感想戦も後半にさしかかる
TACの米国公認管理会計士(USCMA)受験コースには、米国公認会計士(USCPA)の一受験科目であるBEC(企業経営環境・経営概念)のテキストが組み込まれています。その中のカリキュラムに、Managerial Accounting & Financial Management があります。今回はその範囲の問題集が丸々一冊あったのをやり終えました。
この感想戦は後編になります。TACテキストでいうところの、BEC、MA&FMの2冊目がその範囲になります。

ちなみに、私が受講しているTACのWeb通信講座コースはこれ。
主に、いわゆる管理会計と財務管理(ファイナンス)がスコープになっており、全部で365問あります。1日1問で1年間かかります。これを、延べ6日間、44時間かけてやり終えています。
この時間は、問題を解いた時間だけなく、答え合わせと不明な点をテキストで再学習した時間を含みます。
その結果を次の表のようにまとめました。Becker のWeb講座システムでは、独自の学習計画管理アプリが備わっているため、こういう手が込んだことは、今回限りということになります。

「10. プロジェクトマネジメント」を除く(なぜなら問題が用意されていなかったから)、全13章を正答率の高いもの順に並べてあります。
勝手ながら、自己分析用に、問題を「理論問題」か「計算問題」かの2分法で区分けしてあります。
上表の理論問題と計算問題の正答率の差は由々しき事態であることを意味しています。本来、計算問題は理論が分かったうえで、計算間違いもしないという理論問題よりひとつ正答に向かってハードルが増えているはずです。
ですから、普通は計算問題の方が正答率が低くなる傾向にあるのが一般的かと思います。それが、理論問題と計算問題の正答率が逆転しているセクションは、英語による出題が提示している文章の読解力が足りていないということ。
本当に受験するかどうか、まだ決めていませんが、もう少し英語力の上積みというチャレンジがあることが分かっただけでも収穫でした。
出題の傾向と自分の学習水準を推し量ってみる(後編)
以下は、正答率順ではなく、テキストの章立ての順番で振り返っていきます。TACのBECテキストではここから2冊目になります。
Process Management プロセスマネジメント
- 総合:76.7%
- 理論:75.9%
- 計算:100.0%
ここはほとんどが理論問題で、その理論問題の主な出題範囲は、次の2つ。
- TQM、カイゼン、JIT、リーン生産の概念や用語の定義を問いただすもの
- 品質原価の種類分け(PAF approach)をひたすら間違わないようにするもの
専ら自分のために、品質原価の区分分けを備忘として記載します。
- 品質適合コスト(Conformance cost)
- 予防原価(Prevention cost)
- 評価原価(Appraisal cost)
- 品質不適合コスト(nonconformance cost)
- 失敗原価(Failure cost)
- 内部失敗原価(Internal failure cost)
- 外部失敗原価(External failure cost)
- 失敗原価(Failure cost)
すべて、コンサルタントなら身につけておくべき事柄ばかり。失点は、すべて英語の読解力の方に理由がありました。
Operating Decision Making 業務意思決定
- 総合:61.5%
- 理論:68.8%
- 計算:50.0%
製品原価計算が得点率最下位で、この業務意思決定がブービーでした。
得点率の低さの原因は2つ。ひとつは、意思決定の型を暗記していなかったこと。あまりに、自分の実務経験に溺れ、基本的な型を記憶せずに、いつもの感じで問題を解いてしまいました。
おそらく、多くの変数を大体この辺までかなと忖度しながら、大体の正解を出すことが実務で求められますが、試験では、大体ではなくて、短い制限時間の中で、きちっと決まった答えを出すことが求められているんですよね。これは反省点です。
自製か購買、特別注文の受注可否など、「型」を徹底的に頭に叩き込むこと、決意しました。
ふたつには、連産品におけるサンクコストを特定するのに手間がかかったこと。プロセス産業の案件も普通にやっていますが、連産品に自分がここまで弱いとは思いませんでした。試験問題という形式に問題があると思いたいくらいです。。。
Capital Budgeting 資本予算
- 総合:81.5%
- 理論:81.3%
- 計算:81.8%
ここは3番目に得点力がある分野。理論と計算双方の正答率のバランスの良さから、実質1位と言っても過言ではない領域。当然、コンサルティング実務でも、ここは経験が豊富にあります。えっへん!^^)
ご参考まで、自分の頭の中の整理をカンタンに示しておきます。
- Payback period method 回収期間法 ←計算問題で、最終年度は単年度だけの回収期間を求める
- Discount payback method 割引回収期間法 ← 試験でも中途半端な奴。影薄い
- Accounting rate-of-return method 会計的利益率法 ←いつでも使えない奴扱い
