コンサルタントが顧客からプロコン問題・選択肢問題を突き付けられたときの正しい態度とは?

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■ あなたは、顧客や上司から課題解決策の提示を求められたときにどう回答していますか?

コンサルタントのつぶやき

経営コンサルタントを生業にしていると、常にクライアントから質問を受けます。例えば、管理会計制度の再構築プロジェクトにおいて、

「本社費の配賦基準として、A案:在籍人員数がいいか、それともB案:売上高がいいか?」

並みのクライアントならば、「A案とB案のメリット・デメリット対比表を作成してくれ」と作業要求し、同じく並みのコンサルタントならば、一生懸命に与えられた命題に対して、メリット・デメリット表(プロコン表)を作成して顧客の期待に応えようとします。このコンサルタントの対応姿勢のどこに問題があるか理解できますか?

何らかのクライアントからの作業要求、解決施策提案要求について、我々コンサルタントが留意すべきなのは、そのようなお題が内在的に持っているジレンマというか、構造的な落とし穴への対処法を必ず応答に練り込んでおく必要があることなのです。

「A案かB案かどちらが良いか回答をくれ」という類の命題を提示された時、

(1)フレームワーク問題
(2)クライテリア問題
(3)適切性問題(解決性問題)

の3層構造でその命題が成り立っていることを意識して、回答を用意しなければなりません。

 

■ クライアントから提示される命題の3層構造とは?

(1)フレームワーク問題
そもそも、前章で例示した命題は、最初から「本社費」を「配賦」することが大前提になっています。そもそも、何のために本社費を配賦しなければならないのでしょうか? そして、配賦後の原価または損益情報を誰が何の目的で使用するのでしょうか? 命題が与えられたら、それを一生懸命、証明・解答することに傾注してしまう。まさしく、受験勉強におけるテスト訓練の負の賜物です。まずもって、提示された問題の真偽や意図を疑うことを知らないのです。

小職ならば真っ先に次のように、作業依頼に対して質問で返します。
「どういった目的で本社費を配賦しなければならないのですか?」
言外に共通費を配賦して得られた損益情報の資料性にそもそも疑いを持っているからです。

(2)クライテリア問題
命題を疑うことを知らない若手コンサルタントから、次はこのような相談を受けるのが常です。「メリット・デメリットが思いつきません。過去に同じような問題を扱った事例はありませんか?」これも、受験勉強の弊害です。過去問をいくつか解けば、正しい答えが導けるという安直な考え方です。

間接費の配賦基準の選定ポイントとして、例えば、
① 資料の入手困難性や経済性
② 配賦目的への適合性
③ 配賦結果利用の他業務への影響度
など、判断基準・評価基準(クライテリア)を先に考えるべきです。その判断軸は、その該当する命題をそもそも思いついたクライアントの動機(経営課題)、または実行した際の運用難易度、実現した時の関係者のリアクションなど、その命題から一歩引いたところから、命題が包含されるビジネスや経営環境全体から、俯瞰して命題を眺めないと、その命題自身を評価するためのクライテリアを思いつくはずがないのに、、、

(3)適切性問題(解決性問題)
この層まで来て初めて、真正面からメリット・デメリットが何かについて取り組む段階になります。本稿ではその所作全体まで全ては言及できませんが、秘訣を簡単に言うと、

「その結論が経営課題を解決する能力があるか」(課題解決性)
「その解決策が経営課題と直結しているか」(内因性)
の2つを意識するようにしています。

 

■ 解決策や分析手法を知っているとつい使いたくなる誘惑に負けないようにする

管理会計のひとつに「意思決定会計」という分野があり、まさしくA案・B案を比較して、相対的に良案とされる方を選択する技法として、「差額収支計算」というものがあります。例えば、

「その受注は受けるべきか、辞退するべきか」
「外部から購入するか、自社工場で内製するか」など

「(2)クライテリア問題」として、差額収支計算する際の基準として、「キャッシュフロー」「会計的利益」「企業価値」などをまず選択してから、差額収支計算を実行します。若手の人は、差額収支計算を教科書で習ったら、すぐに使いたがります。しかし、その前に、そもそもクライアントが「キャッシュフロー」を問題視しているのか、それとも「会計的利益」を問題視しているのか、それを正しく把握しないと、どんなに複雑で綿密な計算モデルを活用しても、導かれた回答は的外れなものになってしまいます。

しかしながら、キャッシュフローが最適解導出のクライテリアとして仮合意したとして、例えば「その受注は受けるべきか、辞退するべきか」という命題について、キャッシュフローをより多く生み出す方の選択肢「辞退」を正しく選んだとしても、それが顧客の経営課題を真に解決するものとは限らないことに留意すべきです。

その顧客が、従業員の教育不足・訓練不足・経験不足が喫緊の経営課題として認識していた場合、たとえキャッシュフローが悪化するからといって、受注機会を回避したら、従業員の教育機会をみすみす逃してしまうことになってしまいます。それは中長期的に見て、その顧客の市場競争力を削いでしまう結果になりかねません。

「A案とB案のどっちがいいか提案してくれ」と尋ねられて、
「どうしてその命題をいま取り組むべきなのですか?」とか「C案じゃダメなんですか?」という切り替えしができるコンサルタントになれれば、並みの・・・を卒業できると小職は考えるのですが、如何でしょうか。

 

■ (蛇足)仏典にある頓智(とんち)をビジネスに当てはめるのもリスクがありますが、、、

とある仏典にこういうくだりがあります。
「私(兄)には、5歳年の離れた弟が一人います。どっちが先に生まれたか分かりますか?」
普通に考えると、兄の方が5年も先に生まれたと考えるのではないでしょうか? しかしですね、「兄」という存在(概念)は、「弟」がいてこそ成立する相対的な存在という視点を持っていれば、「同時です」という正しい解答を導き出すことができます。

最初の問いを聞いた際に、「あなたは、二人兄弟ですか?」と、さらにフレームワーク問題に対する質問ができれば上出来なのですが。

蛇足の蛇足。
「私には、同時に同じ母胎から生まれた弟が一人います」
「あなたは、双子なんですね」
「いいえ、同時にもう一人妹が生まれていたので、私たちは三つ子です」

皆さんの職場では、こういうのが笑い話にできているビジネス現場であることを心の底から信じてやみません。(^^;)

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