■ コーチィングに必要な第三者の目
身近なスポーツで例えた方が分かりやすいだろうと、野球人の話を経営になぞらえて説明するのですが、最近の若い人達は、サッカーの方が頭に入るみたいです。おじさんはまだサッカーより野球の方がなじみますね。(^^;)
ターン制で、攻守変わる野球、そして1球1球の配球ごとに作戦が変わっていく、、、
そういうゲーム運びが経営スタイルにもあっているのではと思うのですが、最近の若い人や流行のIT業界では、サッカーのように息をもつかせない攻防戦の方が主流なのかもしれません。
2015/8/20|日本経済新聞|朝刊 (悠々球論 権藤博)外野で養う第三者の目
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「外野手とは寂しいもので、ピンチで内野がマウンドに集まったときも傍観するだけ。重要な「会議」からはずされ、情報も入らない。まるで部外者だが、その寂しさが監督業には吉と出ることがある。
広島を優勝に導いた山本浩二や秋山幸二・前ソフトバンク監督、現役では広島・緒方孝市、ヤクルト・真中満の両監督にも外野手出身監督の良さがある。
それは部外者として遠くから野球を見る習慣がついているという点だ。自分の力を過信せず、グラウンドに送り出したら選手に任せるしかない、と腹をくくれる。最近特に目に付くのが真中監督で、作戦でどうにかなる部分は限られていると達観し、ジタバタしない感じがある。」
守備では、配球戦術の意思決定の当事者にない外野選手は、客観的にゲームの流れと対戦相手の実力を見られるポジションにあるようです。これは、経営においても、従来の「分析」→「立案」→「実行」という十分な時間的余裕があり、かつ入念な分析力が立案される作戦の品質を左右する時代は、まったくその通りで、常に、客観的にレビューしてくれる人を積極的に探しだして、確保しておき、適時にコメントをもらうようにした方が自分の仕事の質が上がります。
「これに対し、守りの要といわれるセンターラインの二塁手、遊撃手を含む内野は野球が一番よく見える位置にいる。中継プレー、サインプレーにもからみ、自然に「野球博士」になっていく。
自他ともに「野球を一番知っている」と思うわけだが、私の経験ではその野球博士ぶりが裏目に出やすい。
選手時代からマウンドに集まると「低めに投げろ」とか「ストライク先行で」と投手に助言してきた人たちは監督になっても、自分の一言で流れが変えられると思っている。
しかし、助言の多くは投手からすると「言われてできるなら、とっくにやってますよ」という話ばかり。内野手出身監督はえてして選手への指示が細かいが「それはキャンプ中にやることで、試合中に興奮している選手に言っても無駄」ということも多い。」
この観点は、ヘンリー・ミンツバーグ教授に言わせれば、「戦略はプランニングか、それともクラフティングか」というものと同じように思われます。つまり、相手(敵)の出方に応じて即時に判断して、こちら側の打ち手を即時に意思決定する必要がある場合は、第3者の批評家はもはや不要なのです。自分自身で流転する状況にアドホックに対応する必要があるとき、脇からあれこれとコメントをしてくれる批評家は、はっきり言って邪魔です。
こういうとき、サッカーの場合、ボランチの位置にいる選手が、フィールド全体を見渡し、縦にロングボールを入れるのか、サイドから攻め上がるのか、相手と自陣のプレイヤーたちの相対的位置とマークしている選手の特性に常時注意を払って、攻め手を瞬時に判断するものです。
経営の場合、ピリオディックな「期間計画」「年度予算」を立案してから、実行する、という野球と同じターン制で戦うなら、客観的な分析ができる人の力を十分に活用することができます。しかし、戦いながらアドホックに考える必要がある競争市場に置かれている場合、ボランチ的に、現場の皮膚感覚で判断を進めないと手遅れになってしまいます。
「物事の中心にいると、全体が見えないものだ。私は横浜(現DeNA)の監督時代にセンターの奥から打撃練習を見ていた。中堅から見ると、バットの出方やユニホームの胸のマークの見え方がはっきりし、ぎりぎりまでひき付けているか、早めに体が開いているかがよくわかった。
打撃ケージの後ろに張り付いていると、細かいアラは見えても、打者の好不調の大きな波は捉えにくい。内野の人も一度、外野から野球を眺めてみては。」
コーチィング(広い意味でコンサルティングを含む)の場合は、できるだけ客観的に、指導を受ける人(クライアント)に的確な指示(助言)を出せる力が必要になります。
その力の構成は、
① 入念な分析に裏付けられた適切な「事実認識」
② 相手が容易に意思決定できる的確な「評価基準」と「仮評価結果」
の2つを備えたものになります。
簡単に一言でいうと、「正しい『事実』と的確な『意見』を意識的に使い分けてメッセージできる」能力が必要だということですね。
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