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1.9 Matrix Financial Analytics とは

会議室19

財務分析(経営分析)は、数字を算出して終わりではありません。確固たる経営管理の目的を果たすために行われる計数分析作業で、各種の経営管理活動(施策)と連動する必要があり、同時に、その施策に何らかの示唆を与えたり、特定の管理目的の達成度評価や目標設定に役立つものでなければなりません。

経営管理の活動レベルとして、
①商品戦略
②事業戦略
③財務戦略 の3つ、

経営管理の視点の違いとして、
①ビジネススピード
②投資収益性
③キャッシュマネジメント の3つ、

3X3のマトリックスで一覧性を保持しながらも、企業経営における重要な財務指標を選抜してあります。

   施策対象
商品戦略 事業戦略 財務戦略
 管理視点 ビジネス スピード 売上高成長率 ROS (純利益) CF マージン
投資収益性 交叉比率 ROA (純利益) ROE
キャッシュ マネジメント CCC FCF Net D/E Ratio

2.選ばれた9つの財務指標とは

財務指標は、各種統計資料や、競合他社とのベンチマークにも活用できるものであると道具性が高まります。その見地から、一般的に決算書として外部に公開されている、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/S)から簡単に基礎数値を取り出せるもので構成されるように工夫しました。

① 売上高成長率

・対前年成長率 = (当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100
・年平均成長率 = (当期売上高 - 初年度売上高)^(1/経過年数-1)×100

→CAGR(Compound Average Growth Rate)
詳細は次の筆者ブログの解説記事を参照してください
成長性分析(5) CAGR – 年平均成長率の使い方

 

② 交叉比率(交差比率)

・交叉比率 = 売上高粗利率 × 商品回転率
                   = (粗利 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 棚卸資産)×100

→棚卸資産粗利率を、「売上高粗利率」と「商品回転率」とに分解した指標です。
→「売上高粗利率」は、売上高に含まれるマージン(儲け)の割合を示しています。 ※粗利(あらり)=売上総利益
→「商品回転率」は、在庫(棚卸資産)が売れていくスピードの速さを表しています。

 

③ CCC(Cash Conversion Cycle:キャッシュコンバージョンサイクル)

・CCC = DIO(在庫回転日数)+DSO(売上債権回転日数)-DPO(仕入債務回転日数)
            = (棚卸資産 ÷ 売上原価)×365 +(売上債権 ÷ 売上高)×365 -(仕入債務 ÷ 売上原価)×365

→DIO:Days Inventory Outstanding
→DSO:Days Sales Outstanding
→DPO:Days Payable Outstanding
→仕入から商品販売に伴う現金回収までの日数を示し、この日数が小さいほど、企業の現金回収サイクルが早いことを意味します。
→DIOとDPOの分母も全て「売上高」で統一する方式もあります。売上高の何日分という視点では分かりやすいのですが、
それでは粗利分だけ計算結果が影響されてしまいます。

 

④ ROS(Return on Sales:売上高当期純利益率)

・ROS = 当期純利益 ÷ 売上高 ×100

 

⑤ ROA(Return on Assets:総資産当期純利益率)

・ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 ×100

 

⑥ FCF(Free Cash flow:フリーキャッシュフロー)

・FCF = 営業活動からのキャッシュフロー + 投資活動からのキャッシュフロー

→新規に資金調達しなくても、企業内部活動で生み出されるキャッシュフローを意味します。
→厳密な定義式として、FCF=税引後営業利益+減価償却費ー設備投資ー正味運転資本増加額 というのもあるのですが、決算書(財務諸表)から簡単に取り出せること、どちらの式に基づいても、プラス・マイナスのベクトルは間違わないことから、このテンプレートでは上記簡便法を採用しています。

 

⑦ CFマージン (キャッシュフローマージン)

・CFマージン = 営業活動からのキャッシュフロー ÷ 売上高 ×100

→顧客への販売活動から直接的にどれだけのキャッシュフローを生み出せているかの割合を示しています。

 

⑧ ROE(Return on Equity:株主資本利益率、自己資本利益率)

・ROE = 当期純利益 ÷ 純資産 ×100

 

⑨ Net D/E Ratio(Net Debt / Equity Ratio:純負債資本倍率)

・Net D/E Ratio = (有利子負債 - 現預金)÷ 株主資本

→「株主資本」の名が法定の貸借対照表(B/S)に存在し、この数値を使用すると、少数株主持分(非支配持分)と新株予約権が含まれないことになります。この財務指標の管理目的に照らして、両者を含む「純資産」の値を用いることにします。

 

3.どうして「9つ」にこだわるの

アメリカの認知心理学者ジョージ・ミラーが『人間の脳は7個くらいしか短期的に記憶できない』と提唱した説に則り、自身の経験則からも、人間が並列で物事を評価したり、関連付けたりする数(チャンク)は、7±2 が妥当であると考えています。さらに、研究が進んで、Webデザイナーの業界では、さらに絞り込まれて、4±1 とも言われています。そこで、2軸のマトリクス化で、それぞれ3つずつに分けることで、階層化し、人間の脳に刻み込まれやすいフレームワークにすることに腐心しました。それでも、9つが多すぎるというユーザに対しては、さらに絞り込んだ下記の5つに焦点を当てることを推奨しています。

