IFRSと米国会計基準の歩み寄りの現況確認
米国会計基準には、従来、収益の認識について、概念基準としての「財務会計概念基準書」(SFAC: Statement of Financial Accounting Concepts)の No.5 や No.6 という基礎概念しか存在していませんでした。
どちらかというと欧州主導によるIFRSの勢力拡大に伴い、これを米国会計基準とできるだけ差異が出ないように同じような会計処理を行おうとする、いわゆる「コンバージェンス」(convergence:収斂、収束)を目的とした、FASB(Financial Accounting Standards Board:米国財務会計基準審議会)とIASB(The International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)の共同プロジェクトから、新しい収益の認識基準が公表されました。
それが、米国会計基準FASB ASC第606号 (国際会計基準IFRS第15号)です。
新基準は、2017年12月16日以降開始する事業年度から適用されています。
これ以前は、SFACのみが存在しているだけで、実務に適用できる具体的な基準がなく、業種ごとの様々な規定が存在し、業種が異なると同一の経済的取引にもかかわらず別々の会計処理が施されることが問題視されることになりました。公表用財務諸表の目的のひとつである、投資家に対して比較可能な財務情報を提供する根本精神に照らして、まずい状況にあることを改善するために、IFRSとのコンバージェンスをきっかけに、収益認識に関する基準が設定されることになりました。
この世界的な収益認識基準の整合化の波は、その後、日本にも押し寄せて、企業会計基準第29号
「収益認識に関する会計基準」が公表されるに至りました。
上記リンクから、企業会計基準委員会 の見解を抜粋・引用いたしますと、「我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。」という感じで、全く米国と同じ状況だったことが窺えます。
収益認識のための5ステップ
収益は顧客への物⼜はサービスの移転と交換に企業が権利を得ると⾒込まれる対価により認識されることをコア原則としています。リース取引、保険契約、金融商品の取引等、個別の会計基準が定められている場合は、その個別の基準に倣い、それ以外の取引に対して包括的に定めたものが収益認識の会計基準の守備範囲となります。
収益の認識のためには、必ず次の5ステップを踏む必要があります。
- Identify the contract with the customer(顧客との契約の識別)
- Identify the separate performance obligations in the contract(契約における履行義務の識別)
- Determine the transaction price(取引価格の算定)
- Allocate the transaction price to the separate performance obligations(履行義務への取引価格の配分)
- Recognize revenue when or as the entity satisfies each performance obligation(履行義務を充足した時か充足するにつれて収益を認識する)
従来の日本の会計学(財務諸表論)で学習してきた、計上=認識+測定 という公式に当てはめたとき、
5ステップの内、ステップ1、ステップ2は、収益を認識する時点の開始条件を説明していると解することができます。ステップ3、ステップ4は、収益の測定されるべき金額を決定する方法を述べていると解することができます。
最後の5ステップは、まさしく、従来の 実現主義 にあたるような、具体的な収益認識のあてはめが記述されているイメージでこの5ステップを理解すればよいのではと感じました。
今回は、収益認識の5ステップの概要説明まで。その内容と関連事項説明が以降、続く予定です。^^)
(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、過去及び現在を問わず、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。
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