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そのおっさん、米国公認管理会計士(USCMA)のテキストで長期請負工事契約 Long-term construction contracts を学習する②

管理会計_アイキャッチ米国公認管理会計士
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再掲:工事契約に関する会計基準(企業会計基準第 15 号)の廃止

前回も触れましたが、USCMA受験に直接関係ありませんが、日本の制度会計が置かれている状況について簡単にまとめておきます。

工事契約に関する会計基準(企業会計基準第 15 号)および、工事契約に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第 18 号)は廃止になり、従来型の「工事進行基準」に基づいた収益認識はできなくなります。

収益認識基準による工事進行基準の改正【従来との違いを解説】
企業会計基準委員会が平成30年3月30日に公表した「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」により、建設業における重要論点である工事進行基準の会計処理が改正されることとなりました。収益認識基準による工事進行基準の
第13話 - 収益認識基準の登場で工事進行基準は廃止 - 公開道中「膝経理」
こんにちは、有限会社ナレッジネットワーク 公認会計士の...

2021年(平成33年/令和3年)4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、企業会計基準第 29 号 「収益認識に関する会計基準」が適用されることになります。この中に従来の長期請負工事契約も含まれることなります。

「工事進行基準」がなくなり、すべてが「工事完成基準」になることはなく、「履行義務が充足されるにつれて収益を認識する」ことが、長期請負工事契約の期間の中で必要になってきます。

そして、この履行義務の充足度を見る、この1点が、工事完成基準と工事進行基準(厳密にはこういう呼び方自体は消滅しますが)のそれぞれにおいて、未成工事支出金 construction in progress (CIP)が、原価で計上されるか、利益額を含む売価で計上されるかの違いになる重要なポイントです。

そうですね。そういう意味では、従来の日本語訳をあてた「未成工事支出金」の支出金という用語の選択は適切ではないのかもしれませんね。。。本稿では、このCIPの取り扱いの差と、各会計年度ごとの仕訳の違いを理解することが目的となります。

再掲:工事進行基準と工事完成基準による年度ごとの取引

まずは仕訳の元になる設例の確認から

 

 Year 1Year 2Year 3
Cost incurred during the year500,000600,000550,000
Total actual cost incurred 500,0001,100,0001,650,000
Estimated costs to complete at year-end1,000,000500,000
Total1,500,0001,600,000
Billings during the year600,000600,000600,000
Collections during the year350,000700,000750,000

これが3年にわたる長期請負工事契約の取引の全貌になります。個別取引におけるご不明点は、前回の説明をご覧ください。

Completed-contract method 工事完成基準 のF/S

以下は、工事完成基準による3年間の、I/SとB/Sの動きになります。

 

 Year 1Year 2Year 3
I/SConstruction revenue (売上)1,800,000
Construction expenses (売原)1,650,000
Gross profit (粗利)150,000
B/SConstruction in progress (未成工事支出金)500,0001,100,000
Accounts receivable (未成工事未収入金)250,000150,000
Billings on long-term contracts(長期請負契約請求高)600,0001,200,000

Percentage-of-completion method 工事進行基準 のF/S

以下は、工事進行基準(という呼び方はやがて消滅しますが)による3年間の、I/SとB/Sの動きになります。

 

 Year 1Year 2Year 3
I/SConstruction revenue (売上)600,000637,500562,500
Construction expenses (売原)500,000600,000550,000
Gross profit (粗利)100,00037,50012,500
B/SConstruction in progress (未成工事支出金)600,0001,237,500
Accounts receivable (未成工事未収入金)250,000150,000
Billings on long-term contracts(長期請負契約請求高)600,0001,200,000
米国公認管理会計士(USCMA)|資格概要|資格の学校TAC[タック]
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工事進行基準と工事完成基準による年度ごとの仕訳

工事完成基準と工事進行基準の違いを、仕訳を横に並べて一気に確認してしまいます。仕訳を見れば簡単とばかりに、ここは仕訳でごり押しします。^^;)

