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組織における分業(1)分業のタイプ 垂直分業、水平分業、機能別分業、並行分業の違いとは

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「事業」と「組織」の語感の違いから始まる組織管理論

政府も株式会社に代表される営利団体も、非営利団体(NPO)であっても、すべからく世の中に存在する組織とは、個人単独では成し遂げることができないミッション・目的を果たすために人の集団を組織化し、枠組み・入れ物としての組織の設立が行われます。

事業(Enterprise : エンタープライズ)と組織(Organization: オーガニゼーション)の違いは明確に認識しておく必要があります。英語の語彙としての意味的には、enterprise には、「企業」という訳語が確かにありますが、筆者としては、そこには「人の集団」というイメージがどうも湧かないのです。「社団法人」:人の集まり、という意味では、 organization や組織という言葉の方がしっくりきます。

この長くなるであろう連載は、なぜ人は集まって集団をつくり、特定の目的を達成するために、自らの集団を組織化し、運営していこうとするのか。その動機と、その分析をするために必要な知識と、実際に組織運営するために必須なハウツーと筆者の経験を整理するためのものです。

人間はなぜ組織をつくり分業を始めるのか?

とある目的意識を持った人たちが、その目的がとある事業を成し遂げることである自覚するとともに、自分個人の労力と知恵だけでは無理があり、他人を動員する必要があると自覚した時に、組織化が始まります。

偉大な事業を成し遂げるために、個々人の小さな力を結集して事に当たります。これを「分業」と呼びます。

やるべき「事業」が定まっている。しかし、それを個人単独で成し遂げることは不可能。それならば、「事業」をできるだけひとりひとりの力で何とか処理できる単位にまで小分けする。それを「タスク(課業)」と呼びます。最後に、それぞれのタスクを実行してくれる人たちを集めて、タスクを仕事として実践できるような体制を作ります。それが「組織化」なのです。

組織管理(入門編)事業とタスクと分業の関係

「分業」の仕方にはいくつかのパターンがある

個人の手に余る偉大な「事業」の遂行のため、人々の労力と知恵を結集して、分業を行わなければなりません。その分業の仕方には、達成すべき「事業」の性質で決まる要因と、集められた人々の性質で決まる要因があります。ここでは、その要因は後から議論することにして、分業体制のタイプ分けを学習しておきたいと思います。

例えば、自動車を製造販売して利益を得る、という「事業」を掲げた自動車会社をケースに考えます。利益獲得のために、どういう自動車を開発したらいいのか、どういう販売方法を採用したらもっと自動車が売れるのか、よりいいものをより安く作るにはどういう製造工程や生産ラインを構築すればよいのか、それらはすべて、人の働き方という視点からみれば、あるべき/最適な「分業」体制とは何か? という難問を解こうとチャレンジしているとの同義なのです。

● 垂直分業と水平分業
リーダーとメンバ、主人と奴隷、上司と部下、職長と工員というある種、権限と地位(筆者注:ヒエラエルキー問題もこの連載では取り上げる予定)の別で分業を果たそうというのが「垂直分業」になります。あなた、実行する人、わたし、考える人。というスタイルです。

一般的には、
・中長期戦略を策定するタスクと短期の現場対応をするタスク
・企画タスクと遂行タスク
という名称で区分されることが多いと思います。

一方で、例えば、自動車の開発、自動車の製造、自動車の販売という風に、事業目的の遂行のために必要なタスクを一連の仕事の流れの中で区分したものを「水平分業」といいます。上記では職能別に分けましたが、担当製品種別、担当地域別など、分け方については、「垂直分業」の比にならないくらいに数多くのバリエーションが存在します。

組織管理(入門編)垂直分業と水平分業

「水平分業」のバリエーションは事業目的と組織体制により様々である

古代ローマ(共和制・帝国)が広い国土と他民族を長い間、統治できたのは、いくつかの部分に分けて管理していたという「分割統治」の機能が上手に働いたからです。現代ビジネスにおける会社というものも、雇用される従業員の性質や、企業目的、商材や商流によって、ここでは挙げ切れない程のバリエーションを持った分業のスタイルが存在します。

