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■ やっと『儲け』から『利益』に言い換えられます

会計(基礎編)
『儲け』は、会計の世界では『利益(りえき)』と言います。日本語としての「利益」の語源は、仏教用語で、「りやく」とも読みます。そもそも仏教では、「りやく」は「ためになること、他人を益すること、仏さまから与えられる恵み」といった意味で、善行の結果として得られるものだそうです。一方で、『功徳(くどく)』とは、「善行を施すことによって、その人に備わる徳」のことを差し、善行は、自分にとって優れた結果を招く能力を持つと認識されています。
(他人のための善行か、自己のための善行かは、「大乗仏教」「上座部仏教」などの用語をお調べになると微妙な関係性が理解できるかもしれません)
閑話休題。
会計や経済・経営の世界では、「利益」の語用がぴったりだと思います。利他のココロで誠心誠意を尽くさないと、お客様から支持が得られず、結果として儲からないという解釈もできるからです。
また、株主から会社を託されて(正確には出資金を託されて)、うまく経営をして株主に配当としてお返しするにはまず儲けないといけない。これも経営者から見れば利他のココロが必須であるとも解釈できます。もう少し専門的に言うと、経営者は出資者に対して会社経営について「受託責任」を果たす必要があるということ。この件は別途説明します。
利益情報の意味というと、表示利益の種類だと、たとえば、「粗利」「営業利益」とか、最近IFRSで流行っている「包括利益」とかの段階利益や、管理会計で使う「EBITDA」「EVA」などの説明が聞けるものと思われたかもしれませんが、もうしばらくお待ちを。
そもそも利益情報がもつ本質を理解すれば、様々な「○○利益」をどうさばくか、直観が働くものと信じています。
(そもそもが多いブログでごめんなさい。でも知識をいたずらに増やしただけでは、後々応用が利かない、本質こそを知りたいのだ、という人向けのブログを目指しています)

■ 利益に込められた思いは2つ

まず、利益に手向(たむ)けられた意図は2つ。一つは「分配可能利益(配当可能利益)」。これは、会社の経営活動からの成果は会社設立にあたって資金を用意した投資家へのリターンそのもので、会計における利益情報はそれを表示するものであるという考え方です。
もう一つは「業績評価利益」。会社経営を任された経営者が原則として1年間にどれだけ上手に儲けることができたか、経営者の成績表(通信簿)としての意味を持ちます。成績表の良し悪しで経営者への報酬も決まります。
現代では、株主が直接会社経営に携わらなくなる傾向もあるため、経営者の横暴で、経営者が勝手に会社の財産を処分して株主にはしばらくわからなくなる事態も散見されるようになりました。ひどい時には株主のお金をあの手この手で着服しようとする雇われ経営者も出現しました。経営者がどれくらい儲けたか、株主がどれくらい分配を受けられるか、を見極めるために利益情報は活用されます。
昔は社会・経済のしくみが素朴でシンプルだったので、両者の利益は一致していました。
しかし、
会社経営の難易度が上がり、会社経営に専門的知識の必要性が高まったこと、投資家が必ずしも経営能力が高いとは限らないこと、会社を自分で立ち上げるほどにはお金は持たないが経営の専門性の高い人たちが出現したこと、投資家は資金の運用能力の低い自分たちより能力の高い人にお金の運用(会社の経営)を託して、より財産を増やそうとしました。
一方で、
経営者は、どれくらい会社を儲からせたらいくらの報酬がもらえるか、明確な基準が必要になりました。こうして、本来は会社の利益情報はひとつしかなかったはずなのに、その数字に込められた期待は2種類に分かれるようになりました。期待が分かれると、自分の期待に添うように利益の計算方法自体がいろいろ試行錯誤されるようになりました。
この辺の企業経営システムの変化は、「経営と所有の分離(バーリとミーンズの研究が有名)」、というキーワードでお調べ頂けるとより詳細を知ることができます。

