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金融知識、知らぬは損 クイズに挑戦! 日本経済新聞より

経営管理会計トピック 経済動向を会計で読む
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■ M&I(マネー&インベストメント)に掲載されていたクイズをご紹介!

経営管理会計トピック

2015年12月30日の日本経済新聞の16面に掲載されていた、あなたの金融知識を問うクイズをご紹介します。問題そのものは転載になりますが、解答の解説は筆者独自色を出して、ディープだけどできるだけ分かりやすいものにしたいと思います。でも、経営管理とか管理会計に結び付けて解説しますよ! ちなみに、この紙面は電子版の記事検索では閲覧不可能なので、電子版の方は、紙面ビュワーで内容を確認してください。

筆者の得点からまず公開すると、10問中9問正解しました。気楽にやってみて痛い目を見ました。。。(^^;)

それでは問題です。

Q1:金利が年1%、インフレ率が年2%のとき、今の100万円の1年後の実質的な価値は?
     ①100万円より高い      ②100万円より低い

Q2:「円定期預金3カ月もの、金利年2%」という金融商品。100万円を3カ月預けると、手取りの利息は?
     ①約2万円      ②約4000円

Q3:外貨を買う際の為替手数料が1米ドル当り1円、南アフリカランドは0.3円。どちらが有利?
     ①米ドル      ②南アフリカランド

Q4:100万円を年間5%で運用する。毎年もうけの5万円を引き出す場合と、もうけを元本に加えながら運用する場合とを比べると30年後のもうけの差はどれくらい?
     ①約30万円      ②約180万円

Q5:同じ資産に連動する投信2本のどちらかに現時点で投資するなら基準価格が低い方が有利?
     ①正しい      ②間違い

Q6:A投信は分配金が2000円で基準価格は3000円下がり、B投信は分配金500円で基準価格は500円上がった。運用成績が良かったのは?
     ①A投信      ②B投信

Q7:1000円の株が50%値下がりして500円になった。50%上昇すればいくら?
     ①1000円      ②750円

Q8:インフレ率がA国は年5%、B国は2%だったとする。為替レートは長期ではどうなりやすい?
     ①A国が上昇      ②B国が上昇

Q9:固定金利型住宅ローンの金利は何に強く影響される?
     ①日銀が決める短期金利      ②経済情勢で決まる長期金利

Q10:生命保険の保険料が安くすむ加入時期はいつ?
     ①金利が高いとき      ②金利が低いとき

■ それでは答え合わせです。

せっかちな人、筆者の解説が不要な方は、すぐに答えを確認したいハズ。そこで、答えだけ下記に列挙します。

Q1:②
Q2:②
Q3:①
Q4:②
Q5:②
Q6:②
Q7:②
Q8:②
Q9:②
Q10:①

■ それじゃあ、解説をしてみましょう!

本当に理解を深めたい方、筆者がどんな解説をするのか気になる方は、ここまでまだ読んで頂いていますね。それでは、全10問について、濃淡をつけて解説します。

Q1:
インフレとは、モノの値段が上がり、お金の相対的な価値が下がることです。お金も一つの商品として考えてみましょう。ジャガイモ1つと、10円玉という銅と錫(スズ)の合金である青銅(といってもほぼ純銅ですが)の塊り1個が等価で交換できるものとします。

ジャガイモ1つ = 10円玉1枚

という等式が成立しています。ここで、インフレが起きて、ジャガイモの相対的価値が上がり、青銅製のコインとの交換比率が1/2に悪化した場合、

ジャガイモ1つ = 10円玉2枚

で、交換が成立します。これを、ジャガイモ側から見たら、10円が20円に値上がりしたというわけ(このとき、インフレ率は100%となる)。

一方で、青銅製のコインを所持していることが、コイン自体の所有数を増やすとしたら?
これが金利です。青銅製コインを1枚持っていると、1年後にもう1枚青銅製コインがもらえるという。これが、年利100%、すなわち、青銅製コインが1年間に生み出す価値、金利というわけです。

上記の例だと、インフレ100%で、ジャガイモの価値が2倍になり、金利100%で、青銅製コインの価値が2倍になったので、それぞれの交換比率は1年後も不動で一定です。したがって、

ジャガイモ1つ = 10円玉1枚 + 自然で増えたもう1枚

となります。

インフレ → お金の交換価値を小さくするもの
金利   → お金の交換価値を大きくするもの

それゆえ、年利1% < インフレ率2%/年 だと、お金の交換価値を小さくするインフレ率の方が勝っているので、今持っている100万円の交換価値は1年後に小さくなります。問題文に「実質的な」とありましたね。インフレ率分を考慮して、金利と相殺して考えることが「実質」で価値を見るということで、インフレを考慮しないで、金利で増えた額面だけを見ることを「名目」といいます。そうです。あの経済学で登場する名目成長率とか実質成長率とかいうやつです。

