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■ 財産法の使い勝手

会計(基礎編)
前回(「会計帳簿で利益を計算してみる」)、あなたは、「財産法」というやり方で、2つの時点(開業前と全ての支払い後)の間にいくら儲けることができたかを計算してみました。
このやり方には、欠点がいくつかあります(使い勝手が悪いという程度ですが)。

  1. 利益計算の手間に3ステップを必要とする
  2. 利益が増えた理由を分析できないケースがある

利益計算の手間のかかり具合をまず確認しましょう。もし、「財産法」で利益を計算したくなったら、

  1. 利益計算を始めたい過去時点の財産(資産)の合計を計算する
  2. 利益計算を終わらせたい(現在)時点の財産(資産)の合計を計算する
  3. 2つの合計値を引き算する

という手順を踏みます。あなたが、会社を経営していて、利益を計算したくなった時には、いつでもこの3ステップを実施する必要があります。ちょっと想像してみてください。トヨタやパナソニックみたいな大企業が、財産法で利益を計算したくなったら、全世界に散らばっている財産(資産)をいちいち全て集計してから差引計算する手間を。
これしか、利益の計算がないのなら回避の仕様がないので、全ての会社がこの方法を採用することでしょう。これより手軽なというべきか、そもそも「利益」を計算することを最終目的とした会計帳簿が存在します。その帳簿を利用しない手はありません。この後、その内容を説明します。

■ 預金通帳を使って利益を確認する

次は、2つ目の欠点の説明になります。分かりやすさのために、あなた個人の預金通帳を例にして説明します。あなたは、自分自身の家計が今月いくら利益を上げたか(個人の例なので、黒字になったか、とか、預金が増えたか、と言い直しましょう)を知りたくなったとします。その時はどういう計算をしますか?
おそらく、今月末の預金残高から前月末の預金残高を差し引いて、今月の預金の増えた額を計算するはずです。
会計(基礎編)_預金通帳の残高_v01
この例だと、4月の黒字額(利益)は、下記の通りです。
4月の利益 =(4月末の残高)-(3月末の残高)
= 1,045,000円 - 1,000,000円
= 45,000円
しかし、この計算式だけでは、どうして、45,000円増えたのか、理由(明細)が分かりません。
そこで、あなたはきっと、月末残高の行以外のいろんな取引(入金や引き落とし)の内容を見るに違いありません。
会計(基礎編)_預金通帳の明細_v01
会計の世界では、この入出金の取引明細そのものを集計する会計帳簿で利益を直接的に計算することができます。その利益計算のやり方を「損益法」とか「収益費用アプローチ」といいます。
このとき、各取引を会計帳簿に記録するときに使用する名前は次の通りです。

  • 「資産(財産)」を増やす取引を「収益(しゅうえき)」という
  • 「資産(財産)」を減らす取引を「費用(ひよう)」という

会計(基礎編)_損益計算_v01
「会計帳簿(その2)」の上で、「収益」と「費用」の差額が表示されています。この差額こそ「利益」で、「資産」が増えた分を意味します。

■ 玩具屋の利益を損益法で計算してみる

では、前回(「会計帳簿で利益を計算してみる」)で取り上げた玩具屋の例を用い、「会計帳簿(その2)」を使って「利益」を実際に計算してみましょう。
(設例で使う数字は前回記事で再確認しておいてください)
資産(財産)が増えたり減ったりした取引は、時系列にしたがって、次の通りです。
《1.購入》
問屋(サプライヤー)から商品:100万円を購入するため、現金で支払った
会計(基礎編)_商品購入_v01
《2.販売》
お客様から代金:200万円を現金で受け取った
会計(基礎編)_商品販売_v01
《3.給与支払い》
社長業を営むあなたへ給与:30万円を現金で支払った
会計(基礎編)_給与支払い_v01
《4.利息支払い》
信用金庫へ支払利息:10万円を現金で(相手の口座に振り込みましたが)支払った
会計(基礎編)_利息支払い_v01
《5.決算》
これまでの、1.から4.の取引を全て並べて、「収益」と「費用」の差額を眺めると、60万円という「利益」が計算された
会計(基礎編)_損益法の利益_v01