※ 見にくくってすみません。横スクロールでご覧ください。

時点debitcreditCompleted-contract methodPercentage-of-completion method
1年目
原価発生
Construction in progressCash500,000500,000500,000500,000
1年目
請求
Accounts receivableBillings on LT contracts600,000600,000600,000600,000
1年目
代金回収
CashAccounts receivable350,000350,000350,000350,000
1年目
決算
Construction expense
Construction in progress
construction revenue

500,000
100,000
600,000

2年目
原価発生
Construction in progressCash600,000600,000600,000600,000
2年目
請求
Accounts receivableBillings on LT contracts600,000600,000600,000600,000
2年目
代金回収
CashAccounts receivable700,000700,000700,000700,000
2年目
決算
Construction expense
Construction in progress
construction revenue

600,000
37,500
637,500

3年目
原価発生
Construction in progressCash550,000550,000550,000550,000
3年目
請求
Accounts receivableBillings on LT contracts600,000600,000600,000600,000
3年目
代金回収
CashAccounts receivable750,000750,000750,000750,000
3年目
決算
Construction expense
Construction in progress
construction revenue

550,000
12,500
562,500

Billings on LT contractsConstruction in progress1,800,0001,800,000
Construction expenseConstruction in progress1,650,0001,650,000
Billings on LT contractsConstruction revenue1,800,0001,800,000

仕訳対比で、個人的に論点としたい点は3つ。工事完成基準工事進行基準とで、あえて同じ取引に合わせている、Billings on Long-term contracts と、両者で異なる取引になっている、未成工事支出金 Construction in progress (CIP)Construction revenue の3つです。

Billings on Long-term contracts

これは、昔の日本基準にもかつては存在していた、長期工事にかかる未収収益評価勘定として残しておく対照勘定のひとつです。これは、工事完成基準の場合は、工事完成までの間、未収収益を計上しておいて、工事完成の期末に、工事売上高の相手科目として全額消し込めば、きれいさっぱりなくなる勘定です。

従来の工事進行基準ならば、普通は売掛金の相手勘定は工事売上高となるところですが、IFRS新収益認識基準(第29号)における履行義務の充足度と共に収益を認識するという考え方に基づき、(いつまでこれを工事進行基準と呼ぶのが適切かという問題はさておき)売上債権の対照勘定としてB/Sに保持しておき、工事完了時に、CIPを相手に相殺して消滅させることになります。

それでは、CIPという金額の性質が何かという問題が次に来ることになります。

Construction in progress (CIP)

おそらく、2つの方法の対比で一番重要なのが、このCIPだと考えています。工事完成基準の場合は、それまでつぎ込んだ原価仕掛品としてB/Sに残しておくために使用します。よって、この場合のCIP原価ベースになります。

一方、工事進行基準では、このCIPは、毎期末の工事売上高を計上する際に、その期の発生原価との差額をB/Sに残すために使用します。つまり、この場合のCIP売価ベース(利益を含む)になります。

これが意味するところは、新収益認識の考え方に基づき、履行義務充足したということは、利益を含む金額を顧客に請求可能になっている、=その金額を収益として認識できる、と考えるのです。それゆえ、CIPに利益を含めるのです。会計実務工事契約実務では、この履行義務を果たすにつれて、利益を含む金額を請求できる旨、明確にするお仕事が一つ増える、というわけです。

上の仕訳例は、あくまでTACテキストに沿ったものになっています。逆に、売掛金を請求ベースで計上しているから、CIPを対照勘定として、工事完了時点までB/Sに保持しておく必要があるともいえるのですが、これを分解することまで基準が要請しているのかどうか、そこまでは調べ切れていません。

とにかく、一番複雑な仕訳形態なので、これを覚えておけば、後は楽、ということにしておきます。^^)

Construction revenue

論点の一つの山がCIPですので、Construction revenue につきましては、そんなに大げさな問題はなく、単に会計処理が大きく異なります、ふーん、でいいと思います。工事完成基準の場合は、工事完了時点を含む決算期にまとめて、工事進行基準(もはやこの呼び方は正確ではありませんが)の場合は、履行義務の充足度に比例して、毎期工事売上高を計上していくことになります。

ここまでで、完全に目標文字数をオーバーしてしまっています。残りの論点を次回にやるかどうかは、思案中です。まあ、今日はこの辺でお開きということで。^^)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、過去及び現在を問わず、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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