20160820_9 Matrix Financial Analytics_5 focus indexes_2

② 交叉比率
④ ROS(Return on Sales:売上高当期純利益率)
⑤ ROA(Return on Assets:総資産当期純利益率)
⑥ FCF(Free Cash flow:フリーキャッシュフロー)
⑧ ROE(Return on Equity:株主資本利益率、自己資本利益率)

 

4.財務指標の計算式で注意すべきところは

「財務比率」を計算する際に、貸借対照表(B/S)の数字を使う場面は多いものです。そこでは、通常、何の断りもない場合は、B/S数値については「平残(平均残高)」という補正値が使用されるのが普通です。例えば、総資産を用いて、ROAを計算したい場合、分母に持ってくる総資産の値を、

・総資産 = (期首総資産残高 + 期末総資産残高) ÷ 2

という計算式で、ROAを算出するに当たり、利益創出に使用した資産を正しくとらえようとする試みからこの領域での一般常識になっています。
ただし、ROEツリー(デュポンチャート、デュポンツリー)のように、上位の財務指標をブレークダウンして詳細分析していく際に、この「平残」方式は財務指標間の相関関係を見るのに、大いに邪魔をしてくれています。また、ここまでITが発達した時代で、ざっくり期首期末の単純平均で、評価期間の総使用資本量を推し量るというのは乱暴に過ぎます。そこで、本テンプレートでは、中途半端な精緻化はやめて、B/S値を使用する際には、期末値を思い切って用いることにします。したがって、巷の経営分析データや貴社内の管理資料と若干分析結果に違いが生じる可能性があります。その際は、本テンプレートの計算式を自由に改変して頂いて構いません。その労に対応して益のある分析結果が得られるとお考えなら、その方針を妨げるものは当方にはありませんので。

参考まで、資本使用量概念にあくまで本質的に迫っていくなら、「積分」で対象データを求めるべきなのですが、会計実務でギリギリ用いることができるのは、4半期決算毎の期首期末値を使ったもので、これでもかなり年間の使用資本(資産)量により本質的に近くなる値かも、というのをイメージ図でお伝えします。

20160820_平残の意味

そして、分母のB/S値ばかりに、本質的な使用資本(資産)量を求めようとするなら、分子の利益等のP/L値も、複利計算で求める必要があります。そうしないと、分子分母がきちんと対応しなくなるので。ここまで来ると、コーポレートファイナンス理論の力を借りる必要が出てきます。それゆえ、スパッと割り切って、経営実態を把握するのに、期末値を採用することに何のためらいもないのが自分流なのです。このテンプレートでは、5か年の推移で財務指標を見ていくので、一時的な資産増も平準化(年次循環考慮後)した姿できちんと可視化できます。

 

5.このテンプレートの使い方

「入力シート」から、分析最終年度、決算書から分析対象に使用する勘定科目の金額などを、ベージュ色のハッチングがかかったセルに入力してください。
「表示シート」では、グラフ化する元数表が表示されていますので、数字だけで確認したい場合はこちらをご参照ください。
「グラフシート」では、可視化されたExcelグラフが表示されています。できるだけシンプルに作成したいため、一切のVBAマクロを仕込んではいませんので、ご安心してご活用ください。そのため、単位表示など、見やすいグラフにするためには、ユーザの方に多少の作業が発生する場合があります。
なお、本版はサンプルとして、トヨタ自動車株式会社の5ヵ年(FY2011~15)の決算数字を有価証券報告書を元に入力してあります。

最後に、財務指標は、計算してグラフ化して終わりではありません。なぜ、そういう値になったのか、そしてこの先どういう意値になりそうか、原因分析と 予測と施策立案に役立ててこそ、取り扱う意味が生じます。それゆえ、惜しげもなくテンプレートをここに開示します。つまり、これらの数字を使って、どうやって業績評価をするか、どうやって施策立案するか、そのお手伝いをするのが小職のメインミッションであるからです。ご自身で自社または競合他社、もしくは投資対象企業の財務分析に本テンプレートをご活用いただき、仮に、更に踏み込んだ使い方のレクチャーやカスタマイズをご希望の方は、どうぞ遠慮なく、下記問い合わせ先までご連絡ください。

<注記>
・本テンプレートは、Microsoft Excel 2010 を使って作成しております。
・動作確認は、Windows 7/8/8.1/10で行っています。
・シート構成
   ① はじめに   ・・・イントロダクション
   ② 入力シート  ・・・5ヵ年の財務数値を入力
   ③ 表示シート  ・・・9つの財務分析表が表示
   ④ グラフシート ・・・9つの財務分析グラフが表示
・各シートは作成環境にて印刷設定を簡易的に施してありますが、印刷される場合は、ユーザ環境で改めて印刷設定されることをお勧めします。

<シートイメージ>
・入力シート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_入力シート_2

 

・表示シート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_表示シート

 

・グラフシート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_グラフシート

⇒ダウンロードはこちらから(DL先は本ブログサーバ内なのでご安心ください)
  「9 Matrix Financial Analytics テンプレート(無償版)」← MS Excel 2010版

・問い合わせ先:
  ブログ内各ページ右にあるコンタクトフォームからご連絡いただけます。

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