働く日本人はAIを克服することができるか?(中編)世界一のサービス品質と人間の顔が見える株式投資から考える

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■ 日本人のサービス品質は世界一!?

経営管理会計トピック

ダイレクトにAIを取り上げていない日本経済新聞記事を題材に、AIを克服する日本人の働き方について考察する投稿の第2弾です。

<前回のまとめ>
経済のデジタル化の進展により、情報処理の中心がビックデータをAIなどのテクノロジーを使って効率的に最適解を求めることに移ってきた。
デジタル財が、相互接続のプロトコルさえきちっと守れば、製品やサービスとして個別に製作しても顧客に提供できる「モジュール化」思想で成り立っている。
「限定合理性」を持つ人間の脳はビッグデータの処理には向かないが、離散値で表現できないデータを扱ったり、過去データの統計処理では導くことのできないイベンチャルな判断処理をしたりなど、まだまだAIより人間の脳が一日の長がある分野がある。

2017/8/30付 |日本経済新聞|朝刊 日本のサービス「米より質高い」 民間調査、タクシーや宅配便評価 割安料金、生産性向上阻む

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「日本のサービス業の品質は米国より高め――。日本生産性本部が米国滞在経験のある日本人と、日本滞在経験のある米国人にサービス業の品質差を聞いた意識調査でこんな結果が出た。タクシーや宅配便など28分野のほとんどで日本のサービスの方が高品質と評価された。一方、価格は米国の方が高いと意識されていた。日本は高品質でも業者の実入りにつながっていない。」

(下記は同記事添付の「米国と比べた日本のサービス品質」を引用)

20170830_米国と比べた日本のサービス品質_日本経済新聞朝刊

この調査方法は、下記の手続きにより客観的数値として品質差異を金額で表現しました。
(1) 日米のサービスの品質の違いに対して「どの程度価格を余分に支払っても良いか」を調査
(2) 「より多く払っても良い」と答えた金額だけ品質が優れているとし、これを品質差として貨幣価値に換算して数値化
(3) 数値が高いほど日本の品質が高いことを示すように表示

この調査の結果、日本人のサービス品質が1割から2割程度、米国のそれより高いという結果とともに、サービス価格は、日本人が9分野、米国人が15分野で、日本の方が低いと感じられていることがわかりました。

こういった労働集約的な業種において、AIを活用した接客や、ドローンによる配達、Webサイトを用いた人件費の削減を推進し、サービス業の労働生産性を高めようという動きがあります。日本人は自虐的な批判により耳を傾けがちですが、いかに感情アルゴリズムを実装するロボットが開発途上にあるとはいえ、こういったサービス業において、社会的一般常識を最初から備えている上に職業訓練された、生身の人間の方が、品質もコストパフォーマンスも優れたサービスができることを忘れてはいけません。

元々、サービス品質が低い国のIT業種の企業にけしかけられて、日本のサービス業は労働生産性が低いからと、いたずらに省力化に走る愚を犯さないことを心から願っております。それ相応の代金をいただくことができれば、言われているほど、労働生産性が低いとは到底思えないのであります。(^^)

 

■ RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)がホワイトカラーの仕事を奪う!?

2017/9/3付 |日本経済新聞|朝刊 事務作業も自動化進む 第一生命やオリックス、「ロボ」ソフトで労働時間削減

「オフィスの作業を自動化するソフトウエアが日本で浸透し始めた。データ入力など人手に頼っていた単純作業を自動的に処理することからロボットと呼ばれ、第一生命保険は最大で150人相当の業務を代替する。人手不足の深刻化や働き方改革で労働時間の削減を急ぐ大手企業が次々に導入している。生産性を引き上げて、貴重な人材を顧客対応や企画部門に厚く配置する動きにつながりそうだ。」

(下記は同記事添付の「単純作業をソフトウエアが代替」を引用)

20170903_単純作業をソフトウエアが代替_日本経済新聞朝刊

RPAと呼ばれる仮想ロボットに、紙ベースのデータを光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取ってデジタル情報に変換して基幹システムに入力したり、ウェブ画面から数値をコピーしてエクセルにペーストしたりする作業を行わせます。複数種類の業務ソフトを操作する手順を覚え、検索やデータ取得・入力。確認、間違いのアラートまで人間がやるように代行してくれます。

テキスト認識や画像認識にAIのディープラーニングと機械学習の機能を用いることで、自律的に判断業務まで行ってくれ、熟練・ベテランの作業者以上の作業品質の発揮と、育成のためのコストを抑制する要因となります。

(下記は同記事添付の「幅広い業種でRPAを採用している」を引用)

20170903_幅広い業種でRPAを採用している_日本経済新聞朝刊

このように、様々な業種で様々な業務での採用が広まっているRPAですが、ここでも先行している欧米企業と日本企業の違いが存在します。欧米企業は、ホワイトカラーといえども、まるで機械のように単純に命令に従って作業をする作業者として認識しているため、工場における生産ラインを自動化するのと同列でホワイトカラー職場にもRPAを導入し、職場丸ごと省力化(言ってしまえば人減らし)を目指します。

一方で、日本企業におけるホワイトカラー職場は、定型化・標準化されていない作業が数多く残っており、そういう作業を現在のソフトウェアテクノロジーに基づくRPAでは完全に代行することはできません。だからこそ、外資系コンサルティングファームやRPAソフトウェアベンダーが主張するのは、「もっと日本企業のホワイトカラー職場も標準化・マニュアル化することで、RPAを導入させましょう!」。本当にその方向性は正しいですか?

