企業会計の基本的構造を理解する(4)「会計主体論」会社は誰のモノで、会計は誰の数字か? - 連結概念の「親会社説」「経済的単一体説」の前座として

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■ そもそも「企業会計」は誰から誰の報告数値なのか、企業観が問われるのです!

会計(基礎編)

「企業会計原則」「会計規則」「会計法規」という会計の世界の成文法(文書の形で会計処理の原理原則や手続きが記述してあるもの)を順次解説していきたいと考えています。その前に、そもそもの「企業会計」の背景に流れる「会計的なものの考え方」をざっくりご紹介するのが本稿の目的です。

「企業会計」は会社の業績や財政状態を財務諸表に仕立てて報告するために守るべきルールや計算手続の集合体です。そうした会計的計算手続のあるべき姿を考える際に、会計報告数値は、会社をどのように見立てているのかによって、計算処理の基礎的構造が変わってしまいます。そこで、一見迂遠のようですが、「会計処理」を考える前に、前提となる「企業観」を決めておく必要があり、こうした一連の議論を「会計主体論」と呼んでいるのです。

つまり、「会社は誰のモノ?」という当たり前の議論をしないと、「報告される『会計数値』はどうやって計算されるの?」という問いに答えられないのです。なぜなら、会計とは、誰かから誰かへの報告のお作法だからです。この「誰」が大事ということ。

 

■ 仕方がない、カビの生えた「会計主体論」の学説をなぞっていきますか

ほぼほぼ、企業(特に株式会社)の歴史に沿って、会計主体も変遷してきました。

財務会計(入門編)_会計主体論

(1)資本主理論
会計数値を作成する、会計報告をする、といった会計の意思主体を資本主(オーナー)とする考え方です。この場合、企業の資産や負債はすべて資本主に帰属します。個人企業の場合はそのまましっくりする考え方ですが、現代の一般的企業形態である株式会社を想定した場合、しっくりとしない企業観です。株式会社における権利義務の帰属主体は法人格を持つ会社それ自体にあると会社法で定められているからです。

ただし、債権者に対する支払利息は費用処理されますが、株主に対する支払配当金は利益処分という扱いの違いから、現在の会計手続きにもこの資本主理論が一部生き残っていると説明する会計学者の方もいらっしゃいます。

(2)代理人理論
産業革命の進展とともに、株式会社制度が整備され、「所有と経営の分離」が一般的になると、企業はオーナー(出資者、株主)の代理人であるという企業観が大勢を占めるようになります。つまり、株主の出資は雇われ経営者に対して拠出金の運用を委託することであり、経営者は受託資金の運用成績をオーナーに報告することによって受託責任(アカウンタビリティー)が解除されることになります。会計は、受託責任解除のための経営者からオーナーに対する報告のためになされるという立場です。

この説を採った場合、細かい話ですが、株主出資額のうち、資本金に組み込まれなかった払込剰余金はオーナー(株主)のものではなく、企業主体のものであるとされます。なぜなら、資本金に該当する金額にだけ、雇われ経営者はオーナーに対して受託責任があると考えるからです。

(3)企業主体理論
企業そのものが実体として認められ、会計主体として、会社を取り巻くさまざまな利害関係者から独立した存在であるという考え方です。資産はすべて企業自体に帰属するとともに、負債と資本もすべて企業の資金源泉として捉えられることになります。

これを「資本主理論」との対比で理解することに務めたいと思います。

「資本主理論」
(資本等式)資産 - 負債 = 資本
・資産は資本主の所有財産
・負債は資本主の負担義務
・資本は、資産と負債の差額として資本主に帰属する持分

「企業主体理論」
(貸借対照表等式)資産 = 負債 + 資本
・資産は企業の財産
・負債と資本は企業活動に運用される資本の調達源泉

(4)企業体理論
これは、上記(3)がより発展し、もともと企業の資産および負債はすべて企業それ自体に帰属すると考えるとともに、企業独自の意思主体性を認め、各種利害関係者(出資者、債権者、従業員、顧客、サプライヤー、課税当局、地域社会など)によって構成される社会的な制度であるという企業観に基づきます。そこでの企業独自の意思主体とは、各種利害関係者との利害調整が目的であり、会計報告は、利害関係者間の利害調整のためになされるものとみなします。

それゆえ、各種の資本剰余金や利益剰余金、準備金などは、株主とは区別された企業体独自の持分として考えることになります。これが後に触れる連結主体の考え方に強く影響を及ぼします。

この企業観では、会社はただ利益追求するだけの存在ではなく、社会的・公的な義務も果たす(納税義務や地域社会の構成員の一員として等)存在ということが強調されます。それゆえ、支払利息の費用処理、税金計算、支払配当金計算などが、それぞれ独自の計算ロジックで算出されることとは矛盾していると批判する会計学者もいます。

(5)資金理論
この企業観は、いわゆる人の集合体としての組織を想起させる「社団法人」より、お金の集合体である「財団法人」を想起させるものです。しかし、取り上げておいてなんですが、この理論から有益な会計的哲学は導かれはしないので、こういう企業観もありますということだけの紹介に留めます。

 

■ 現代的な論点として「連結主体論」が登場!

前章の「会計主体論」は、現在ではあくまで会計理論の世界で取り沙汰させているだけで、そうそう会計実務にまで下りてくることはありません。ただし、こうした企業観・会計主体論が、連結主体として、「親会社説」と「経済的単一体説」として議論されることは頻繁にあります。なぜなら、この理論により、連結財務諸表における科目表示と、連結処理手続きが影響を受けるからです。

現在、日本の会計実務および会計基準では、「親会社説」から徐々に「経済的単一体説」へ移行中です。ぱっきり、日本基準が「親会社説」でIFRSが「経済的単一体説」と別れるものではありませんが、会社法や税法の領域ではより強く「親会社説」の残滓がそこかしこに見て取れます。

連結財務諸表とは、
① 支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団を単一の組織体とみなして、
この企業集団の財政状態・経営成績・キャッシュフローの状況を報告する
ものです。

財務会計(入門編)_連結主体の考え方の違い

「親会社説」
資本主理論から延伸され、連結財務諸表を親会社自身の個別財務諸表が拡大されたものと捉えます。連結財務諸表における株主は、親会社株主に限定され、連結財務諸表の報告相手は、親会社株主に向けてなされます。

「経済的単一体説」
企業体理論から延伸され、連結財務諸表を企業集団全体の財務諸表として捉えます。連結財務諸表における株主は、親会社株主に加え、非支配株主(少数株主)も含めます。連結財務諸表の報告相手は、親会社株主と非支配株主の両者に向けてなされます。

「会計主体論」は、現在では「連結主体論」として学習を進めることをお勧めします。

財務会計(入門編)_企業会計の基本的構造を理解する(4)「会計主体論」会社は誰のモノで、会計は誰の数字か? - 連結概念の「親会社説」「経済的単一体説」の前座として

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