現在価値と将来価値をつなぐものは等価性
USCMAの受験テキストの復習連載なのですが、どんどん本意から外れて、ファイナンス基礎の様相を呈しています。引き続き、現在価値とか、割引率のお話になります。
前回ご説明しましたが、現在の手元にある1万円(現在価値)と、2年後の11,025円(将来価値)は、年利が5%の世界では、同じ価値を有していると考えられます。
手元にある1万円は、複利計算なら2年後の元利合計金額は、年利5%とすると、
$$10,000 \times (1 + 0.05)^2 = 11,025$$
上記の式で、(1+0.05)の「1」が意味するところは、元本(元金)はそのままにしておくことを、「1」を掛けることで表現しています。念のため。小数の0.05は、年利5%を表しています。複利計算では、元本+利息=1.05倍ずつ、毎年、お金が増えていくことを意味する数式になっています。
下記サイトで、実際に将来価値を求めるために、最初の投資額:10,000円(現在価値)、収益率:5%(複利)、期間:2年(年数)の3つを入力してから計算ボタンを押してみてください。
反対に、2年後の11,025円(将来価値)は、年利5%の世界において、現在価値はいくらだったかについては、
$$11,025 \div (1 + 0.05)^2 = 10,000$$この割り算を掛け算のままにしておくには、べき乗(指数)をマイナスにすると、同じことを、
$$11,025 \times (1 + 0.05)^{-2} = 10,000$$
と表せるのでしたね。
下記サイトで、実際に現在価値を求めるために、将来の実現された投資額:11,025円(将来価値)、割引率:5%(複利)、期間:2年(年数)の3つを入力してから計算ボタンを押してみてください。
このように、現時点と2年後の世界を、年利5%でタイムトラベルすると、現在価値10,000円は、将来価値11,025円と同じ価値を有している = 等価性 をもつ といえます。「等価性」とは同じ価値を有しているという意味で、その金額同士で交換しても損しないよ、ということです。
ただし、2年後にもらえるふわっとした、将来価値:11,025円より、現実的で手触り感のある目の前の現在価値:10,000円のほうが、価値が大きいと感じるのだ、という考え方を分析することもできます。
それは「リスク選好」といい、その立場によって、
- リスク回避的(Risk averse behavior) :割引率で示される現在価値はもっと価値があると考える
- リスク中立的(Risk indifferent behavior) :割引率で示される現在価値は相当のものであると考える
- リスク愛好的(Risk seeking behavior) :割引率で示される現在価値はより、将来価値のほうがもっと価値があると考える
と、現在価値と将来価値の等価性が、個人のリスク選好度により変動することを研究するものです。この時、現在価値や将来価値を使って、さらに「確実性等価(Certainly equivalent)」:不確実なリターンと同じ効用や満足を得る確実なリターン を探すことになります。
これは、単純な割引計算・複利計算の上に、リスク選好度を変数に加えて計算します。USCMAの受験者は、ここまではやる必要はありませんが、証券アナリスト試験では当たり前の計算技法となります。
USCMAの試験では、現在価値と将来価値を等しくするように、複利計算・割引計算で算出される「等価性」を想定するだけで十分です。
系数表を使ってUSCMAの問題を解く
現在価値(Present Value)と将来価値(Future Value)には、次のような関係が成立します。
PV:現在価値、FV:将来価値、r:利子(年利)、n:期間(年)という定数を用いると、
$$FV = PV \times (1 + r)^n$$
と同時に、
$$PV = \frac{FV}{(1 + r)^n}$$
と表現できます。
どちらか一方を覚えるだけで、片方は移項すれば求まりますので、効率性重視なら、分数の形でないシンプルな式である、FVの方だけ暗記するといいでしょう。
ただし、USCMAの出題形式は受験生にもっと楽をさせるようにできています。この式を暗記していなくても、系数表から該当の数字を見つけて、その数字(係数)を価値を測りたい数字(リース契約総額の現在価値だったり、購入債券の将来価値だったり)に掛け算してあげるだけになっています。
下記に、将来価値(Future Value)を求める際に使用する「複利終価表(Future Value table)」をExcelでハンドメイドしたので、そちらを掲載します。
使い方は、縦横で条件が適合したセル値を出題されている数字に掛け算してあげるだけです。
例えば、手元の50,000円を、7年、5%複利運用したら、7年後の将来価値はいくらになるかが問われているとします。系数表の縦行から運用期間の「7」年を探し、横列から利率の「5」%を探します。7年と5%が交差したところに、「1.40710」が見つかります。
50,000円に「1.40710」を掛け算してあげてください。
FV = 50,000円 × 1.40710 = 70,355円 ほら、一瞬でしょ!^^)
どうしても、検算して確かめたい人向けに、次の式で一緒に確かめてみましょう。
$$FV = PV \times (1 + r)^n$$
$$FV = 50,000円 \times (1 + 5\%)^{7年}$$
$$FV = 50,000円 \times (1.05)^7$$
$$FV = 50,000円 \times 1.40710$$
$$FV = 70,355円$$
つまり、系数表は、べき乗(指数)計算する手間を省いて、結果だけを知らせてくれるツールなのです。
では、逆に将来価値から現在価値を導く割引計算も、系数表でやってみましょうか?
年5%の複利計算した場合、7年後に70,355円になっているはずである金額としての現在価値を求めます。
この場合は、「複利現価表 (Present Value table) 」を用います。
7年後の将来価値(FV)に、「0.71068」を掛けてあげるだけです。
PV = 70,355円 × 0.71068 = 50,000円 ほら、こっちも一瞬でしょ! 厳密には、49999.9849813047…ですが。ちなみに、四捨五入差異は誤解されない数字として出題されますからご安心ください。^^)
(おまけ)実務での便利なやり方
当然、筆者が現時点で世界一の汎用業務アプリケーションだと信じている MS-Excel にも、現在価値(PV)、将来価値(FV)をピンポイントで出力してくれるExcel関数がそれぞれ実装されています。
ただし、どちらも、あまりに汎用的に作られているため、ローンの返済や積立貯蓄に使えるようになっているので、キャッシュ・アウト・フローとキャッシュ・イン・フローの正負の符号の使い分けや、期首払いなのか、期末払いなのかの識別を与えたりなど、USCMAが前提とする、
- Principal(元本、元金)
- Interest rate(利子率)
- Time(期間)
以外の要素も設定する必要が生じます。
さらに、Excelで分析やレポート作成する際には、どうせやるならグラフも表示するでしょうから、あまり実務でExcel関数だけを頼りにするよりかは、自分で表組して、グラフと同期させる管理テーブルをこさえてしまうケースが自分の経験からは圧倒的に多いです。
そのためには、系数表にも頼ることができなくって、定義式を自分でExcel内スプレッドシートにかきかきしています。
前回もご紹介しましたが、カシオ計算機株式会社様が運営している下記サイト「ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト」には、現在価値(PV)、将来価値(FV)を含むかなり幅広い分野の計算フォーミュラが用意されています。ブラウザーのお気に入りに入れてご愛用ください。ご参考まで。
ついでなので、次回、年金現価係数のお話をする予定ですが、その時に、自作のExcel系数表をこのブログにupしておきますね。
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