孫子 第13章 火攻篇 69 火を以て攻を佐(たす)くる者は明なり – 相手への効果まで想像して攻め方を選択する

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■ 火攻めと水攻めの優劣を例に

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火を攻撃の補助手段にするのは、将軍の頭脳の明敏さによりますが、水を攻撃の補助手段にするのは、軍の総合戦力の強大さによります。水攻めは敵軍を分断することはできても、敵軍の戦力を奪い去ることはできないからです。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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さあ、孫子の兵法もあと2節と残りわずかとなってきました。(^^)

水攻めとは、堤防を切り崩し、河川を決壊させて、洪水の中の敵の野戦軍を立往生させたり、城邑の周囲にあらかじめ堤防を築き、その中に河川の水を引き入れて、敵城を包囲したりする攻撃法です。たしかに、水攻めは敵軍を分断し孤立させる効果を発揮します。日本の戦史でも、豊臣秀吉の備中高松城攻めは有名です。

しかし、こうした戦法では、水攻めを受けた敵軍は、援軍との連絡を絶たれる不利を被るだけで、直ちにその戦闘力を喪失するわけではありません。それゆえ、水攻めによってのみ敵の戦力を奪い去ることは不可能で、最後のけりを付けるためには、戦闘や長期の攻囲戦が必要となるのです。

しかも水攻めは、長い日数を要するだけでなく、土木工事用の資材や人員、包囲網を敷くための兵力、長期の持久戦を維持するだけの兵糧など、強大な総合戦力を必要とする戦法です。したがって、短期決戦で勝利を決し、国家経済の消耗を最小限に抑えようとする孫子の立場からすれば、水攻めは極めて効率の悪い戦術として目に映るのも仕方ないのかもしれません。

これに比べると、火攻めは、日時も費用も手間もかからず、一瞬のうちに敵の戦力を完全に奪い去ることができます。こうした理由から、孫子は火攻めを水攻めより優れた戦術として位置付けました。

ここで言いたいことは、だから孫子の兵法を頭から信じて、火攻め、現代ビジネスにおいては、高リスクを負って、多少の犠牲も厭わない短期決戦(広告宣伝を派手に打つ販売キャンペーンや、大幅値引きセールなど)が、長期的な水攻め、現代ビジネスにおいては、SNSを使った時間はかかるけど追加費用はほぼかからない地道な口コミ利用が劣る、と早合点してはいけません。

大事なことは、自分が打つ手が相手にどう影響するか、それが短期的な効果か長期的な効果か、自陣がどれくらいのリスクを負えるのか、また追加費用はどれくらいまで耐えられるのか、についてきちんと事前に計算しておくことなのです。

豊臣秀吉の高松城攻めは、兵士の損耗を回避するために企図されました。秀吉にすれば、大軍の毛利軍との一大決戦前に、できるだけ手元の兵力を失わないことが勝利への近道だったのです。現代ビジネスにおいても、ゴールドラット博士による制約理論に基づく自社のボトルネックをいち早く見つけ出し、その制約ポイントが最大のリターンを生むようにひとつの無駄も生ませない方法を採る。弱みを弱みとして放っておかない。それが勝利への近道。孫子の兵法と制約理論は似ているんですよね。(^^;)

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