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■ 新興ITベンチャーのフィンテックへの既存金融機関の対抗戦略とは?

経営管理会計トピック

日本経済新聞を毎日眺めていると、ここ最近では、「フィンテック」に関連する記事を目にしない日がありません。華々しくフィンテック関連企業にはお金も集まり、同時に世間の耳目も集めています。

2015/12/28|日本経済新聞|朝刊 会計ソフトのフリーが10億円調達 SBIファンドから、営業・開発強化

「会計ソフトのfreee(フリー、東京・品川、佐々木大輔社長)は28日、SBIホールディングスが立ち上げた複数のファンドから10億円を調達する。8月の35億円とあわせて2015年の調達額は45億円になり、ネット関連のベンチャー企業としては今年最大の規模になる。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

このSBIホールディングスが、「金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」に関わるベンチャー企業に投資するファンド」を立ち上げ、その当初の規模は150億円あまりで、そこには、地銀や通信大手など20社が出資しています。

つまり、既存金融機関がフィンテックというテクノロジー、もしくはフィンテック企業に対抗する手段の一つ目は、「抱き込み戦略」。フィンテック企業に出資または、協業・提携を申し出て、既存金融機関からすれば、抱き込んで、そもそも対立構造にならない、いわゆる「競争しない競争戦略」というわけです。

しかし、そこは優秀な人材が層厚く在籍するエスタブリッシュ企業、硬軟取り合わせた戦略で、新興フィンテック企業に対応しようとしています。次章では、その対抗策を順に、2015年12月単月の記事紹介だけで試みてみましょう。

筆者は、生来のへそ曲がりなので、フィンテック、フィンテックと世の中が騒げば騒ぐだけ、その競争相手の動向が気になってしょうがないのですよ!

FinTech革命(日経BPムック)

<既存金融機関のフィンテック対抗策>
① フィンテック企業を取り込んで競争しない(出資、業務提携)
② 既存金融システムの利便性の向上(真っ向勝負!)
③ 法改正により自らがフィンテック事業を立ち上げ(なり代わり戦略)
④ フィンテック専門家の知恵を拝借(知らねば聞け!)



■ じゃあ、残りの3つの対応策を説明します!

上記①は競争しない戦略。②~④は直接・間接的に競争する戦略です。

② 既存金融システムの利便性の向上
従来の金融システムの決済システムの利便性を高めて、フィンテック新興企業に対抗しようとするものです。同じ土俵で戦いますが、これまでの膨大な顧客基盤、巨大な企業外部のネットワーク資産を有効活用しようというものから。

2015/12/11|日本経済新聞|朝刊 国際送金、即日決済に 世界の大手40行、3日から短縮

「日本の3メガバンクを含む世界の40行以上の大手銀行は国際送金を抜本改革する。これまで3営業日ほどかかった決済期間を短縮して送金の当日に完結させ、手数料も銀行間で開示して透明性を高める。1~2年内の実現を目指す。決済が送金当日に完結すれば、取引先からお金を受け取れないリスクが減るほか、お金を機動的に使ったり運用したりできそうだ。」

この記事では、あからさまにフィンテック対応策であることが匂わされています。

「金融とIT(情報技術)を組み合わせたフィンテックの発達で異業種からの安い決済サービスの新規参入が増えたことに世界の大銀行が結束して対抗する。」
「背景にはフィンテックの台頭に対する大手金融機関の危機感がある。」

既存金融機関の巨大ネットワーク経済性を十二分に活用した戦略の概要は次の通り。

スキームは、
・国際取引の情報インフラを担う国際銀行間通信協会(スイフト)がグローバル・ペイメント・ユーティリティーと呼ぶ新たな枠組みを作る
・ほぼすべての主要金融機関にあたる40行以上が合意する意向を示し、日本の3メガ銀のほか、米シティ、英スタンダードチャータード銀行や中国銀行などが参加する

サービス内容は、
・対象は個人取引を除いた国際送金全般
・参加行はこれまで3営業日ほどかかった手続きをシステム投資で即日に短縮する
・資金移動の情報はリアルタイムで依頼人や受取人に通知される
・中継銀行など複数の金融機関が関わって不透明だった手数料も銀行同士で価格を開示し、
 最初から顧客に提示できるようにする

