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■ 戦場での組織(軍隊)の運用方法について

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

組織(軍隊)を運用する際に留意すべき点は以下の通り。

① 高い丘の上に陣取っている敵軍に攻め上がったりしてはならない
② 丘を背にして攻撃してくる敵軍を迎撃してはいけない
③ 偽って敗走する敵軍を追撃してはいけない
④ 包囲した敵軍には逃げ口を残しておく
⑤ 故国に帰還しようとする敵軍をさえぎり留めたりしてはいけない

孫子 (講談社学術文庫)

—————–
前篇を承けて、ここでは戦場での敵軍への相対峙の仕方について、べからず集と注意事項が5つ挙げられています。

① 立地の良い相手に対して、こちらから無理に攻めようとしない
孫子の時代には、弩(大きな石弓)は下方の目標を狙撃しやすく、戟(げき)や戈(か)といった長柄の槍のような武器を突き出す勢いも強く、投石の威力も大きいなど、標高の高い場所からの攻撃には大きなアドバンテージがありました。

これを現代ビジネスに例えるなら、ローカル市場へ殴り込むナショナルブランドとか、既存市場に新たに参入しようとする場合には、競合企業の持つ地の利が良い所に、こちらから飛び込むことになるので、よっぽどの勝算が無い限り、これを無理に推し進めようとしないこと、ということになるのでしょうか。チャレンジと無謀とは違うというわけです。

孫子流にいうと、「勝ちやすきに勝つ」「勝てるところで勝負する」。自社が得意な領域・分野での勝負に逆に相手を追い込めばよいわけです。コスト競争力に優れていれば、価格競争に持ち込む、お得意様を多数抱えているならば、既存の優良顧客の財布を狙った新製品を繰り出せばよいのです。

② 有利な退却路を持つ相手とは事を構えない
孫子の時代には、丘を背にして攻撃してくる敵を迎え撃つと、たとえ敵軍を押し返しても、敵は丘の上に退却して高地を占める利点を生かす、つまり①の状況になってしまうのです。

金城湯池の市場を持つ競合企業が、多少自社の市場に食い込んできても、まともに全面的にこれを排除しようと躍起になってはいけません。いつの間にか、相手の有利な土俵に持ち込まれてしまいます。例えば、とある家電で、クラウドとつながるスマート製品の特性を前面に押してくる総合電機メーカーに、こちらも対抗して、クラウド環境を整備して、全面対決に出てしまうとどうでしょうか? 一日の長がある相手の有利は揺るぎなく、こちらのクラウド新規構築への膨大な投資など、一夜にしてムダ金になる可能性があります。相手は、元々IT・通信分野でクラウド環境を運用していたなら、家電を相手にした市場規模から上がる収益では、到底、先行投資分を回収することなどおぼつきません。

ここは、元々自社の強みである家電のデザイン性、機能の新規性(スマート機能ではない何か)、強力な販売チャネル(クロスセルや範囲の経済性が効く品揃えに留意するなどしたね)で勝負してみてはいかがでしょう? 昨今の、闇雲な、横並び意識丸出しのクラウド化、スマート化に警鐘を鳴らすものです。

競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける

③ 罠にはめようとする相手を追わない
孫子の時代でいうなら、負け方や逃げ方が中途半端で、しかも逃げていく前方に、草むらや森林、丘陵や隘路など見通しの悪い地形がある場合には、伏兵の存在を疑ってかかる必要がありました。

これは②にも通じるところが大なのですが、ちょろちょろと、競合企業が自社市場へ低価格路線の商品を投入してきて、それに引きずられて、ローエンドの対抗製品を販売した場合、しかもそれを大々的に拡販キャンペーンを打ってしまうと、高価格帯の自社ブランドに傷がつき、当該市場での高付加価値帯のシェアを一気に落とすかもしれません。これが自社の米櫃(キャッシュ・カウ)だった場合、競合企業は、最初からこの市場への進出を図ったものではなく、自社の資金源を断つことを狙ったものかもしれません。

競争戦略としてのグローバルルール―世界市場で勝つ企業の秘訣

④ 逃げる相手には逃げ口を用意する
⑤ ましてや、国に帰還しようとする遠征軍の行く手を遮らない

この④と⑤は、いわゆる「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」の諺(ことわざ)の通りです。
競合企業をコテンパンに痛めつけて、市場から退出を狙った大攻勢をかけると、それこそ相手は社運をかけて、写真が一致団結して、とんでもない力を発揮して、一発逆転を狙ってくる可能性があります。そんな痛い目に遭うくらいなら、数%ぐらいのシェアは許してあげましょう。むしろ、それくらいの活気があった方が、顧客も市場も盛り上がります。まあ、取り損なっているシェアは広告宣伝費分だとでも思えばいいのです。

数%のシェアならば、そこに対する開発投資にはムダが生じるはずです。相手の資金効率を下げたままにしておくのです。一気に市場から撤退して、集中と選択で強い分野に相手が力を振り向けた方が怖いです。また、数%のシェアならば、向こうから事業売却の話を持ってこないとも限りません。

いずれにせよ、あまり敵を追い詰めすぎないようにして、「勝つべくして勝つ」です。
おっと、某ドラマのサ●マ製作所の社長のセリフみたいになりました。。。(^^;)