筆者も仕事柄、企業様へRPA導入をお手伝いしますが、やみくもな標準化やマニュアル化はお勧めしていません。人の仕事と仕事をつなぐところ、現実と理想のギャップ分析や問題意識の掘り起こし、そういった深く事務作業自体の存在価値や意味性を考えて、改善を進めるためには、自分の手を動かしながら、創意工夫を継続していないと、いいアイデアも出ないからです。今一度、皆さんの職場の作業効率性と創意工夫の仕掛けづくりのバランスを点検してみてください。

 

■ 証券アナリストという職種はAIに完全に置き換えられてしまうのか?

この表題に関連する興味深い記事を3つご紹介します。

2017/9/7付 |日本経済新聞|朝刊 EU新規制やAI、アナリストは少数精鋭に 日本証券アナリスト協会会長 新芝宏之氏に聞く

「証券アナリストへの逆風が強まっている。2018年1月から適用される欧州連合(EU)の新規制「MiFID2」や人工知能(AI)の台頭で、仕事のあり方が根本から変わる可能性があるためだ。8月に就任した日本証券アナリスト協会の新芝宏之会長に現状と課題を聞いた。」

(下記は同記事添付の「日本証券アナリスト協会の新芝宏之会長」の写真を引用)

20170907_新芝宏之_日本経済新聞朝刊

インタビューによりますと、EU新規制は、証券会社が提供する有価証券の売買執行手数料とアナリスト調査手数料を分離し、それぞれの対価を明示することが義務付けられています。これは、アナリストの分析が一本一本個別に値段が付くということを意味します。これに、企業への個別取材が制限され、タイムリーな情報発信がやりにくくなるとともに、AIによる株価分析の効用の拡大が、証券アナリストという職業の危機に拍車をかけます。

「企業への事前取材の自粛は日本証券業協会のガイドラインだ。先日、AIを駆使する海外ヘッジファンドの担当者に会った。彼らは駐車場の埋まり具合や石油タンクの動きなどの航空写真をAIに解析させてタイムリーに投資判断を下している。こうしたテクノロジーの発達で、早さを競うハードルはそもそも上がっている。規制にかかわらず、情報の深掘りや独自の視点の提供がアナリストの主戦場になっていくのは時代の流れだ」

つまり、従来の財務や市場情報から緻密に企業価値と適正株価を算定していた作業から、もっとリアル事業の物理的な活動レベルの観測値をAIで解析したほうが株価の読みが当たるというものです。

2017/9/5付 |日本経済新聞|朝刊 (一目均衡)社長の写真、投資の尺度に 編集委員 松崎雄典

「ニューヨーク大学のバルーク・レブ教授らは、著書「ジ・エンド・オブ・アカウンティング」で、利益や資産など財務情報が株価に与える影響度は1980年代までの8~9割から5割程度に下がったと分析した。米アップルやアマゾン・ドット・コムなど、研究開発費が利益を圧迫しやすく、設備より知的財産が重要なIT(情報技術)企業が伸びるにつれて低下が顕著になった。」

ますます、ビックデータをAIで解析して、、、という情報価値が株価形成に強く影響するのなら、もはや、人間(アナリスト)の出る幕は本当にないかもしれません。

 

■ ところがどっこい、投資の世界でも人間味があるほうが重宝される!?

2017/9/8付 |日本経済新聞|朝刊 顔の見える投信、運用大手も続々 責任者が発信、個人客つかむ

「国内金融グループ系列の大手運用会社が、ファンドマネジャーを前面に出した商品戦略に乗り出した。独立系運用会社の独壇場だった「顔の見える投信」に大手も追随。ネット販売の拡大を背景に、証券会社や銀行に投資信託の説明や販売を任せるやり方から、運用者自らが積極的に個人顧客と接点を持つようにし、顧客にアピールする。」

(下記は同記事添付の「運用者が投資家に直接発信(ニッセイアセットの特設サイト)」を引用)

20170908_運用者が投資家に直接発信(ニッセイアセットの特設サイト)_日本経済新聞朝刊

記事によりますと、日本生命保険の運用子会社、ニッセイアセットマネジメントが異色の特設サイトを開き、日本株投信「げんせん投信」1本のみを紹介。運用責任者の伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーの写真を掲げ、生い立ちや投資哲学を語らせています。

「「投信運用の過程を『見える化』したい」。伊藤氏は商品企画担当者などの顔写真もずらりと並べた。投資先企業の取材リポートなども順次追加する。純資産残高は3千万円程度とまだ小さいが「設定以来、ほぼ毎日資金が流入している」(伊藤氏)と話す。」

投資の世界は、運用成績次第で、デジタルな評価がされている印象が強いですが、投資は投資家の人生観や価値観にも左右されるもの。投資結果だけを追い求めることでもなく、投資哲学に基づけば、短期的な収益は差し置いて、長期的な投資スタンスを好むこともある。その辺りの投資の機微はまだまだAIには難しいようです。そのうち、AIがアバターをもって、こういう性格(設定)のAIがファンドマネジャーやっています、という時代もやってくるか!(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です

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