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孫子 第12章 用間篇 62 間を用うるに五有り ‐ 情報源は常に複数用意しておく

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 情報収集の手段を幾重にも準備し、かつそれぞれの存在を秘密にしておく

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間諜(スパイ)の使用方法には5種類あります。
これら5種類の間諜に並行して諜報活動をさせながら、互いにそれぞれが位置する情報の伝達経路を知らさずにいることを神妙な統轄方法というのです。この方法は君主が人民を治める貴ぶべき至宝ともいえるものです。

(1)生間(せいかん)
・繰り返し敵国に潜入しては生還して情報をもたらす

(2)因間(いんかん)
・敵国の民間人を情報源にして諜報活動を行う

(3)内間(ないかん)
・敵国の官吏を情報源にして諜報活動を行う

(4)反間(はんかん)
・敵国の諜報員(スパイ)を情報源にして諜報活動を行う

(5)死間(しかん)
・虚偽の軍事計画を部外で実演して見せ、配下の諜報員にその情報を告げさせておいて、欺かれて諜略に乗ってくる敵国の出方を待ち受ける

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

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現代ビジネスにおいて、産業スパイは法に触れるものなので、ここでは違法行為のやり方を指南するというよりは、企業がどうやってコンペチターからの情報を収集するか、孫子に習って考えてみること、それらの情報ルートの管理方法の秘訣を考えることにします。

情報源をもたらす者をどうやって調達するか。生間と死間はもともと、自陣営の人間を使います。因間・内間・反間は、相手陣営の人間をその時々に買収したり寝返らせたりして、自陣営の諜報活動に利用するものです。因間は、コンペチターの顧客にヒアリングを求めるものと理解すればよいでしょう。内間はコンペチターの従業員から聞き出すこと、反間はコンペチターから派遣されたスパイから聞き出すことで、いずれも現代法に照らせば、コンプライアンス的にNGの可能性が高いと言わざるを得ません。まあ、コンペチターの従業員が出入りする飲み屋で聞き耳を立てたり、あくまで公共の場限定ですが、行先を着けたりする程度が許される範囲でしょう。要は、具体的な所作より、そういう情報収集プランの区分け、使い分けができていることが重要です。

また、機能的分類からすれば、因間・内間・反間・生間は、情報収集を主な役割・目的とするのに対し、死間は、情報操作による謀略活動に従事します。相手からインプットを求めるか、相手の行動をこちらの思う通りに誘導するのか、相手との駆け引きに、情報の使い方に2種類存在することを思い出させてくれる一節です。

死間は、相手陣営に深く入り込んで諜報活動を行い、自陣営の思う通りに相手陣営を動かします。所期の目的を達成すると、相手に潜り込ませた諜報員の身分がばれてしまうので、孫子の時代にはほぼ100%殺されてしまいます。だから「死」間なのです。

現代ビジネスにおいては、これら古代中国の国家間の争いで用いられる諜報活動をそのまま取り入れることは現実的ではありませんが、孫子の諜報活動における留意事項ならば、活かす点もあるというものです。

① 情報収集と情報操作の方法は常に複数用意しておく
② それぞれの情報収集ルートとそれに関与する担当者は個別管理する

①について
常に「プランB」を用意しておくのはビジネス成功の要諦です。それは情報収集活動においても同様です。あれがダメならこれにする。そういう選択肢を複数、情報源を複数用意しておくことが肝要です。

②について
ひとつの情報ルートが相手陣営に存在がばれてしまった場合、全ての情報ルートがつながっていたら、情報取得の手段が一網打尽にダメにされる可能性があります。それゆえ、それぞれの情報源とそれに関与する担当者は、全く別々に管理し、お互いに何をやっているのか分からなくしておきます。そうすることで、「蟻の一穴」状態にさせず、もしばれてしまった場合の傷を浅くしておきます。リスクの分別管理そのものです。

こうして読み解くと、二千年以上前に書かれた兵法書が、未だに組織運営、組織間競争のお手本になることの出来のよさ、素晴らしさに改めて感嘆するものであります。

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