組織管理(入門編)並行分業と機能的分業

並行分業

同一または類似の作業プロセスを複製して、タスク(課業)の数量的負荷の分担により、働く人の一人当たりの負荷分散を図るのが「並行分業」です。作業負荷だけでなく、作業が遅滞した際のリスク分散目的でもこの形態が採用されたりします。

仮に、田中さん、山本さん、高橋さん、伊藤さんの4人で完成車の組み立てラインに入って、自動車を流れ作業で作っているとします。この4人の内、高橋さんと伊藤さんを解雇して残りの田中さん、山本さんの2人だけに生産ラインに入ってもらうと、生産量は半減してしまいますが、自動車の製造自体が成り立たなくなるわけではありません。

このように、並行分業は、場所や設備等を共有して、生産量全体を分担しあうというタスクの分割方法です。ただし、同種の製品の生産数量だけを分担しあうのではなくて、販売地域別(それに従った工場が立地していると想定して)や顧客別に並行分業することも可能です。

つまり、北日本工場、東日本工場、西日本工場という地理的分散を行うこともできますし、販売ディーラー経由の一般消費者向けセダン、法人営業経由の高級車や営業車両、各種事業形態別の産業車両(バス、トラック、タクシー他特殊車両)というお客様の試行に合わせた製品別・商流別の分担も行うことができます。また、地域や顧客軸だけでなく、早朝、昼間、夜間といった時間帯別のシフト制でも、仕事量を分配する時間的な並行分業も可能なのです。

機能別分業

事業目的遂行という組織全体の目標に対して自分が果たすべき機能に応じてタスクを分割するやり方を「機能別分業」といいます。並行分業は、分業の結果のアウトプット(成果)は単純に足し算すれば、事業目的遂行に資することができ、一部の目標未達があったとしても、他の分業者の仕事の出来栄えには基本的に左右されることはありません。

しかし、機能別分業は、組織全体の目標達成のために、機能的に分割されたサブタスクを遂行するように仕事がデザインされているため、成果物の完成のために各自のタスクが物理的に、または時間的に揃っていないと、ひとつたりともアウトプット(成果)が出ない恐れが生じる分業形態です。

例えば、自動車1台完成させるのに、田中さんがエンジン製造を担当し、山本さんがブレーキなどの足回り系の製造を担当し、高橋さんが車台やフレーム取り付けを担当し、伊藤さんが品質チェック作業を担当していた場合、4人の誰かの仕事が滞ってしまっては、1台の車も完成しない、つまり、アウトプット(成果)が何も出ないことになるのです。

(中間まとめ)「並行分業」と「機能的分業」の絶対的優越はあるのか?

例えば、ものづくりに限った場合でも、「並行分業」と「機能的分業」のどちらかが一方的に優れている生産方式であるかと断言することは大変難しい問題です。

「セル生産」「一人屋台生産方式」が、「並行分業」に相当します。導入当初は、多品種少量生産に機動的に対応するためとか、職工さんの多能工化促進とか、働きがいの向上とか、在庫圧縮など、一定の効果も出ていました。

しかしその一方で、ライン生産方式でも混流生産によって、車種ごとの生産ボリュームの調整が可能になった、非常に有能な多能工の育成にコストと時間がかかり過ぎる、各作業者の強い責任感を必要とするあまりストレスの高い職場になってしまいました。

完成車の在庫は減ったが、部品在庫は逆に膨らんだ等、導入企業の職場環境やコンペチタ―との競争関係如何で、絶対的に「機能的分業」に「並行分業」が優っているとは言い切れないのです。

逆に、「機能別分業」は、アダム・スミスが『資本論』の中で提唱した分業のイメージに近く、細かく定義されたサブタスクを幾度となく繰り返すことで習熟度が高まり、それがやがて高い生産性や作業品質、ひいてはコストダウンにつながるというメリットも現に存在するのです。

本稿では、水平分業は、さらに「並行分業」と「機能別分業」に区分され、業種業態やその企業の内外の経営環境によって選択されるべきパターンであると理解した方が無難であるよう思えますが如何でしょうか?(^^;)

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