■ もう一つの利害調整

次に、株主と債権者(銀行などの金融機関)の間に発生する利害調整の問題もあります。
株主はせっかく大金を会社に出資したのだから、なるべく多い金額の見返りを求めます。債権者は、会社に融資する際に、借金の形(かた)として担保を取ることが多いです。担保とは、融資したお金が返ってこなかったら、代わりに弁済できる権利のことで、会社の保有財産に対して設定されることが多いです。たとえば借金を返せなくなったら、担保が設定されていた会社保有の不動産を金融機関に引き渡す(そして売却して現金化する)というアクションがとられます。
この時、なるべく会社の中に利益(現金や有価証券、不動産の形で残ります)を貯め込んで、借金返済の原資を確保したい債権者と、せっかく出資したお金からの見返りとして利益の分配をなるべく増やしたい(会社から配当(現金)を引き出したい)と願う株主の間で、利害の衝突が発生することになります。
そこで、両者の調停役というか、どちらかというと債権者の立場を守るため、日本の場合は、「会社法」という法律で様々な制約を設け、せっかく経営者が一生懸命頑張って儲けた「業績評価利益」から、いくらか会社の中に利益を天引きで貯金しておくことで倒産しにくくし、通常、中長期にわたる借金返済が滞りなく行われるように融資の安全性を高めることを目的として「分配可能利益」に関する決まりが作られました。

■ 連結単位で考える

一昔前までは、いわゆる配当制限は「親会社の単体決算」に対してかけられていましたが、最近は、「連結決算」に対してもかけられるようになってきています。
最近、「○○ホールディングズ」とか「持株会社」といった言葉をよく耳にしませんか?
昔は、利益操作を行い、グループ連結全体では赤字で、到底株主に対して配当を出せる状況にないのに、親会社の損失を子会社に移して見かけ上だけ親会社を黒字にし、親会社の株主に対して配当を払ったとしても、お咎(とが)めなしだったのです。
しかし、経済状況の変化や法整備が進み、連結主体(複数の法人がグループを形成し、あたかも一つの会社として有機的に機能する集合体)を一つの経済活動単位として監視・監督できるようになり、連結全体でも「分配可能利益」を計算できるようになりました。
ここまで、「利益情報の意味」を説明しました。
会計(基礎編)_利益情報の意味