インフレ、金利双方を考慮して、現在所持している「お金」の価値を、将来の金利による交換価値の増加分と、インフレによる減少分によって評価してみて出した結果を、「割引現在価値」といいます。残念ながら、企業財務の初学者向け教科書では、インフレまで考慮された説明はなく、金利だけ(すなわち名目)でお金の価値を云々します。実務では、長期の設備投資採算をみたり、ディスカント・キャッシュ・フロー(DCF)法で、企業価値を計算したりする時に使用する概念です。

Q2:
金利が1年間のスパンで考えるのが「年利」。問題文に「金利年2%」とあるので、一年間預け続けないと2%の全てを手に入れることができません。金利とは時間価値。1年間だけ100万円を持っていることの価値が年利。じゃあ、3カ月だと、その1/4だけの価値しか享受できないのです。選択肢は、ちょっと意地悪です。②は約4000円となっている。

100万円の年利2%分の価値は、 100万円×2%=20,000円
その4分の1は、5,000円のはずなのに、、、

そうです。銀行預金の利子所得に対する源泉分離課税20%分を5000円から差し引いているわけ。でも、年利が一年間の時間価値ということが分かっていれば②を選択できたはず。しかも、この問題は、Q4で取り上げる「単利」「複利」という視点を曖昧にして、おそらく単利前提の問題設定になっていますね。

Q3:
見るからにひっかけ問題。ここでは、両者の為替水準を知らなくても勘で反対を選んでおけば正解できます。こういうのは何度も入試問題を解いているから気付くもので本質的ではありませんが。。。

1米ドル      = 120円
1南アフリカランド = 8円

なので、120円の交換に1円かかる(120分の1)のと、8円の交換に0.3円かかる(80分の3)のが、どちらが交換手数料としての負担が大きいかという問題でした。

0.83% < 3.75% で、南アフリカランドの負担が大きいことが分かりました。

Q4:
もうけを全額引き出して金利を計算するのが「単利」です。この場合、最初に投じる100万円が元手(問題文では「元本」と呼んでいる)となり、これに、年利分だけ毎年もらえるだけ。一方で、「元本」にそれまでの「もうけ(=そこまでに付いた金利)」を合算して、それに次の金利をかけたものを手に入れることを、「複利」といいます。ここでは、2年後を考えてください。

「単利」
100万円 × 5% = 50,000円

「複利」
105万円 × 5% = 52,500円

ここで、2,500円の違いが生じます。ちなみに、年利が10%の場合、「単利」と「複利」とでは、20年目で2.2倍の差異、30年目で4.4倍の差異が生じます。でも、皮膚感覚で「複利効果」がざっと分かりたいものです。そういう人のために、「72の法則」というものがあります。細かな自然対数云々という説明はかっ飛ばして、

年利(単位:%)×年数(単位:年) = 72

だけ、覚えておけば、元本が2倍になる「年利」か「年数」について、おおよその数字感がつかめます。例えば、

3% × 24年 = 72

という風に使います。
「年利3%ならば、24年で元本が倍になる」
「24年で元本を倍にしたいなら年利3%の運用が必要」

ただし、厳密には下記の式で計算するものなので、

n 期末の元利合計 = 元金×(1+利率)^n ←ここは、n乗ということ。

(1+0.03)^24≒2.033 となり、24年後には、約2.033倍になっていますがね。

Q5:
投資信託は通常設定時に1万円からスタートし、その後の運用成績の良否で基準価格が変動します。仮に、現在時点で、A投信の基準価格が1万4000円、B投信の基準価格が1万2000円だったとしても、それは、A投信が設定された時点から4割上昇、B投信が違うタイミングで設定されて、その時点から2割上昇しただけです。ここでは、「同じ資産に連動している」という条件が重要。A投信とB投信は、タイミングの違いだけで、基準価格に差異が生じてしまっている本質的に同じ商品。これ以後の値動きは同じになります、

こうした、過去の意思決定(ここでは投信設定のタイミングの選択)によって、将来の損得に影響しない要素が、金額で示されている場合、それを「埋没原価(サンクコスト)」と呼び、意思決定会計では、必須な思考材料です。

ちなみに、上記例のA投信でも、B投信でも同額を投資すれば、そのリターンは同じになりますが、「基準価格×口数」として、同口数だけ購入する場合、同じ50%の値上がりでは、そのリターン額には差異は生じますよね。

A投信:
1万4000円 × 50% = 7000円

B投信:
1万2000円 × 50% = 6,000円

まあ、A投信の方が、初期投資額がその分大きいのですがね。こうした、「額」と「率」の問題というのは、管理会計ではよくあること。大事なのは、自分の手(?)を動かして、試算してみることです。仮値を置いて計算してみる、これが大事!

