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■ 仕事をする際の思考のクセ

プロジェクトマネジメント(基礎編)
業界や会社のステージなどに影響され、ビジネスマンが目の前の仕事を片付けようとする際の姿勢そのものが無意識にあるクセをつけさせられてしまうことがあります。その思考のクセの作用によって、プロジェクトマネジメントの出来不出来が大きく左右されることが筆者の経験から多々ありました。
当然、ビジネス本からの知識習得、先輩・上司からの薫陶、自分自身の失敗事例からの学びから、真逆であるこの2つの思考方法をいずれも身に着けている方々は確かにいらっしゃいます。ただ、臨機応変にそれらを状況に応じて使い分けることはどうも難しいようです。
それは、「ストレッチ思考」と「ゴール思考」という目の前の仕事を片付けようとする時の思考のクセのことを指します。そして、当然、プロジェクトマネジメントには「ゴール思考」の方が相性抜群といえます。
(この分類は、筆者の実務経験からの気づきでビジネス本からの受け売りではありません。もし、ビジネス本で同様の記述があることをご存知の方は、お手数ですが、右問い合わせフォームから秘密裏に筆者までご連絡いただけると幸いです)

■ 「ストレッチ思考」とは

「ストレッチ思考」とは、まず現状分析を行って課題を抽出し、課題解決案を策定しますが、その解決水準は現状からどれくらい理想に近づけるか、「達成可能性」に着目して意思決定する思考といえます。当然、課題解決策の選択自体が、現状の組織体制、人員構成、制約条件を前提にしがちなので、現状延長線上に目標が設定されるイメージとなります。
PM(基礎編)_ストレッチ思考_v01
① 中間目標水準の達成可能性を考慮して設定
② 中間目標値から理想水準までどこまでストレッチできるか考慮して最終目標を設定
③ 現状から最終目標達成までの所要期間を成行(なりゆき)で算出されたものを確認
「ストレッチ思考」がごく自然に当たり前に思えるのは、通常ほとんどの企業が「Going Concern」の前提に立っているためです。今年度の目標がもし未達でも、来年度に再びチャレンジする機会が与えられます。また、目標自体が80%達成でも、現状より改善しているので、組織全体としては頑張った、良い方向にあると評価するのが自然な感覚となります。
さらに、目標設定者は胸の内で、例えば80%達成を想定していましたが、関係者には100%達成といってハッパをかけて、ようやく80%が達成できるのだという組織内心理学を駆使した目標設定を当初からしているのかもしれません(あくまで想像の範囲内ですが、よくある話です)。

■ 「ゴール思考」とは

「ゴール思考」とは、現状分析から課題抽出することもできますが、最初からあるレベルの理想を実現するための目標を設定し、その実現のための課題解決策を案出します。その解決策には必ず解決手段と解決納期をまず決定します。いわば「解決可能性」に着目して意思決定する思考といえます。当然、課題解決策の選択が、現状の組織体制、人員構成、制約条件からの飛躍があるケースが多くなるので、過去トレンドからは断絶した目標が設定されるイメージとなります。
PM(基礎編)_ゴール思考_v01
① 最終目標水準と納期の解決可能性を考慮して設定
② 最終目標の必達のために、いつ、どの程度の中間目標値が達成されていなければならないか、時間軸を逆
流して中間目標を設定
③ 最終目標達成から中間目標達成までの所要期間を明確な意思をもって設定
「ゴール思考」がごく自然に身に付くのは、常日頃、有期限の仕事をするのが当たり前になっているプロジェクトベースで業務が回っている業界・職場に限定されます。たとえば、造船・プラント業界やITコンサル業界がその典型といえます。プロジェクトのQCDが三拍子そろわないとそもそも仕事を完結できないという緊張感のある仕事観が身に付くからです。目標達成は100%しかありえず、目標未達や納期遅れは、即刻バツ評価になるというのが自然な感覚となります。
目標設定者は胸の内で、例えばプロジェクト開始90日目に75%の目標達成を掲げますが、メンバーには80%達成目標といってハッパをかけているかもしれません。しかし、それはプロジェクト納期の120日目に100%必達するためのサバ読みをするという組織内心理学を駆使した目標設定かもしれません(あくまで想像の範囲内ですが、よくある話です)。

