについている従業員からみなされていることが分かりました。

対応策としては、非常に簡単なことです。小奇麗な会議室で、一度に10~20人程度の参加者で、ランチを挟んだ時間割にして、そのランチを会社側で用意するのです。これで、それまで懲罰でしかなかったビデオ講習が、従業員から望んで体験する楽しいトレーニング行事となります。

(ちなみに、ワインバーグ氏の本著の日本語版初版が1990年だということを忘れてはいけません。最近、ビデオ講習なるものは運転免許証の更新時にしか見かけなくなりましたからね)

残念ながら、そろそろこの辺で字数制限のようです。続きは次回までお楽しみに。

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