最高の戦略教科書 孫子



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孫子 第7章 軍争篇 34 高陵(こうりょう)には向かう勿(なか)れhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)孫子,兵法,戦略,窮鼠猫を噛む,撤退戦略,シェア,競争戦略■ 戦場での組織(軍隊)の運用方法について 組織(軍隊)を運用する際に留意すべき点は以下の通り。 ① 高い丘の上に陣取っている敵軍に攻め上がったりしてはならない ② 丘を背にして攻撃してくる敵軍を迎撃してはいけない ③ 偽って敗走する敵軍を追撃してはいけない ④ 包囲した敵軍には逃げ口を残しておく ⑤ 故国に帰還しようとする敵軍をさえぎり留めたりしてはいけない 孫子 (講談社学術文庫) ----------------- 前篇を承けて、ここでは戦場での敵軍への相対峙の仕方について、べからず集と注意事項が5つ挙げられています。 ① 立地の良い相手に対して、こちらから無理に攻めようとしない 孫子の時代には、弩(大きな石弓)は下方の目標を狙撃しやすく、戟(げき)や戈(か)といった長柄の槍のような武器を突き出す勢いも強く、投石の威力も大きいなど、標高の高い場所からの攻撃には大きなアドバンテージがありました。 これを現代ビジネスに例えるなら、ローカル市場へ殴り込むナショナルブランドとか、既存市場に新たに参入しようとする場合には、競合企業の持つ地の利が良い所に、こちらから飛び込むことになるので、よっぽどの勝算が無い限り、これを無理に推し進めようとしないこと、ということになるのでしょうか。チャレンジと無謀とは違うというわけです。 孫子流にいうと、「勝ちやすきに勝つ」「勝てるところで勝負する」。自社が得意な領域・分野での勝負に逆に相手を追い込めばよいわけです。コスト競争力に優れていれば、価格競争に持ち込む、お得意様を多数抱えているならば、既存の優良顧客の財布を狙った新製品を繰り出せばよいのです。 ② 有利な退却路を持つ相手とは事を構えない 孫子の時代には、丘を背にして攻撃してくる敵を迎え撃つと、たとえ敵軍を押し返しても、敵は丘の上に退却して高地を占める利点を生かす、つまり①の状況になってしまうのです。 金城湯池の市場を持つ競合企業が、多少自社の市場に食い込んできても、まともに全面的にこれを排除しようと躍起になってはいけません。いつの間にか、相手の有利な土俵に持ち込まれてしまいます。例えば、とある家電で、クラウドとつながるスマート製品の特性を前面に押してくる総合電機メーカーに、こちらも対抗して、クラウド環境を整備して、全面対決に出てしまうとどうでしょうか? 一日の長がある相手の有利は揺るぎなく、こちらのクラウド新規構築への膨大な投資など、一夜にしてムダ金になる可能性があります。相手は、元々IT・通信分野でクラウド環境を運用していたなら、家電を相手にした市場規模から上がる収益では、到底、先行投資分を回収することなどおぼつきません。 ここは、元々自社の強みである家電のデザイン性、機能の新規性(スマート機能ではない何か)、強力な販売チャネル(クロスセルや範囲の経済性が効く品揃えに留意するなどしたね)で勝負してみてはいかがでしょう? 昨今の、闇雲な、横並び意識丸出しのクラウド化、スマート化に警鐘を鳴らすものです。 競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける ③ 罠にはめようとする相手を追わない 孫子の時代でいうなら、負け方や逃げ方が中途半端で、しかも逃げていく前方に、草むらや森林、丘陵や隘路など見通しの悪い地形がある場合には、伏兵の存在を疑ってかかる必要がありました。 これは②にも通じるところが大なのですが、ちょろちょろと、競合企業が自社市場へ低価格路線の商品を投入してきて、それに引きずられて、ローエンドの対抗製品を販売した場合、しかもそれを大々的に拡販キャンペーンを打ってしまうと、高価格帯の自社ブランドに傷がつき、当該市場での高付加価値帯のシェアを一気に落とすかもしれません。これが自社の米櫃(キャッシュ・カウ)だった場合、競合企業は、最初からこの市場への進出を図ったものではなく、自社の資金源を断つことを狙ったものかもしれません。 競争戦略としてのグローバルルール―世界市場で勝つ企業の秘訣 ④ 逃げる相手には逃げ口を用意する ⑤ ましてや、国に帰還しようとする遠征軍の行く手を遮らない この④と⑤は、いわゆる「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」の諺(ことわざ)の通りです。 競合企業をコテンパンに痛めつけて、市場から退出を狙った大攻勢をかけると、それこそ相手は社運をかけて、写真が一致団結して、とんでもない力を発揮して、一発逆転を狙ってくる可能性があります。そんな痛い目に遭うくらいなら、数%ぐらいのシェアは許してあげましょう。むしろ、それくらいの活気があった方が、顧客も市場も盛り上がります。まあ、取り損なっているシェアは広告宣伝費分だとでも思えばいいのです。 数%のシェアならば、そこに対する開発投資にはムダが生じるはずです。相手の資金効率を下げたままにしておくのです。一気に市場から撤退して、集中と選択で強い分野に相手が力を振り向けた方が怖いです。また、数%のシェアならば、向こうから事業売却の話を持ってこないとも限りません。 いずれにせよ、あまり敵を追い詰めすぎないようにして、「勝つべくして勝つ」です。 おっと、某ドラマのサ●マ製作所の社長のセリフみたいになりました。。。(^^;) 最高の戦略教科書 孫子現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します