もうひとつは、決済取引時に交わされる情報に付加価値を乗せる戦略。

2015/12/29|日本経済新聞|朝刊 決済システム 送金情報を拡充 大手行など、事務負担軽減

「国内の大手行と地銀、信金・信組は2018年をメドに送金情報をやりとりする企業間の新たな情報網をつくる。今は銀行振り込みの際に送れる文字数が20文字に限られるが、制限をなくして使い勝手を改善する。取引の詳細を書き込めるようになるため、振り込み後に電話やメールで内容を補足する手間を省くことができ、企業の事務負担を大幅に減らせる。」

既存の金融ネットワークを前面に押し出すのは上記の例と同じ手法ですが、決済サービスというものの利便性を向上させるだけでなく、決済時の情報交換を充実させるという付加価値戦略の性格も色濃く出ています。

スキームは、
・金融・ITネットワークシステム(仮)」。金融庁が調整役となり、全国の金融機関をつなぐ「全銀システム」に加盟する大手行や地銀、信金・信組など1千を超える金融機関が参加
・資金の決済自体は全銀システムが引き続き担い、その上に新たな情報網を乗せる

サービス内容は、
・企業が取引先などに送金する際に相手に電子的に送れる文字数を無制限にする
(従来は、カタカナ、数字の20文字限定で、商品の品名や個数などを書き込むだけで制限を超えるため、詳細な取引内容を電話やメール、ファクスで補足する必要があった)

さらに、喜ばしい副産物として、
「実証実験では事務作業にかかる時間を5~7割減らせた」
と、コスト競争力まで出てきた、ということ。

決済インフラ入門

■ 利便性向上は、デジタルだけで行うのではない。リアルでも可能なのだ!

決済サービスだけでなく、広範な金融サービスの利便性向上を、リアル店舗でも推進しようというのがこちら。

2015/12/31|日本経済新聞|朝刊 地銀、郵便局を窓口に 横浜銀、日本郵政と協議

「地方銀行・第二地方銀行が日本郵政グループとの提携拡大に動き出す。横浜銀行は日本郵政グループに銀行業務を委託し郵便局を銀行代理店(総合・経済面きょうのことば)とする協議に入った。広域の郵便局で預金の出入金などができるようになる。北海道の北洋銀行も地域活性化ファンドを共同組成する検討を始めた。地銀と第二地銀の業界団体のトップ2行が動くことで日本郵政との連携に弾みがつきそうだ。」

前2者の競争戦略が、同じ土俵上で戦う真っ向勝負ならば、こちらは差別化戦略。フィンテック新興企業が無いものは、リアル店舗のネットワーク。顧客接点をデジタルではない領域で増やそうという試みです。では、リアル店舗ネットワーク拡大・充実に欠かせない、「銀行代理店」についての解説は、同日の「きょうのことば」から。

「銀行法で認められた銀行の出店形態の一つ。自前の支店では採算の確保が難しい地域に拠点を築きやすくなる一方、利用者は金融を含めた多様なサービスが1カ所で受けられる利点がある。委託を受けた事業者は銀行と代理店契約を結び、定期預金や住宅ローンを取り次いで手数料を得る。融資の是非は原則として金融機関の本体が判断する。委託元の金融機関には、代理店による不正が生じないよう業務指導する義務がある。」

20151231_銀行代理店_日本経済新聞朝刊

(上図は、同記事に添付のあった「銀行代理店」のしくみを解説したものを転載)

オムニチャネル戦略 (日経文庫)

■ 金融機関は法規制とも戦わなくてはいけないのだ!

顧客サービスの利便性向上と、当局による金融機関の経営健全化の監視と保証とは、たびたびトレードオフ状態に陥ります。上記の銀行代理店も、野放図に他業種からの参入があっては金融取引の安全性が担保できないと、兼業禁止規定があったりと、いわゆる「規制緩和」との戦いでもあります。現在では、06年4月の銀行法改正により、「一般の事業者でも代理店業に参入できる」こととなり、「金融庁によると、今年9月末時点で許可を受けた事業者は、メガ銀行や地方銀行、信託銀行、証券会社など約50にのぼる。」とのこと。

では、フィンテック関連の法改正については、これまでの動きは、、、?