■ 大きな違いは「中間目標」が未達だった時の姿勢

「ストレッチ思考」の場合は、中間目標が計画に対して未達だった場合、いわゆる「リスケジュール(リスケ)」して、目標水準達成にかかる時間を余計にかけても最終目標水準を達成しようと、以降の作業計画を見直すケースが多いです。中間地点に至るまで、これまでの努力はある程度肯定的に評価します。
「ゴール思考」の場合は、そもそも当初設定した「目標」が達成すべき「目的」にまで遡って必ず善後策を協議することになります。「目的」がある課題解決だった場合、「その課題解決の優先順位が目標設定時と変更されていないか?」「課題解決により効果的なほかの選択肢はないか?」「納期遅延はどういう付帯条件ならば許容されるか?」を喧々諤々(けんけんがくがく)やります。徹底的に、原因追究と代替策の案出にこだわります。
納期優先か達成水準優先か、ケースバイケースといえます。
PM(基礎編)_修正パターン_v01
経営コンサルタントとしての経験でいうと、プロジェクトベースで仕事を進めるうえで、相手方となるクライアント側の事業会社の担当者、そして同じコンサルティングファームの部下や協力会社のメンバー全員が必ずしも「ゴール思考」で発言・行動しているわけではありません。しかし、立場上、プロジェクトマネジメントをミッションとしてプロジェクトに着任しますので、様々な思惑の中での調整作業とならざるを得ません。
私の持っている唯一の対応策は、プロジェクトが始まる前に絶対に「WBS(Work Breakdown Structure)」と「Project charter」を作成してからプロジェクトに挑むことです。当然、プロジェクト開始後に、いずれも適宜変更することは言うまでもありません。
(WBS、PCについては、このシリーズで触れていきます)
このシリーズでは、主に、管理会計システム導入のプロジェクトマネジメントを参考事例として、そのコツを中心に記事を書いていきたいと思います。
PM(基礎編)_ストレッチ思考とゴール思考