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ やっと『儲け』から『利益』に言い換えられます 『儲け』は、会計の世界では『利益(りえき)』と言います。日本語としての「利益」の語源は、仏教用語で、「りやく」とも読みます。そもそも仏教では、「りやく」は「ためになること、他人を益すること、仏さまから与えられる恵み」といった意味で、善行の結果として得られるものだそうです。一方で、『功徳(くどく)』とは、「善行を施すことによって、その人に備わる徳」のことを差し、善行は、自分にとって優れた結果を招く能力を持つと認識されています。 (他人のための善行か、自己のための善行かは、「大乗仏教」「上座部仏教」などの用語をお調べになると微妙な関係性が理解できるかもしれません) 閑話休題。 会計や経済・経営の世界では、「利益」の語用がぴったりだと思います。利他のココロで誠心誠意を尽くさないと、お客様から支持が得られず、結果として儲からないという解釈もできるからです。 また、株主から会社を託されて(正確には出資金を託されて)、うまく経営をして株主に配当としてお返しするにはまず儲けないといけない。これも経営者から見れば利他のココロが必須であるとも解釈できます。もう少し専門的に言うと、経営者は出資者に対して会社経営について「受託責任」を果たす必要があるということ。この件は別途説明します。 利益情報の意味というと、表示利益の種類だと、たとえば、「粗利」「営業利益」とか、最近IFRSで流行っている「包括利益」とかの段階利益や、管理会計で使う「EBITDA」「EVA」などの説明が聞けるものと思われたかもしれませんが、もうしばらくお待ちを。 そもそも利益情報がもつ本質を理解すれば、様々な「○○利益」をどうさばくか、直観が働くものと信じています。 (そもそもが多いブログでごめんなさい。でも知識をいたずらに増やしただけでは、後々応用が利かない、本質こそを知りたいのだ、という人向けのブログを目指しています) ■ 利益に込められた思いは2つ まず、利益に手向(たむ)けられた意図は2つ。一つは「分配可能利益(配当可能利益)」。これは、会社の経営活動からの成果は会社設立にあたって資金を用意した投資家へのリターンそのもので、会計における利益情報はそれを表示するものであるという考え方です。 もう一つは「業績評価利益」。会社経営を任された経営者が原則として1年間にどれだけ上手に儲けることができたか、経営者の成績表(通信簿)としての意味を持ちます。成績表の良し悪しで経営者への報酬も決まります。 現代では、株主が直接会社経営に携わらなくなる傾向もあるため、経営者の横暴で、経営者が勝手に会社の財産を処分して株主にはしばらくわからなくなる事態も散見されるようになりました。ひどい時には株主のお金をあの手この手で着服しようとする雇われ経営者も出現しました。経営者がどれくらい儲けたか、株主がどれくらい分配を受けられるか、を見極めるために利益情報は活用されます。 昔は社会・経済のしくみが素朴でシンプルだったので、両者の利益は一致していました。 しかし、 会社経営の難易度が上がり、会社経営に専門的知識の必要性が高まったこと、投資家が必ずしも経営能力が高いとは限らないこと、会社を自分で立ち上げるほどにはお金は持たないが経営の専門性の高い人たちが出現したこと、投資家は資金の運用能力の低い自分たちより能力の高い人にお金の運用(会社の経営)を託して、より財産を増やそうとしました。 一方で、 経営者は、どれくらい会社を儲からせたらいくらの報酬がもらえるか、明確な基準が必要になりました。こうして、本来は会社の利益情報はひとつしかなかったはずなのに、その数字に込められた期待は2種類に分かれるようになりました。期待が分かれると、自分の期待に添うように利益の計算方法自体がいろいろ試行錯誤されるようになりました。 この辺の企業経営システムの変化は、「経営と所有の分離(バーリとミーンズの研究が有名)」、というキーワードでお調べ頂けるとより詳細を知ることができます。 ■ もう一つの利害調整 次に、株主と債権者(銀行などの金融機関)の間に発生する利害調整の問題もあります。 株主はせっかく大金を会社に出資したのだから、なるべく多い金額の見返りを求めます。債権者は、会社に融資する際に、借金の形(かた)として担保を取ることが多いです。担保とは、融資したお金が返ってこなかったら、代わりに弁済できる権利のことで、会社の保有財産に対して設定されることが多いです。たとえば借金を返せなくなったら、担保が設定されていた会社保有の不動産を金融機関に引き渡す(そして売却して現金化する)というアクションがとられます。 この時、なるべく会社の中に利益(現金や有価証券、不動産の形で残ります)を貯め込んで、借金返済の原資を確保したい債権者と、せっかく出資したお金からの見返りとして利益の分配をなるべく増やしたい(会社から配当(現金)を引き出したい)と願う株主の間で、利害の衝突が発生することになります。 そこで、両者の調停役というか、どちらかというと債権者の立場を守るため、日本の場合は、「会社法」という法律で様々な制約を設け、せっかく経営者が一生懸命頑張って儲けた「業績評価利益」から、いくらか会社の中に利益を天引きで貯金しておくことで倒産しにくくし、通常、中長期にわたる借金返済が滞りなく行われるように融資の安全性を高めることを目的として「分配可能利益」に関する決まりが作られました。 ■ 連結単位で考える 一昔前までは、いわゆる配当制限は「親会社の単体決算」に対してかけられていましたが、最近は、「連結決算」に対してもかけられるようになってきています。 最近、「○○ホールディングズ」とか「持株会社」といった言葉をよく耳にしませんか? 昔は、利益操作を行い、グループ連結全体では赤字で、到底株主に対して配当を出せる状況にないのに、親会社の損失を子会社に移して見かけ上だけ親会社を黒字にし、親会社の株主に対して配当を払ったとしても、お咎(とが)めなしだったのです。 しかし、経済状況の変化や法整備が進み、連結主体(複数の法人がグループを形成し、あたかも一つの会社として有機的に機能する集合体)を一つの経済活動単位として監視・監督できるようになり、連結全体でも「分配可能利益」を計算できるようになりました。 ここまで、「利益情報の意味」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します