■ 注意点と気づき

注意点がひとつあります。不動産屋に店舗を購入するために支払った100万円は、このケースでは「費用」になりません。その理由は、決算の時に、店舗の価値(会計帳簿に記録されている金額)は購入した時の100万円と一緒のままなので、店舗購入自体は、会社の資産(財産)の増減に関係ないからです。もともと手元にあった100万円の預金を不動産と等価交換しただけです。
ただし、不動産の売買がいつも資産の増減と無関係なのか、また持っているだけでは絶対に費用とならないか、といえば、実は違います。その点は、一部に関しては「会計(基礎編)」の後続の記事で説明します。
気づきもひとつあります。「会計帳簿(その1)」(←前回登場した際には「その1」とは名乗っていませんでしたが)を使って、「財産法」で計算した利益は、今回の「損益法」で計算した利益と原則としては一致します。
念のため、前回掲載した「会計帳簿(その1)」を再掲します。(←まだ「その1」と名乗っていませんが。しつこい!)
会計(基礎編)_利益計算_v01
ただし、これも、複雑な経済活動の実態に即して、会計ルールも複雑になっていったので、例外的に(現在は恒常的かも)、2つの計算方法を使った「利益」の金額が一致することは稀(まれ)となりました。この点は、「会計(基礎編)」のレベルを超えているので、別シリーズで説明します。
「なぁ~んだ、これまで一生懸命に記事を読んできたのに、会計実務では使えないのか (*≧O≦)ゝ」と決して落胆しないでください。基本が身についてこその応用です。筆者も学生の頃、柔道をしており、まず先輩から「形(かた)」を教わりました。「形」が身についてこそ、試合で柔軟に相手と組むことができます。会計初学者の方、会計をおさらいするためにこの記事をお読みの方、是非、会計の「形」をこのシリーズで身に着けてください。
ここまで、「もうひとつの方法で利益を計算してみる」を説明しました。
会計(基礎編)_もうひとつの方法で利益を計算してみる

