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孫子 第5章 勢篇 23 善く戦う者は、之を勢に求め

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 烏合の衆でも「勢」を与えれば勝利できる!
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巧妙に戦いを仕掛けられる者は、戦闘に突入する勢いによって勝利を得ようとします。
「勢(組織全体の戦闘力・戦闘態勢)」を発動させるには、

1.兵士の個人的勇気には頼らずに、組織の統率・指揮力を発揮させる
2.人々を選抜し、適材適所に配置して、組織全体の勢いに従うように誘導する

兵士達を勢いに従わせて戦わせる様は、まるで木や石を転落させるように見えます。
木や石の性質は、平らな場所に安定していれば静止していますが、傾斜した場所では運動をし始めます。
形が方形であれば、そこに留まっていますが、円形であれば転がり始めます。

それゆえ、兵士達を巧みに戦闘させる勢いが、丸い石を千尋の山から転落させたようになるように仕向けるのが、戦闘の勢いというものなのです。


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前章までの解説の通りに、勢いを構成し終えた地点に、標的となる敵軍を誘い出した指揮官は、いよいよ自組織の勢いの発動に取りかかります。味方の戦力が満を持して強大である一方、敵軍が罠に気付かずにいる状況にあったりして、自軍が決定的に有利な態勢下にあると兵士達が理解していれば、兵士一人一人の性格や練度に関係なく、兵士全員が勝利を確信して勇気づき、士気が上がります。

好機を見計らった指揮官は、この戦意旺盛な軍を、一気に敵軍に突入させて勝利をもぎ取ります。いったんこのように自軍の士気を仕組んでしまえば、もはや勇者は進むが怯者(きょうしゃ)は立ちすくんでしまうといった事態にはならず、全軍一丸となって敵に襲い掛かるので、勝利はもう確約されているのも同然となります。

古代中国の兵士は、元々農民を徴収したものなので、戦闘技術の優秀さに勝利の要因を求めることは難しく、いかに烏合の衆を上手に率いて勝利をもぎ取るかの腕が指揮官には必要になっていたのです。そこは、近代ビジネスにおいても、より大企業になればなるほど、そうした一見従順で数はそろっているが、いちいち指示を与えないと動けない、何もできないことを前提にした発言しかしない、そういう「ふつーの人」の集まりになっている可能性があります。そういう「ふつーの人」をどう統率するかのヒントを孫子は与えてくれています。

指揮官は、自ら創り出した客観的有利さによって、逆に兵士の主観的心理を操作し、全員を勇者に仕立て上げようとする「勢」の理論は、そうした「ふつー」の農民兵から構成された軍隊を勝利に導くための方策の一つです。いつも、精鋭部隊がいるとは限らず、またいつも組織を精鋭に訓練するだけの時間的余裕があるとも限らない以上、ただ部下の意欲や能力の低さを嘆くだけのリーダーは、指揮官として、その務めを果たしているとは到底言えないでしょう

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