Q6:
これも「分配金の多寡だけに目が行くと痛い目に遭いますよ」、というメッセージが問題文を目にした瞬間にピンときたので、全文読まずとも、正答②に辿り着く。もはや、ここまでくると受験戦争の被害者ですね。

これはですね、「TSR:Total Shareholder Return(株主総利回り)」の概念を使って解くんです。株主にとってのリターンは、キャピタルゲイン(株式売却益)とインカムゲイン(配当)の合計です。そこで、「分配金」を「配当」、「基準価格」を「株価」と置きます。投信を株式会社に置き換えて考えるわけです。

A投信(A株式会社)のリターンは、

分配金 + 基準価格の増分 = 2000円 + ▲3000円 = ▲1000円

B投信(B株式会社)のリターンは、

分配金 + 基準価格の増分 = 500円 + 500円 = +1000円

投信も株式も、未売却のままの実現していない売却想定利益は、「含み益」といって、厳密には手元にキャッシュとしてキャピタルゲインが存在しているわけではありませんがね。

誰ですか? 「ワシは、株主優待を期待して株式を保有していて、配当や売却益など期待していない」という人は? 株主優待のために企業が支出するお金というのは、現金配当の代わりとも言えますし、会社から現金が流出するわけだから、キャッシュフローだけ考えれば株価(≒企業価値)にはマイナスに働くのですよ。

さらに、「いやいや、俺は●●会社を応援したくて株主になっとるんだ!」とおっしゃる方。。。その●●会社の株式を購入するために支出した現金は、他のものを購入・費消した時に得られる「満足度」分だけ、経済価値が認められるのですよ。その応援の気持ちすら貨幣価値で測定することができます。こういうのを、「機会費用(機会コスト):Opportunity Cost」といいます。ちなみに、この説明は、「何でもお金で買える」というセリフとは無関係ですからね。そこは誤解なきよう。。。

Q7:
またまた、有名な議論であるうえ、受験勉強の影響で、素直に問題文を見れない自分は訳が分からずとも、絶対②を選択してしまいますね。(^^;)

1000円 → 50%減 → 500円 → 50%増 → 750円

50%減って、50%増えても、元の金額に戻りません。同率の変動では元値には決して戻らないことを「減衰効果」といいます。ここでも、「額」と「率」の問題が邪魔をします。500円減って、500円増えれば元の1000円に戻りますが。。。

Q8:
この問題はQ1の焼き直しでもあります。インフレは、モノの相対的価値があがり、お金の価値が下がることを意味しています。よりインフレ率の大きい国のお金(通貨)は、よりその価値を小さくしてしまいます。そして、外国為替市場というのは、異なる通貨(お金)をまるでモノのように、物々交換する比率を決めるところです。インフレで相対的にその国内で価値が下がった通貨そのものの価値は、今度は他国の通貨に対しても、その価値を下げることになります。したがって、低インフレ通貨の為替レートは、高インフレ通貨に対して価値が上がるので、レートも切り上がるというわけ。

A国通貨:100ゴールド = B国通貨:100シルバー

ゴールドがインフレの影響で、5%だけ価値が下がる。5%上乗せすれば元の価値。
シルバーがインフレの影響で、2%だけ価値が下がる。2%上乗せすれば元の価値。

100ゴールド×1.05 = 105ゴールド
100シルバー×1.02 = 102シルバー

105ゴールド = 102シルバー で元通り釣り合う関係に。

これをちょっと比率を変えてみると、

100ゴールド = 97.1シルバー
または、
102.9ゴールド = 100シルバー

低インフレ国の通貨(シルバー)の高インフレ国の通貨(ゴールド)に対する交換比率が前に比べてよくなりました。これが「為替レートが上昇」した、と表現するんです。

Q9:
固定金利は、長期金利。だから答えは②

Q10:
これは問題文が一部不親切です。この文章は、「今、保険料を100万円一括払いして、24年後に200万円受け取るために、保険会社は年利3%で運用しないといけません。200万円の受取金額を固定した場合、現在の金利は3%より低いと保険料は100万円より少なくなりますか、多くなりますか。それでは3%より高いとどうでしょうか?」というQ4における「72の法則」を応用した問題に脳内変換してみましょう。

・保険料:158万円 → 年利1%で24年間運用する → 保険金:200万円
・保険料:100万円 → 年利3%で24年間運用する → 保険金:200万円
・保険料: 62万円 → 年利5%で24年間運用する → 保険金:200万円

ここで、ズバリ158万円とか62万円とかを計算しなくても、保険料が100万円より小さくなるか、大きくなるかだけ、すなわち傾向値だけがつかめればいいのです。管理会計では、制度会計のように、ピタッとした金額が出なくても、判断しなければならないケースが多々あります。

運用期間と受取金額が固定された場合、年利が変わってしまうと、運用する元手金額を調整しないと、他のケースと同じ結果(保険金)が受け取れなくなります。運用利回りが小さくなれば、掛け金が大きく、運用利回りが大きくなれば、掛け金は小さくて済みます。

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