⇒「フィンテック(FinTech)の最新動向 日本経済新聞より
(下記はこの投稿で紹介した新聞記事)

2015/9/5|日本経済新聞|朝刊 金融とIT融合「フィンテック」後押し 金融庁、銀行規制17年ぶり緩和 仮想通貨の監視策検討

2015/9/16|日本経済新聞|朝刊 金融×IT融合 フィンテック普及へ法整備  金融庁 決済、業種横断の規制検討

③ 法改正により自らがフィンテック事業を立ち上げ

2015/12/24|日本経済新聞|夕刊 (十字路)銀行グループとフィンテック

「銀行を中核とする金融グループ、つまり銀行グループへの関心が高まっている。環境変化に即し、柔軟な業務運営を行わせる仕組みはどうあるべきか。政府の金融審議会における議論がまとまった。
 銀行グループが先行き有望なフィンテック事業にいち早く出資できれば、その成果を金融サービスに反映しやすい。問題は、銀行や銀行グループの業務範囲に規制があることだ。この他業禁止の下では、ベンチャー段階にあり、銀行業務との関連が未知数なフィンテックを、銀行グループが取り込むことは難しい。
 これについて金融審は、将来の金融サービス向上に役立つ可能性があれば、銀行グループが早い段階からフィンテックに出資できる道を開こうとする。財務やリスクなどをチェックする認可の取得が条件になる。透明性が確保されるならば、妥当な方向だ。」

ただし、一口に銀行グループといっても、銀行持ち株会社の下に銀行等が連なる形態と、親銀行がグループの頂点にあるタイプとが併存しているのが現状であるため、「金融審は銀行本体へのリスク遮断の有効性が違うとして、フィンテックへの出資割合の上限について、前者への優遇があり得ることを示唆している」ということで、「持ち株会社を作らず、銀行本体が親会社であるタイプの地域銀行」にとってフィンテック進出に対してハードルが上がることになるので、「持ち株会社形態とそうでない銀行の競争条件に現実に差が付くか、注視される」とのこと。

会社機関設定のスキームが違うだけで、差別的扱いが生じるのは、公正な競争環境の整備の観点からよろしくないですね。もっとも、規制でがんじがらめにされている(いた)既存金融機関の間隙を突いて、フィンテック新興企業が新たな金融サービスを立ち上げられたという事情もあるのですが。。。

持株会社の実務 第7版: ホールディングカンパニーの経営・法務・税務・会計

■ 最後はやっぱり経験者・有識者が持つ『知恵』が勝負を分けるのでしょうか?

④ フィンテック専門家の知恵を拝借

法改正が整うまで待てない。ITの世界では、ドッグイヤーならぬラットイヤーとも言われている競争が激しく、そしてスピード重視の世界。そこで、金融機関もただ手をこまねていているわけにいかず、外部から知恵を取り入れることに力を入れ始めました。その一例が次の記事です。

2015/12/31|日本経済新聞|朝刊 LINE前社長、静岡銀の顧問に フィンテック拡大へ助言

「静岡銀行は2016年1月4日付で無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)前社長の森川亮氏を顧問に迎えることを決め、このほど契約を結んだ。LINEを世界で5億6000万人が利用するアプリに育てた森川氏の知識と人脈を生かし、金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」事業を拡大する考えだ。」

このほか、静岡銀行は、積極的にネット業界との接点を増やそうとしています。

「静岡銀は14年にネット証券のマネックスグループ、15年9月には家計管理アプリのマネーフォワード(東京・港)に出資するなど、金融とITの融合に向けて事業領域を拡大している。提携先との事業展開や新たな提携先選びで森川氏の助言を求める。」



複数の異なる「知恵」が結合して、「イノベーション」が生まれる!

かのシュンペーターの言葉を借りるまでもなく、フィンテックは、金融業界でのイノベーションでしょう。そこには、異質なもの同士がうまく結合しあってこそ、新奇的で、かつ有効な(道具性の高い)新たなテクノロジーが発明されて、我々の社会がより豊かになる(格差の拡大はおいといて、、、)のではないでしょうか?

