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■ 起業家 v.s. 投資家

経営管理会計トピック
ソフトバンクの孫氏と楽天の三木谷氏に対する見方が、日本と世界とでは異なる、という記事が掲載されました。

2015/1/7|日本経済新聞|朝刊
(真相深層)三木谷・孫氏、投資で存在感 海外IT企業、相次ぎ出資要請 大型買収・育成に脚光

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます
「海外のIT(情報技術)企業が楽天の三木谷浩史社長とソフトバンクの孫正義社長に熱視線を送り始めた。楽天は月間利用者が2億人を超える対話アプリのバイバーを買収、ソフトバンクは出資する中国の電子商取引最大手アリババ集団の上場で10兆円の含み益を手にしたことがきっかけだ。日本では起業家という位置づけが定着する2人だが、海外では投資家として存在感を高めている。」

論旨をかいつまんで整理していきたいと思います。

■ 内外での評価に差

両氏に対し、世界では、
「世界中のM&A(合併・買収)案件が投資銀行経由ではなく、直接耳に入ってくるようになり、「世界的に著名な投資家」という立ち位置を確立しつつある。」
「世界のIT企業からの出資要請が相次ぐのは、その投資スタンスにもある。ともに取得した株式は長期保有が基本。」
という評価がなされているのに対し、日本では、
「海外では投資家としての認知度が高まっているものの、日本ではいまひとつ。内外の評価の差は孫氏ばかりでなく三木谷氏にもつきまとう。
(省略)ともすれば投資家を色眼鏡で見がちな日本の風土が変わる必要もありそうだ。」
ということなのだそうです。
恐らく、言いたいことは、日本の産業界では、「起業家」「経営者」の評価は高いけれど、「投資家」の評価は相対的に低い、ということらしいです。
孫氏に対する分析は、
「30~40%を保有する筆頭株主として経営に影響力を持ちながらも、経営は任せる。」
三木谷氏に対する分析は、
「楽天と投資先の事業を組み合わせて新しいサービスの提供を模索する。キャピタルゲイン狙いの投資家とは一線を画す点が魅力と映るようだ。」
筆者が新聞記事を読み下した限り、
孫氏は、物言う株主(アクティビスト):投資先企業の経営陣に積極的に提言をおこない、企業価値の向上を目指す投資家、
三木谷氏は、あくまでM&Aを積極活用する事業家、
と見えているということだと思います。
筆者としては、ちょっとだけ違和感があります。というのは、「企業」に出資するのは「投資家」で、「事業」に投資するのは、「起業家」だという色付けだとすると、投資対象が「法人」かどうか、形式だけで判断しているように見えるからです。
投資の本質は、ビジネスリスクをとって、将来キャッシュフローを獲得するだけの勇気ある意思決定と、その成功確率をあげるためのリアルビジネスの運営の妙だと思いますので、形式だけで区別することはナンセンスだと思います。
おそらく、歴史の長い老舗企業のサラリーマン経営者からみると、自らリスクをとって、資金を外部から調達して、新しい事業に投資するオーナー経営者というのを心情的に一段下に見たい、ということなのだと思います。
なにか、野蛮な匂いがして敬遠した、エスタブリッシュメントの誇りが許せないみたいな。。。

■ 「プレミアム」と「ディスカウント」

記事内にて、孫氏が自虐的に言ったセリフとして、「米著名投資家のバフェット氏が投資をすれば『バフェットプレミアム』が乗るが、我々は投資をしても、また冒険をしていると受け取られるだけ。『孫ディスカウント』が働いている」というのがありました。
本当に『孫ディスカウント』が働いているのでしょうか?
何はともあれ、実際にデータを見て確認してみたいと思います。
2015年1月9日15:00現在の株価から、時価総額とPBR(price book-value ratio:株価純資産倍率)を見て、どれだけ、孫氏や三木谷氏が株式市場で市場価値を創出しているのか、競合と比較してみました。
(↓時価総額順位です)
経営管理会計トピック_市場評価_数表 
経営管理会計トピック_市場評価_グラフ
ソフトバンクは、5兆1245億円の市場付加価値を出しています。一方、NTTは、3兆8837億円の市場付加価値(といえるのか?)を破壊しています。これは、親子上場による適正な株価形成が邪魔されているのか、非上場子会社(本当は親会社もだと思いますが)の資本効率の低さが織り込まれているのか、特殊な事情があることが想定されるのですが、KDDIも含めて、業界最大の価値創造を果たしています。
 (※ 市場付加価値 = 時価総額 - 純資産)
楽天は、市場付加価値額で、ヤフーより1894億円も上回っており、PBRも約1.8倍に達しています。
まあ、NTT以外は、東証一部上場平均よりPBRが大きいので、その分「プレミアム」を生んでいるといえましょう。
株式市場の参加者は、きちんと両氏を高評価していると、このデータを見る限りでは思うのですが、読者の皆様のご意見はいかがでしょうか?

