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(イントロダクション)-『管理会計』またの名を『戦略会計』

管理会計(基礎)
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■ 管理会計か戦略会計か

管理会計(基礎編)
論者や学者、会計コンサルタントによって、「管理会計」「戦略会計」はたまた「経営管理会計」などなど、呼び名はいろいろありますが、筆者には別段こだわりがありません。ですので、本ブログでは特に領域を特定しない限り、「管理会計」と言い習わします。さすがに、「経営管理」(その意味や考え方は別シリーズ「経営管理(基礎編)」で確認して頂きたいのですが)に特化して使う際に、「経営管理会計」と呼ぶことにします。
ちなみに、世間では、企業内の活動のコントロールに使う場合に、「(経営)管理会計」の名を、計画(戦略)立案およびそのためのシミュレーションを実施する場合に、「戦略会計」の名を使う傾向があります。

■ 管理会計が目指すところ

管理会計は、「会社が儲かり続けるしくみづくりのお手伝いをすること」を目指しています。
そのこころとは、

  1. 会社は経営を継続していかなければならないので、稼いだ利益を再投資に回す必要があるから
  2. 一体何に再投資すれば、最も大きいリターンが得られるか、判断基準が常に求められるから

管理会計(基礎編)_管理会計の目指すところ
まず、内部留保を再投資に回すか、株主に還元するか、内部留保では不足するので、新規に資金調達するか、経済学でいうところの『拡大再生産』の正のスパイラルに企業成長を持っていくために、会社の様々な活動や今後の計画(戦略)をお金の面から評価できるようにお手伝いするのが管理会計の一つ目の使命と考えています。
次に、会社が所有している経営資源(カネ・モノ・ヒト・情報)をどういう活動に配分したら最も見返りが大きくなる選択肢を適切にチョイスできるか、お金の面から評価のためのフレームワークと評価値を提供するのが、管理会計の2つ目の使命と考えています。

■ 管理会計の目的

論者がうるさいので、ここは心静かに落ち着いて管理会計の目的を整理させて頂きます。
1.会社が儲かるための様々な経営判断を適切に行えるように、
① 使える数値情報を提供する
② 判断するための思考ロジック(フレームワーク)そのものを提供する
2.会社が儲かるように従業員を行動させようと動機付けるために、
① 従業員の目標値を設定するときに指標を提供する
② 従業員のお仕事の達成度を評価するためのアルゴリズムを提供する
③ 目標と結果のギャップを埋めるための方策を検討するための参考情報を提供する
ということになります。
管理会計(基礎編)_管理会計の目的
つまり、「自分の意思決定」と「部下のモチベーション管理」に管理会計の知恵を利用するということです。

■ 管理会計の道具仕立て

「モチベーション管理」と「意思決定」の道具仕立てとして、管理会計には下表のような概念や計算技法があります。今回はその名を聞き留めておくことにします。ひとつひとつはこのシリーズで取り上げていきたいと思います。
管理会計(基礎編)_管理会計の道具仕立て
ここで留意して頂きたいのは、「値決め」の重要さです。JALを見事なまでに再建した稲盛和夫氏が「値決めは経営である」とその著書で主張されています。会社の大事な収入源は売り物の売価で決まります。稲盛氏は、「値引きすれば誰でも売れる。お客様が買ってくれるかどうか、ぎりぎりのところに値段をきめることで、会社の収益力を保たせることができる」とされています。そこで、筆者のチャートでも「値決め」を意思決定の中でも特別扱いの地位に付けています。

■ 避けては通れない「制度会計」との関係

どうしても巷(ちまた)では、まだまだ「管理会計」を「制度会計」との二項対立の構図で説明する言説が大勢を占めているようです。それに従うと、両者の相違を含めて下表のようなものが出来上がります。
管理会計(基礎編)_「管理会計」と「制度会計」の相違
ここで一応簡単に「制度会計」との相違を確認しておきます。「制度会計」は、根拠となる法律やそれに類する規則が世の中にあり、そのルールに従って作成・報告される会計情報といわれています。それとの対比だと、「管理会計」は、フォーマットも計算方法も報告タイミングも無手勝手流な会計情報である、という説明にならざるを得ません。
時には、「制度会計」は社外のステークホルダーに報告されるもので、「管理会計」は経営者に報告されるものである、とか、「制度会計」は過去情報を扱い、「管理会計」は将来情報(予算、見通し、シミュレーション値)を扱う、など、強引に識別する論法があります。
そんなことはありません。「制度会計」の数値には、将来キャッシュフローの見込や割引現在価値(公正価値)を考慮したものが含まれます。また、「制度会計」では、「マネジメントアプローチ」の採用により、経営者が従来は内部報告用(内部意思決定用)として使用していたセグメント別の各種情報の開示がなされなければなりません(つまり、規則で強制されたということ)。

■ 不毛な正当性論争と上位論争には参加しない

だらだらと、あえて「制度会計」と「管理会計」の「違い」が左程ないのではと問題提起したのは、この後に次の論争が待っていることが分かっているからです。

  1. 「制度会計」と「管理会計」のどっちの数字が真実なのか
  2. 「制度会計」のために「管理会計」が存在しているのか、それともその逆か

この命題に対して、簡単には結論は出ないと思いますが、筆者の立場・見解には確固たるものが実は存在します。しかし、ここで、自説を長広舌(ちょうこうぜつ)で延々と主張することは避け、皆さんとこの記事シリーズの中で一緒に考えていきたいと思います。
でも筆者の意見が気になりますか?
今後の「管理会計」の説明とその解釈にも影響するかもしれませんので、誤解が生じない程度にさらっと書いておきます。

  1. 「管理会計」は「制度会計」が縛られている「規則」に依らずに、自由に振る舞える権利を有している
  2. 「管理会計」に固有の自由権は、「制度会計」のために、「善意」をもって貢献してあげる義務と引き換えに与えられている

ここまで、「(イントロダクション)『管理会計』またの名を『戦略会計』」を説明しました。
管理会計(基礎編)_(イントロダクション)ー 『管理会計』またの名を『戦略会計』

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