それ故、ウォルマートの新決済アプリは、どうなんでしょう??? 微妙です。興味のある方は、下記の記事をご一読ください。

2015/12/29|日本経済新聞|朝刊 ウォルマートも参入 スマホ決済で客囲い込み

こういう投稿の締め方もあったのか。。。(^^;)

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】

なぜ今、シュンペーターなのか

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フィンテック 既存金融機関の逆襲 2015年12月 冬の陣 日本経済新聞よりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジーFinTech,フィンテック,マネーフォワード,森川亮,freee,SBIホールディングス,国際銀行間通信協会,スイフト,グローバル・ペイメント・ユーティリティー,横浜銀行,日本郵政,静岡銀行,LINE,マネックスグループ,ウォルマート■ 新興ITベンチャーのフィンテックへの既存金融機関の対抗戦略とは? 日本経済新聞を毎日眺めていると、ここ最近では、「フィンテック」に関連する記事を目にしない日がありません。華々しくフィンテック関連企業にはお金も集まり、同時に世間の耳目も集めています。 2015/12/28|日本経済新聞|朝刊 会計ソフトのフリーが10億円調達 SBIファンドから、営業・開発強化 「会計ソフトのfreee(フリー、東京・品川、佐々木大輔社長)は28日、SBIホールディングスが立ち上げた複数のファンドから10億円を調達する。8月の35億円とあわせて2015年の調達額は45億円になり、ネット関連のベンチャー企業としては今年最大の規模になる。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます このSBIホールディングスが、「金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」に関わるベンチャー企業に投資するファンド」を立ち上げ、その当初の規模は150億円あまりで、そこには、地銀や通信大手など20社が出資しています。 つまり、既存金融機関がフィンテックというテクノロジー、もしくはフィンテック企業に対抗する手段の一つ目は、「抱き込み戦略」。フィンテック企業に出資または、協業・提携を申し出て、既存金融機関からすれば、抱き込んで、そもそも対立構造にならない、いわゆる「競争しない競争戦略」というわけです。 しかし、そこは優秀な人材が層厚く在籍するエスタブリッシュ企業、硬軟取り合わせた戦略で、新興フィンテック企業に対応しようとしています。次章では、その対抗策を順に、2015年12月単月の記事紹介だけで試みてみましょう。 筆者は、生来のへそ曲がりなので、フィンテック、フィンテックと世の中が騒げば騒ぐだけ、その競争相手の動向が気になってしょうがないのですよ! FinTech革命(日経BPムック) <既存金融機関のフィンテック対抗策> ① フィンテック企業を取り込んで競争しない(出資、業務提携) ② 既存金融システムの利便性の向上(真っ向勝負!) ③ 法改正により自らがフィンテック事業を立ち上げ(なり代わり戦略) ④ フィンテック専門家の知恵を拝借(知らねば聞け!) ■ じゃあ、残りの3つの対応策を説明します! 上記①は競争しない戦略。②~④は直接・間接的に競争する戦略です。 ② 既存金融システムの利便性の向上 従来の金融システムの決済システムの利便性を高めて、フィンテック新興企業に対抗しようとするものです。同じ土俵で戦いますが、これまでの膨大な顧客基盤、巨大な企業外部のネットワーク資産を有効活用しようというものから。 2015/12/11|日本経済新聞|朝刊 国際送金、即日決済に 世界の大手40行、3日から短縮 「日本の3メガバンクを含む世界の40行以上の大手銀行は国際送金を抜本改革する。これまで3営業日ほどかかった決済期間を短縮して送金の当日に完結させ、手数料も銀行間で開示して透明性を高める。1~2年内の実現を目指す。決済が送金当日に完結すれば、取引先からお金を受け取れないリスクが減るほか、お金を機動的に使ったり運用したりできそうだ。」 この記事では、あからさまにフィンテック対応策であることが匂わされています。 「金融とIT(情報技術)を組み合わせたフィンテックの発達で異業種からの安い決済サービスの新規参入が増えたことに世界の大銀行が結束して対抗する。」 「背景にはフィンテックの台頭に対する大手金融機関の危機感がある。」 既存金融機関の巨大ネットワーク経済性を十二分に活用した戦略の概要は次の通り。 