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/10/ea064d4a1905bbaeb9230f5380d383f6-e1443954128333.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/10/ea064d4a1905bbaeb9230f5380d383f6-150x150.jpg小林 友昭プロジェクトマネジメント(基礎編)■ 仕事をする際の思考のクセ 業界や会社のステージなどに影響され、ビジネスマンが目の前の仕事を片付けようとする際の姿勢そのものが無意識にあるクセをつけさせられてしまうことがあります。その思考のクセの作用によって、プロジェクトマネジメントの出来不出来が大きく左右されることが筆者の経験から多々ありました。 当然、ビジネス本からの知識習得、先輩・上司からの薫陶、自分自身の失敗事例からの学びから、真逆であるこの2つの思考方法をいずれも身に着けている方々は確かにいらっしゃいます。ただ、臨機応変にそれらを状況に応じて使い分けることはどうも難しいようです。 それは、「ストレッチ思考」と「ゴール思考」という目の前の仕事を片付けようとする時の思考のクセのことを指します。そして、当然、プロジェクトマネジメントには「ゴール思考」の方が相性抜群といえます。 (この分類は、筆者の実務経験からの気づきでビジネス本からの受け売りではありません。もし、ビジネス本で同様の記述があることをご存知の方は、お手数ですが、右問い合わせフォームから秘密裏に筆者までご連絡いただけると幸いです) ■ 「ストレッチ思考」とは 「ストレッチ思考」とは、まず現状分析を行って課題を抽出し、課題解決案を策定しますが、その解決水準は現状からどれくらい理想に近づけるか、「達成可能性」に着目して意思決定する思考といえます。当然、課題解決策の選択自体が、現状の組織体制、人員構成、制約条件を前提にしがちなので、現状延長線上に目標が設定されるイメージとなります。 ① 中間目標水準の達成可能性を考慮して設定 ② 中間目標値から理想水準までどこまでストレッチできるか考慮して最終目標を設定 ③ 現状から最終目標達成までの所要期間を成行(なりゆき)で算出されたものを確認 「ストレッチ思考」がごく自然に当たり前に思えるのは、通常ほとんどの企業が「Going Concern」の前提に立っているためです。今年度の目標がもし未達でも、来年度に再びチャレンジする機会が与えられます。また、目標自体が80%達成でも、現状より改善しているので、組織全体としては頑張った、良い方向にあると評価するのが自然な感覚となります。 さらに、目標設定者は胸の内で、例えば80%達成を想定していましたが、関係者には100%達成といってハッパをかけて、ようやく80%が達成できるのだという組織内心理学を駆使した目標設定を当初からしているのかもしれません(あくまで想像の範囲内ですが、よくある話です)。 ■ 「ゴール思考」とは 「ゴール思考」とは、現状分析から課題抽出することもできますが、最初からあるレベルの理想を実現するための目標を設定し、その実現のための課題解決策を案出します。その解決策には必ず解決手段と解決納期をまず決定します。いわば「解決可能性」に着目して意思決定する思考といえます。当然、課題解決策の選択が、現状の組織体制、人員構成、制約条件からの飛躍があるケースが多くなるので、過去トレンドからは断絶した目標が設定されるイメージとなります。 ① 最終目標水準と納期の解決可能性を考慮して設定 ② 最終目標の必達のために、いつ、どの程度の中間目標値が達成されていなければならないか、時間軸を逆 流して中間目標を設定 ③ 最終目標達成から中間目標達成までの所要期間を明確な意思をもって設定 「ゴール思考」がごく自然に身に付くのは、常日頃、有期限の仕事をするのが当たり前になっているプロジェクトベースで業務が回っている業界・職場に限定されます。たとえば、造船・プラント業界やITコンサル業界がその典型といえます。プロジェクトのQCDが三拍子そろわないとそもそも仕事を完結できないという緊張感のある仕事観が身に付くからです。目標達成は100%しかありえず、目標未達や納期遅れは、即刻バツ評価になるというのが自然な感覚となります。 目標設定者は胸の内で、例えばプロジェクト開始90日目に75%の目標達成を掲げますが、メンバーには80%達成目標といってハッパをかけているかもしれません。しかし、それはプロジェクト納期の120日目に100%必達するためのサバ読みをするという組織内心理学を駆使した目標設定かもしれません(あくまで想像の範囲内ですが、よくある話です)。 ■ 大きな違いは「中間目標」が未達だった時の姿勢 「ストレッチ思考」の場合は、中間目標が計画に対して未達だった場合、いわゆる「リスケジュール(リスケ)」して、目標水準達成にかかる時間を余計にかけても最終目標水準を達成しようと、以降の作業計画を見直すケースが多いです。中間地点に至るまで、これまでの努力はある程度肯定的に評価します。 「ゴール思考」の場合は、そもそも当初設定した「目標」が達成すべき「目的」にまで遡って必ず善後策を協議することになります。「目的」がある課題解決だった場合、「その課題解決の優先順位が目標設定時と変更されていないか?」「課題解決により効果的なほかの選択肢はないか?」「納期遅延はどういう付帯条件ならば許容されるか?」を喧々諤々(けんけんがくがく)やります。徹底的に、原因追究と代替策の案出にこだわります。 納期優先か達成水準優先か、ケースバイケースといえます。 経営コンサルタントとしての経験でいうと、プロジェクトベースで仕事を進めるうえで、相手方となるクライアント側の事業会社の担当者、そして同じコンサルティングファームの部下や協力会社のメンバー全員が必ずしも「ゴール思考」で発言・行動しているわけではありません。しかし、立場上、プロジェクトマネジメントをミッションとしてプロジェクトに着任しますので、様々な思惑の中での調整作業とならざるを得ません。 私の持っている唯一の対応策は、プロジェクトが始まる前に絶対に「WBS(Work Breakdown Structure)」と「Project charter」を作成してからプロジェクトに挑むことです。当然、プロジェクト開始後に、いずれも適宜変更することは言うまでもありません。 (WBS、PCについては、このシリーズで触れていきます) このシリーズでは、主に、管理会計システム導入のプロジェクトマネジメントを参考事例として、そのコツを中心に記事を書いていきたいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します