■ 組織は“暗黙知”と“コンテキスト”で回っている!
「語学に詳しいというだけで字幕翻訳が務まるわけではない、と耳にしたことがある。サッカーの通訳もそう。日本の指導者の指示を外国人選手に伝えるとする。「横ズレしろ」。この「相手の動きに応じて立ち位置やマークをスライドする」という趣旨を瞬時に外国語に言い換えるのは、ある共通理解が無ければ言葉が達者な人でさえ戸惑うはず。とかく外国人との意思疎通ではズレが起こりうる。」
しょっちゅう、海外出張しているベテラン社員さんに、「英語ができるが仕事ができない人と、英語はできないが仕事ができる人、どっちとタッグを組むと仕事がしやすいですか?」と真面目に尋ねたことがあります。返ってきた言葉は、「そりゃ、後者に決まっているよ。だって、言葉が通じないから」。
この時の、“言葉”とは、単純に、日本語とか英語とかを指すのではなく、その業界なり、その会社なり、その業務なりの、中身のある、伝達および相互意識合わせすべき“情報”という意味です。
「ハリルホジッチ前日本代表監督が解任された理由の一つにも「コミュニケーション」が挙げられた。」
より専門的であったり、複雑なものであればある程、相互理解に必要な暗黙の了解というものの重要性が増してきます。これを“コンテキスト”、“文脈”、時には“行間”とか“暗黙知”とも呼ばれるものです。お互いの共同の目的を果たすために、共通理解の土壌が必要というわけです。
それゆえ、“コントラクト文化”のアングロサクソン流の会社経営より、”コンテキスト文化“の日本流の会社経営が時流によっては、競争優位に立てたことは、この”コンテキスト”を組織力、チーム力の向上に大いに役立てて、成果を上げることができた結果ともいえます。
⇒「経営戦略概史(26)ピーター・センゲの「学習する組織」と野中郁次郎の「知識創造経営」(後編)」
⇒「働く日本人はAIを克服することができるか?(後編)モジュール化 対 要素技術・匠の技から考える」
■ 言語や国境以外にも、例えばジェネレーションにも
「でも25年(筆者注:Jリーグ誕生から)が過ぎると日本のあるべきサッカー、スタイルがそれなりにできあがってくる。言われたことだけやればOKで、通訳を介した一方通行で済んだ段階は終わり、やり取りが何十往復にもなる。海外で経験を積んだ日本選手もいて「いや、こうだ」と異議を唱え、意見を戦わせるわけだ。これで言い争いが増えるのは悪いことではなく、成長の証しでもあると思う。」
日本人同士の阿吽の呼吸で済んだコミュニケーションの時代は終わりを告げようとしています。グローバルなメガコンペティションの時代、会社やスポーツチームを見ても、欧米やアジア起源の人達が切磋琢磨している姿はもはや日常になっています。古き良き時代をただ懐かしむわけでもなく、変化に最も俊敏に対応できたものだけが生き残る、ダーウィニズム的視点からすれば、忖度(そんたく)が幅を利かせる組織は、早晩、自ら異質な者達を排除することで、変化を、進化を、遂げるチャンスを失い、精気を失って、衰退していくでしょう。
これは、日本文化を体験した人以外を積極的に受け入れるべき、という視野狭窄なことを言いたい訳ではなく、もはや純日本人の若者も、そうしたグローバルスタンダードなものの見方やコミュニケーションの仕方を好む人の数が多くなってきたことを、ひしひしと感じているからです。
「最近の若者は」という言葉が口を衝くということは、私も年老いたという証拠ですが、そうしたジェネレーション間のコミュニケーションギャップも乗り越えないと、組織はやっていけませんから。こうみえて、私も日々、合わせる努力をしているのですよ。(^^;)
⇒「そうか、君は課長になったのか。(16)はっきりと言葉にする - 「あうんの呼吸」が仕事をダメにする」
■ 創発的であることは双発的であること
「僕は違う。人に相談し、意見も戦わせつつ、自分がやれると思えばやる。その代り、故障をすれば誰のせいでもなく自分の責任。あすプレーするかもしれないかも、代表での振る舞いも、自分で決める。ずっとそうしてきた。そこには後悔の生じる余地がないんだ。失敗しても、自分が選んだことだから。」
自己責任の原則に基づいて、互いの意見を戦わせ、結果についてはきちんと事故で責任をとる。その積み重ねで、個人と組織が成長し、結果を出す。それが理想ですね。そして、そこで忘れてはいけないのは、組織のいいところは、1+1>2 であるところ。
間断の無い、相互理解と意識向上のためのコミュニケーションは双発的(一方通行で無い)であればある程、個々人では到達や発見できなかった“知”を得ることができると信じています。これが“創発的”であるということ。
ごく最近ね、怒鳴って、怒りの感情を前面に押し出していたら、若手が委縮してしまって。。。時代が時代なので、パワハラ、という単語も脳内をめぐり。。。
できるだけ、これからも“双発的”で“創発的”なコミュニケーションのために、できるだけ相手との間合いを調整したいと思います。
(これが、難しいんだよな~)
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