スキームは、 ・国際取引の情報インフラを担う国際銀行間通信協会(スイフト)がグローバル・ペイメント・ユーティリティーと呼ぶ新たな枠組みを作る ・ほぼすべての主要金融機関にあたる40行以上が合意する意向を示し、日本の3メガ銀のほか、米シティ、英スタンダードチャータード銀行や中国銀行などが参加する サービス内容は、 ・対象は個人取引を除いた国際送金全般 ・参加行はこれまで3営業日ほどかかった手続きをシステム投資で即日に短縮する ・資金移動の情報はリアルタイムで依頼人や受取人に通知される ・中継銀行など複数の金融機関が関わって不透明だった手数料も銀行同士で価格を開示し、  最初から顧客に提示できるようにする もうひとつは、決済取引時に交わされる情報に付加価値を乗せる戦略。 2015/12/29|日本経済新聞|朝刊 決済システム 送金情報を拡充 大手行など、事務負担軽減 「国内の大手行と地銀、信金・信組は2018年をメドに送金情報をやりとりする企業間の新たな情報網をつくる。今は銀行振り込みの際に送れる文字数が20文字に限られるが、制限をなくして使い勝手を改善する。取引の詳細を書き込めるようになるため、振り込み後に電話やメールで内容を補足する手間を省くことができ、企業の事務負担を大幅に減らせる。」 既存の金融ネットワークを前面に押し出すのは上記の例と同じ手法ですが、決済サービスというものの利便性を向上させるだけでなく、決済時の情報交換を充実させるという付加価値戦略の性格も色濃く出ています。 スキームは、 ・金融・ITネットワークシステム(仮)」。金融庁が調整役となり、全国の金融機関をつなぐ「全銀システム」に加盟する大手行や地銀、信金・信組など1千を超える金融機関が参加 ・資金の決済自体は全銀システムが引き続き担い、その上に新たな情報網を乗せる サービス内容は、 ・企業が取引先などに送金する際に相手に電子的に送れる文字数を無制限にする (従来は、カタカナ、数字の20文字限定で、商品の品名や個数などを書き込むだけで制限を超えるため、詳細な取引内容を電話やメール、ファクスで補足する必要があった) さらに、喜ばしい副産物として、 「実証実験では事務作業にかかる時間を5~7割減らせた」 と、コスト競争力まで出てきた、ということ。 決済インフラ入門 ■ 利便性向上は、デジタルだけで行うのではない。リアルでも可能なのだ! 決済サービスだけでなく、広範な金融サービスの利便性向上を、リアル店舗でも推進しようというのがこちら。 2015/12/31|日本経済新聞|朝刊 地銀、郵便局を窓口に 横浜銀、日本郵政と協議 「地方銀行・第二地方銀行が日本郵政グループとの提携拡大に動き出す。横浜銀行は日本郵政グループに銀行業務を委託し郵便局を銀行代理店(総合・経済面きょうのことば)とする協議に入った。広域の郵便局で預金の出入金などができるようになる。北海道の北洋銀行も地域活性化ファンドを共同組成する検討を始めた。地銀と第二地銀の業界団体のトップ2行が動くことで日本郵政との連携に弾みがつきそうだ。」 前2者の競争戦略が、同じ土俵上で戦う真っ向勝負ならば、こちらは差別化戦略。フィンテック新興企業が無いものは、リアル店舗のネットワーク。顧客接点をデジタルではない領域で増やそうという試みです。では、リアル店舗ネットワーク拡大・充実に欠かせない、「銀行代理店」についての解説は、同日の「きょうのことば」から。 「銀行法で認められた銀行の出店形態の一つ。自前の支店では採算の確保が難しい地域に拠点を築きやすくなる一方、利用者は金融を含めた多様なサービスが1カ所で受けられる利点がある。委託を受けた事業者は銀行と代理店契約を結び、定期預金や住宅ローンを取り次いで手数料を得る。融資の是非は原則として金融機関の本体が判断する。委託元の金融機関には、代理店による不正が生じないよう業務指導する義務がある。」 (上図は、同記事に添付のあった「銀行代理店」のしくみを解説したものを転載) オムニチャネル戦略 (日経文庫) ■ 金融機関は法規制とも戦わなくてはいけないのだ! 顧客サービスの利便性向上と、当局による金融機関の経営健全化の監視と保証とは、たびたびトレードオフ状態に陥ります。上記の銀行代理店も、野放図に他業種からの参入があっては金融取引の安全性が担保できないと、兼業禁止規定があったりと、いわゆる「規制緩和」との戦いでもあります。現在では、06年4月の銀行法改正により、「一般の事業者でも代理店業に参入できる」こととなり、「金融庁によると、今年9月末時点で許可を受けた事業者は、メガ銀行や地方銀行、信託銀行、証券会社など約50にのぼる。」とのこと。 