- Net present value method 正味現在価値法(NPV) ←万能選手
- Internal rate of return method 内部利益率法(IRR)←意外にダメな奴判定。有効範囲が超限定的
- Profitability index 収益性指数(PI)←資本制約との相性抜群!
理論問題の多くは、上記の各手法のメリット・デメリットを押さえておけば十分でしょう。
計算問題の多くは、キャッシュフローのペイオフ表を作ることに慣れることが必要です。
ペイオフ表を作るうえで私が留意しているコツを2つご紹介します。ひとつは、ペイオフ表は、0年度、1年度、、、と最初の投資開始時点をゼロ年度としておくこと。ふたつは、減価償却費によるタックスシールドを必ず記載することです。
もし、減価償却費の節税効果が本気で分からない人がいらっしゃいましたら、こういう方法があります。いつも、減価償却費込みで普通に税引後利益を計算してあげてください。そして、その税引後利益に減価償却費を足し戻してください。それだけで、その期のネット・キャッシュフローになります。
ここは大好きな分野なので、もう一つ余計な一言。
実務でも、試験でも、IRR は結構使えない奴、という扱いになっています。特に、資本制約が存在しているのに、IRR の高い順に投資案件を決めることは御法度になっています。その場合、最もふさわしい手法は Profitability index 収益性指数(PI) になります。
PIがない場合は、NPV が万能選手です。これ意外と大事!!!!!!
Long-term Financial and Capital Structure 長期の資本調達
- 総合:75.5%
- 理論:77.8%
- 計算:72.7%
ここまでが、合格のいわゆるボーダーラインぎりぎりのところで、75%越えの所。この分野は、Capital Budgeting 資本予算と双子になって深く関連付けられています。ここで資本コストを算出して、資本予算ではその資本コストを実際に使って投資案件を評価する手順になっているからです。
ということで、この分野の個人的なお勧め論点は次の通り。
- Bond の market value:coupon rate と yield は違う!
- Stock の market value (DDM)
- WACC = D/(D+E)×(1 – t)×Kd + E/(D+E)×Ke :負債は節税効果を考慮後
- CAPM = Rf + β×(Rm – Rf)
Working Capital Management 運転資本管理
- 総合:66.7%
- 理論:63.6%
- 計算:70.0%
得意なはずの財務分析の理論問題でいきなりズッコケて、75%以上の正答率が出せなかった悔しい分野になりました。何かがおかしい。この違和感を分析したところ、
- ごりごりの Cash management の詳細な手法に馴染みがなかった
- 財務分析における「流動性分析」をこれまで疎かにしていた
つまり、これまでの実務経験の中で馴染みがなかったり、疎かにしてきた点がそのまま得点力低下につながっているということ。逆にこれを知ってしまえば、試験対策してしまえば済む話。片っ端から覚えますよ。
これまで、設備投資、M&A等、長期資本に関する意思決定、運転資本管理に用いる財務分析(CCCとか)を得意にしてきたつもりですが、財務諸表上で、当座比率(酸性試験比率)とかは蔑ろにしてきました。だって、実際の金融商品や勘定を相手にしてきたので、わざわざ財務諸表上で比率分析する必要性がこれまでなかったから。これを機に流動性分析指標も頭に入れておくことにします。
総評
これは試験対策上、重要性が著しく落ちるこぼれ話的なものなので最後に付け加えておきます。なんと、問題集の中(Long-term Financial and Capital Structure 長期の資本調達)に、「PEGレシオ」を問う問題がありました。



さすが、米国は証券投資のお国柄。こういうのも当然の如く、公的な試験問題になり得るんだと感慨しきり。でも、TACテキストの解説欄には、「もともとこうしたテーマに馴染みがない場合は、試験対策上、無視する方が良いでしょう」とありました。^^)
しかしですね、他に「金利スワップ取引」を択ばせる問題があったりしてですね、ファイナンスリテラシーを身につけておくことが、グローバルスタンダードのような気もするわけです。
というのは、この問題文の中には、CPAとして、クライアントのアドバイザーとして、最適な運用手段を択ばせる、というものがあったりします。そろそろ国を挙げて、ファイナンスリテラシーを向上させる策を打った方が良さげですよね。と強く感じざるを得ないわけであります。
これにて、Managerial Accounting & Financial Managementの問題集全365問、振り返りを終了します。USCMA(またはUSCPA)受験勉強に勤しんでいる同志の方々、対朝にはくれぐれもお気をつけて、試験勉強頑張ってください。私も頑張ります。^^)
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