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孫子 第6章 虚実篇 27 之れを蹟(あとづ)けて動静の理を知り

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 敵情を知るためには?

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敵の兵力を分散させるには、まず敵情の把握が必要になります。
その手段としては次の4つ。

① 敵軍を尾行してその行動基準を割り出す

② 敵軍の動静を把握して、その死活を分ける土地を割り出す

③ 敵軍の置かれている状況を洞察して、敵にとっては何が利益で何が損失なのか、その利害・得失の計謀(けいぼう)を割り出す

④ 敵軍と軽く接触してみて兵力の優勢な所と手薄な所とを割り出す

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兵力の相対的優勢を実現して勝つ戦術が、「人を形(あらわ)す」作業を要する点は、前回説明しました。孫子はここで、そのための具体的方策を4つ挙げています。

① 尾行
斥候隊に敵軍を追跡・尾行させ、敵が何を基準に行動するのかを探る方法。敵軍の行動の中に、例えば夜間や悪天候の日には決して行動しないとか、決まって先遣隊を進出させた後に本体が動くといった、一定の規則性を発見できたなら、それらを判断材料にして、敵の今後の兵力展開を予測することが可能になります。

② 攻勢
自軍は土地の防衛を捨てて攻勢を取り、敵軍を土地を防衛せんとする守勢に立たせることによって、敵の兵力配置を鮮明に浮かび上がらせ、それに基づいて、例えばそこに駐屯する兵糧に憂いの無い土地とか、逆にそこに踏み込めば補給が途絶する地域とか、敵にとって生死の分岐点となる土地がどこであるかを予見する方法です。これによって、敵をどこで戦わせれば敗北に導けるのかを、事前に策定することができます。

③ 利害・得失の推量
敵軍が現在置かれている状態を様々な角度から計量し、例えば兵糧が底をついている敵にとっては、短期決戦が利益となり、持久戦が不利になるとか、あるいは逆に、強力な援軍の到着を当てにしている敵にとっては、会戦の引き延ばしが利益となり、近日中の会戦は不利になるといった具合に、敵の立場にまわって、その利害・得失の計謀を推量する方法です。これによって、敵が今後何をしようとし、また何をしようとはしないのか、その行動を予知することが可能になります。

④ 小競り合い
小部隊を繰り出して、敵軍のあちこちをつついて小競り合いをさせ、反撃の度合いから、兵力配備の重厚な地点と薄弱な地点とを探り出す方法です。これにより、敵の兵力配置の態勢と、そこに込められている意図を割り出すことができます。

これら、4つの方法を用いて、敵情を正確かつ総合的に把握し、その結果に基づいて、いつどこに兵力を集中すべきかを決定します。

現代ビジネスでは、「敵」というのは、「コンペチター」だけというわけではなく、「顧客」も、動向を探る相手という意味では同意になります。例えば、「アンテナショップ」での集客状況から市場動向を探る、とか、期間限定商品を発売して、市場ニーズを推し量り、行けそう! となれば、生産ラインをきちっと確保して、本格的生産に入るとか、顧客・市場を探る場合にも、孫子がいう所の4つの方法はヒントになるでしょう。

また、ゲーム理論にも通じるのですが、こちらがどういう手で市場に攻め込むかで、相手が取る手の先を読む、例えば、機能を絞った、お手軽製品を低価格で売り出してみるとか、地域限定(店舗限定)の販促キャンペーンで、ある一定の商圏の潜在顧客ニーズを探ると共に、相手店舗の顧客の減少度合いへのインパクトを見るなど。こっちの販促に、相手がどう出るか、静観するのか、対応策として、同様の値引きキャンペーンを打ってくるか、それとも、セット販売やクロスセルを打ち出してくるのか、コンペチターの動向を見ていれば、こっちの次の手も考えやすくなります。

最近流行の、ウェブサイトなどで行われている「A/Bテスト」も同じような手口ですね。

しかし、紀元前から、このようなことを考えていた人がいた、というのは驚きです。そして、その戦略・兵法書を経営に活かそうとする、日本の経営者の中の先人たちにも頭が下がる思いです。

兵法書→ビジネス書、という流れは、世界的に見て、何ら特別なことではなく、戦後日本は研究がおくれている、と耳にしたことがあります。だって、サプライチェーン(SCM)の領域で使われている「ロジスティクス」という用語は、元々、「兵站(へいたん)・補給」という軍事用語ですからね。欧米でも海兵隊を参考にしたビジネス書がもてはやされたりしています。

日本でも、もう少し、戦略・兵法・軍事からビジネスへのヒントを探ろうというのが流行ればいいんですけどね。それは、筆者の好みと言われればそれまでですが。。。(^^;)


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