では、フィンテック関連の法改正については、これまでの動きは、、、? ⇒「フィンテック(FinTech)の最新動向 日本経済新聞より」 (下記はこの投稿で紹介した新聞記事) 2015/9/5|日本経済新聞|朝刊 金融とIT融合「フィンテック」後押し 金融庁、銀行規制17年ぶり緩和 仮想通貨の監視策検討 2015/9/16|日本経済新聞|朝刊 金融×IT融合 フィンテック普及へ法整備  金融庁 決済、業種横断の規制検討 ③ 法改正により自らがフィンテック事業を立ち上げ 2015/12/24|日本経済新聞|夕刊 (十字路)銀行グループとフィンテック 「銀行を中核とする金融グループ、つまり銀行グループへの関心が高まっている。環境変化に即し、柔軟な業務運営を行わせる仕組みはどうあるべきか。政府の金融審議会における議論がまとまった。  銀行グループが先行き有望なフィンテック事業にいち早く出資できれば、その成果を金融サービスに反映しやすい。問題は、銀行や銀行グループの業務範囲に規制があることだ。この他業禁止の下では、ベンチャー段階にあり、銀行業務との関連が未知数なフィンテックを、銀行グループが取り込むことは難しい。  これについて金融審は、将来の金融サービス向上に役立つ可能性があれば、銀行グループが早い段階からフィンテックに出資できる道を開こうとする。財務やリスクなどをチェックする認可の取得が条件になる。透明性が確保されるならば、妥当な方向だ。」 ただし、一口に銀行グループといっても、銀行持ち株会社の下に銀行等が連なる形態と、親銀行がグループの頂点にあるタイプとが併存しているのが現状であるため、「金融審は銀行本体へのリスク遮断の有効性が違うとして、フィンテックへの出資割合の上限について、前者への優遇があり得ることを示唆している」ということで、「持ち株会社を作らず、銀行本体が親会社であるタイプの地域銀行」にとってフィンテック進出に対してハードルが上がることになるので、「持ち株会社形態とそうでない銀行の競争条件に現実に差が付くか、注視される」とのこと。 会社機関設定のスキームが違うだけで、差別的扱いが生じるのは、公正な競争環境の整備の観点からよろしくないですね。もっとも、規制でがんじがらめにされている(いた)既存金融機関の間隙を突いて、フィンテック新興企業が新たな金融サービスを立ち上げられたという事情もあるのですが。。。 持株会社の実務 第7版: ホールディングカンパニーの経営・法務・税務・会計 ■ 最後はやっぱり経験者・有識者が持つ『知恵』が勝負を分けるのでしょうか? ④ フィンテック専門家の知恵を拝借 法改正が整うまで待てない。ITの世界では、ドッグイヤーならぬラットイヤーとも言われている競争が激しく、そしてスピード重視の世界。そこで、金融機関もただ手をこまねていているわけにいかず、外部から知恵を取り入れることに力を入れ始めました。その一例が次の記事です。 2015/12/31|日本経済新聞|朝刊 LINE前社長、静岡銀の顧問に フィンテック拡大へ助言 「静岡銀行は2016年1月4日付で無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)前社長の森川亮氏を顧問に迎えることを決め、このほど契約を結んだ。LINEを世界で5億6000万人が利用するアプリに育てた森川氏の知識と人脈を生かし、金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」事業を拡大する考えだ。」 このほか、静岡銀行は、積極的にネット業界との接点を増やそうとしています。 「静岡銀は14年にネット証券のマネックスグループ、15年9月には家計管理アプリのマネーフォワード(東京・港)に出資するなど、金融とITの融合に向けて事業領域を拡大している。提携先との事業展開や新たな提携先選びで森川氏の助言を求める。」 複数の異なる「知恵」が結合して、「イノベーション」が生まれる! かのシュンペーターの言葉を借りるまでもなく、フィンテックは、金融業界でのイノベーションでしょう。そこには、異質なもの同士がうまく結合しあってこそ、新奇的で、かつ有効な(道具性の高い)新たなテクノロジーが発明されて、我々の社会がより豊かになる(格差の拡大はおいといて、、、)のではないでしょうか? それ故、ウォルマートの新決済アプリは、どうなんでしょう??? 微妙です。興味のある方は、下記の記事をご一読ください。 2015/12/29|日本経済新聞|朝刊 ウォルマートも参入 スマホ決済で客囲い込み こういう投稿の締め方もあったのか。。。(^^;) イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 なぜ今、シュンペーターなのか現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します