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小林 友昭経済動向を会計で読む■ 起業家 v.s. 投資家 ソフトバンクの孫氏と楽天の三木谷氏に対する見方が、日本と世界とでは異なる、という記事が掲載されました。 2015/1/7|日本経済新聞|朝刊 (真相深層)三木谷・孫氏、投資で存在感 海外IT企業、相次ぎ出資要請 大型買収・育成に脚光(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「海外のIT(情報技術)企業が楽天の三木谷浩史社長とソフトバンクの孫正義社長に熱視線を送り始めた。楽天は月間利用者が2億人を超える対話アプリのバイバーを買収、ソフトバンクは出資する中国の電子商取引最大手アリババ集団の上場で10兆円の含み益を手にしたことがきっかけだ。日本では起業家という位置づけが定着する2人だが、海外では投資家として存在感を高めている。」 論旨をかいつまんで整理していきたいと思います。 ■ 内外での評価に差両氏に対し、世界では、 「世界中のM&A(合併・買収)案件が投資銀行経由ではなく、直接耳に入ってくるようになり、「世界的に著名な投資家」という立ち位置を確立しつつある。」 「世界のIT企業からの出資要請が相次ぐのは、その投資スタンスにもある。ともに取得した株式は長期保有が基本。」 という評価がなされているのに対し、日本では、 「海外では投資家としての認知度が高まっているものの、日本ではいまひとつ。内外の評価の差は孫氏ばかりでなく三木谷氏にもつきまとう。 (省略)ともすれば投資家を色眼鏡で見がちな日本の風土が変わる必要もありそうだ。」 ということなのだそうです。 恐らく、言いたいことは、日本の産業界では、「起業家」「経営者」の評価は高いけれど、「投資家」の評価は相対的に低い、ということらしいです。 孫氏に対する分析は、 「30~40%を保有する筆頭株主として経営に影響力を持ちながらも、経営は任せる。」 三木谷氏に対する分析は、 「楽天と投資先の事業を組み合わせて新しいサービスの提供を模索する。キャピタルゲイン狙いの投資家とは一線を画す点が魅力と映るようだ。」 筆者が新聞記事を読み下した限り、 孫氏は、物言う株主(アクティビスト):投資先企業の経営陣に積極的に提言をおこない、企業価値の向上を目指す投資家、 三木谷氏は、あくまでM&Aを積極活用する事業家、 と見えているということだと思います。 筆者としては、ちょっとだけ違和感があります。というのは、「企業」に出資するのは「投資家」で、「事業」に投資するのは、「起業家」だという色付けだとすると、投資対象が「法人」かどうか、形式だけで判断しているように見えるからです。 投資の本質は、ビジネスリスクをとって、将来キャッシュフローを獲得するだけの勇気ある意思決定と、その成功確率をあげるためのリアルビジネスの運営の妙だと思いますので、形式だけで区別することはナンセンスだと思います。 おそらく、歴史の長い老舗企業のサラリーマン経営者からみると、自らリスクをとって、資金を外部から調達して、新しい事業に投資するオーナー経営者というのを心情的に一段下に見たい、ということなのだと思います。 なにか、野蛮な匂いがして敬遠した、エスタブリッシュメントの誇りが許せないみたいな。。。 ■ 「プレミアム」と「ディスカウント」記事内にて、孫氏が自虐的に言ったセリフとして、「米著名投資家のバフェット氏が投資をすれば『バフェットプレミアム』が乗るが、我々は投資をしても、また冒険をしていると受け取られるだけ。『孫ディスカウント』が働いている」というのがありました。 本当に『孫ディスカウント』が働いているのでしょうか? 何はともあれ、実際にデータを見て確認してみたいと思います。 2015年1月9日15:00現在の株価から、時価総額とPBR(price book-value ratio:株価純資産倍率)を見て、どれだけ、孫氏や三木谷氏が株式市場で市場価値を創出しているのか、競合と比較してみました。 (↓時価総額順位です)   ソフトバンクは、5兆1245億円の市場付加価値を出しています。一方、NTTは、3兆8837億円の市場付加価値(といえるのか?)を破壊しています。これは、親子上場による適正な株価形成が邪魔されているのか、非上場子会社(本当は親会社もだと思いますが)の資本効率の低さが織り込まれているのか、特殊な事情があることが想定されるのですが、KDDIも含めて、業界最大の価値創造を果たしています。  (※ 市場付加価値 = 時価総額 - 純資産) 楽天は、市場付加価値額で、ヤフーより1894億円も上回っており、PBRも約1.8倍に達しています。 まあ、NTT以外は、東証一部上場平均よりPBRが大きいので、その分「プレミアム」を生んでいるといえましょう。 株式市場の参加者は、きちんと両氏を高評価していると、このデータを見る限りでは思うのですが、読者の皆様のご意見はいかがでしょうか?現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します