資産は長期にわたって収益獲得に貢献するもの
期間損益を計算する際、I/Sに計上される収益と費用の差し引き計算で期間損益を計算するために、I/Sに載せないものをB/Sに取り分けておく感覚を強くお持ちの方が多いのではと思います。管理会計でも、今期の目標売上高や目標利益を達成したかどうかに注目が行きがちです。
それゆえ、B/S項目は期間損益に無関係のものを集計しておく箱というイメージがあるかもしれません。実態はその逆で、B/Sの箱から期間損益計算のために必要な項目を引き出してくる、というイメージの方が会計が持つ計算機構にぴったりかもしれません。
そういう意味で、B/Sに資産計上されているものを、取り崩して費用化する方法には、①棚卸資産のように、収益獲得活動に個別に引き当てられて費用化するもの、②有形固定資産・無形固定資産から、定期的に減価償却によって費用化するもの、③低価法、商品評価損や減損損失のように、将来の収益獲得能力を失った資産を損失として、B/Sから抹殺するもの、という3分類が分かりやすいかもしれません。
おっと、ここは、USCMAのテキスト学習を振り返る投稿でした。本題に戻ります。。。^^;)
Impairment of Value 資産価値の減損
B/SのPP&E (Property, Plant and Equipment)、有形固定資産の計上は、その PP&E を利用可能な状態にするために要した全ての支出額をもって、Original cost(取得原価)とするのが基本です。
Original cost = purchase price(購入代価)+ 付随費用
棚卸資産と異なり、PP&E は、どれだけ収益獲得のために消費したのか、個別に紐づけることは困難なため、機械的・定期的に、depreciation(減価償却)という会計手続きにより、各会計期間に allocation することになります。費用配分の原則 としても有名な考え方です。
depreciation の対象資産かどうかとは無関係に、棚卸資産とは違うという意味での、長期性資産は、収益性の低下がみられた場合、これが将来の収益獲得能力を失うという意味と同義なのですが、その価値低下分を book value(簿価)から落とす必要があります。
そのB/Sから突然落とす処理のことを、減損処理といいます。
減損処理の対象となる資産は、long-term assets(長期性資産)、とりわけ、PP&E(有形固定遺産)、intangible assets (無形固定資産、goodwill のれんを含む)が該当します。
回収不能とみなされる金額は、「book value – 回収できる額」であり、この金額をI/Sにて損失計上するのですが、これを impairment loss(減損損失)と呼びます。
減損処理のプロセス
日本基準と差異があるため、ここは丁寧に米国会計基準に沿って(まあ、実態はテキストに沿ってですが)、復習していきます。
- Impairment の兆候がある
- Recoverability test を実施し、Impairment loss を認識する
- Impairment loss の測定 = Book value – Fair value
Impairments の兆候の把握
次の5つの兆候が見られたら、Recoverability Test に進みます。
- A significant decrease in the market value of an asset.
- 資産の市場価値が著しく下落
- A significant change in the extent or manner in which an asset is used.
- 資産が使用されている範囲または方法について大きな変化が生じた
- A significant adverse change in legal factors or in the business climate that affects the value of an asset.
- 資産価値に影響する法的要因や事業環境の重要な悪化
- An accumulation of costs significantly in excess of the amount originally expected to acquire or construct an asset.
- 当初予想の取得・製作コストの著しい超過
- A projection or forecast that demonstrates continuing losses associated with an asset.
- 資産が使用されている営業活動から生じる損益が、継続してマイナスとなる見込みである
Recoverability test 回収可能性テスト
book value が回収可能かどうかをテストして、impairment を認識するかどうかを判断します。
具体的には、book value と、undiscounted expected future net cash flows(割引前の予想将来キャッシュ・フロー)とを比べて、book value が小さい場合に、impairment が生じていると認識します。
Impairment loss の測定
減損損失は、次の式によって金額を測定します。
Impairment loss = book value – fair value
この時採用される fair value は、
- 市場がある場合、market value
- 市場がない場合、discounted expected future net cash flows (present value of future net cash flows)
会計上の表示
日本基準とは異なり、米国会計基準では、減損損失は extraordinary item とはならず、depreciation expense と同じく、income from continuing operations の範囲です。特別損失のような経常利益の外に置かれることはありません。
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Loss on impairment | 100 | Accumulated depreciation | 100 |
または、直接控除方式で、
account | debit | account | credit |
---|---|---|---|
Loss on impairment | 100 | Asset | 100 |
となります。
一旦、loss on impairment を計上した後、該当資産をそのまま使い続けるか、処分するか、2つの道が残されています。
該当資産をそのまま使い続ける場合 held for use
- 簿価切り下げ後の価値を original cost として、depreciation をやり直す
- impairment loss の戻し入れ(restoration)は認められない
該当資産を処分する予定の場合 held for disposal
- 簿価切り下げ後の価値を original cost とする。depreciation は行わない
- この時の fair value は、切り下げ前の book value と cost for sell (net realizable value) の小さいほう
- 切り下げ前の book value までは評価増しをすることが認められている(←個人的な留意事項)
Intangible Assets 無形資産
概要
実態がない(lack of physical existence)資産ですが、企業に経済的便益をもたらすものを、intangible assets といいます。
- 原則、企業外部から購入した、Purchase Intangible Assets しか資産計上できない
- 取得にあたって要した registration fees(登記代)、legal fees 等の付随費用は original cost に含める
- useful life が確定している資産は、useful life の間、amortization(償却)を行う。通常は、straight-line method を用いる
- useful life が確定していない資産は、確定できるか毎期判定を行う。確定したら amortization を開始する
- impairment の兆候は毎期判断するのはその他の長期性資産と同じ
- B/Sには、未償却残高のみ(Net value)を記載
Legal rights 法律上の権利
TACテキストにて、例示としてページが割かれていたので、出題頻度がある程度高いのかなと思い、例示列挙を確認まで。
- Patent 特許権
- Trademarks 商標権
- Copyrights 著作権
- Franchises フランチャイズ
フランチャイズについては、若かりし日の苦い思い出があります。当時の経理課長から、会計リテラシーを試す質問として、代理店の地位や取引関係をもって資産計上できるか? という問いかけがありました。私は、「対価を何らかの形で支払っている、Purchased assets としての要件を満たせば、資産計上できると思います」と回答しました。
課長と係長に、「代理店という名目だけで資産計上できるわけないだろ」と、口頭試問の間、散々やられました。いまだに忘れていないところを見ると、当時、よっぽど悔しかったのでしょうね。^^)
長期性資産である「非貨幣性資産」の復習はここまで。
減損会計について、1段階アプローチか2段階アプローチか、戻し入れができるか否か、日本基準、IFRS、米国会計基準ではそれぞれ異なります。どうぞ、ご自身で常に最新情報を確認できるようにしておいてください。^^)
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