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ 財産法の使い勝手 前回(「会計帳簿で利益を計算してみる」)、あなたは、「財産法」というやり方で、2つの時点(開業前と全ての支払い後)の間にいくら儲けることができたかを計算してみました。 このやり方には、欠点がいくつかあります(使い勝手が悪いという程度ですが)。 利益計算の手間に3ステップを必要とする 利益が増えた理由を分析できないケースがある 利益計算の手間のかかり具合をまず確認しましょう。もし、「財産法」で利益を計算したくなったら、 利益計算を始めたい過去時点の財産(資産)の合計を計算する 利益計算を終わらせたい(現在)時点の財産(資産)の合計を計算する 2つの合計値を引き算する という手順を踏みます。あなたが、会社を経営していて、利益を計算したくなった時には、いつでもこの3ステップを実施する必要があります。ちょっと想像してみてください。トヨタやパナソニックみたいな大企業が、財産法で利益を計算したくなったら、全世界に散らばっている財産(資産)をいちいち全て集計してから差引計算する手間を。 これしか、利益の計算がないのなら回避の仕様がないので、全ての会社がこの方法を採用することでしょう。これより手軽なというべきか、そもそも「利益」を計算することを最終目的とした会計帳簿が存在します。その帳簿を利用しない手はありません。この後、その内容を説明します。 ■ 預金通帳を使って利益を確認する 次は、2つ目の欠点の説明になります。分かりやすさのために、あなた個人の預金通帳を例にして説明します。あなたは、自分自身の家計が今月いくら利益を上げたか(個人の例なので、黒字になったか、とか、預金が増えたか、と言い直しましょう)を知りたくなったとします。その時はどういう計算をしますか? おそらく、今月末の預金残高から前月末の預金残高を差し引いて、今月の預金の増えた額を計算するはずです。 この例だと、4月の黒字額(利益)は、下記の通りです。 4月の利益 =(4月末の残高)-(3月末の残高) = 1,045,000円 - 1,000,000円 = 45,000円 しかし、この計算式だけでは、どうして、45,000円増えたのか、理由(明細)が分かりません。 そこで、あなたはきっと、月末残高の行以外のいろんな取引(入金や引き落とし)の内容を見るに違いありません。 会計の世界では、この入出金の取引明細そのものを集計する会計帳簿で利益を直接的に計算することができます。その利益計算のやり方を「損益法」とか「収益費用アプローチ」といいます。 このとき、各取引を会計帳簿に記録するときに使用する名前は次の通りです。 「資産(財産)」を増やす取引を「収益(しゅうえき)」という 「資産(財産)」を減らす取引を「費用(ひよう)」という 「会計帳簿(その2)」の上で、「収益」と「費用」の差額が表示されています。この差額こそ「利益」で、「資産」が増えた分を意味します。 ■ 玩具屋の利益を損益法で計算してみる では、前回(「会計帳簿で利益を計算してみる」)で取り上げた玩具屋の例を用い、「会計帳簿(その2)」を使って「利益」を実際に計算してみましょう。 (設例で使う数字は前回記事で再確認しておいてください) 資産(財産)が増えたり減ったりした取引は、時系列にしたがって、次の通りです。 《1.購入》 問屋(サプライヤー)から商品:100万円を購入するため、現金で支払った 《2.販売》 お客様から代金:200万円を現金で受け取った 《3.給与支払い》 社長業を営むあなたへ給与:30万円を現金で支払った 《4.利息支払い》 信用金庫へ支払利息:10万円を現金で(相手の口座に振り込みましたが)支払った 《5.決算》 これまでの、1.から4.の取引を全て並べて、「収益」と「費用」の差額を眺めると、60万円という「利益」が計算された ■ 注意点と気づき 注意点がひとつあります。不動産屋に店舗を購入するために支払った100万円は、このケースでは「費用」になりません。その理由は、決算の時に、店舗の価値(会計帳簿に記録されている金額)は購入した時の100万円と一緒のままなので、店舗購入自体は、会社の資産(財産)の増減に関係ないからです。もともと手元にあった100万円の預金を不動産と等価交換しただけです。 ただし、不動産の売買がいつも資産の増減と無関係なのか、また持っているだけでは絶対に費用とならないか、といえば、実は違います。その点は、一部に関しては「会計(基礎編)」の後続の記事で説明します。 気づきもひとつあります。「会計帳簿(その1)」(←前回登場した際には「その1」とは名乗っていませんでしたが)を使って、「財産法」で計算した利益は、今回の「損益法」で計算した利益と原則としては一致します。 念のため、前回掲載した「会計帳簿(その1)」を再掲します。(←まだ「その1」と名乗っていませんが。しつこい!) ただし、これも、複雑な経済活動の実態に即して、会計ルールも複雑になっていったので、例外的に(現在は恒常的かも)、2つの計算方法を使った「利益」の金額が一致することは稀(まれ)となりました。この点は、「会計(基礎編)」のレベルを超えているので、別シリーズで説明します。 「なぁ~んだ、これまで一生懸命に記事を読んできたのに、会計実務では使えないのか (*≧O≦)ゝ」と決して落胆しないでください。基本が身についてこその応用です。筆者も学生の頃、柔道をしており、まず先輩から「形(かた)」を教わりました。「形」が身についてこそ、試合で柔軟に相手と組むことができます。会計初学者の方、会計をおさらいするためにこの記事をお読みの方、是非、会計の「形」をこのシリーズで身に着けてください。 ここまで、「もうひとつの方法で利益を計算してみる」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します