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ビジネス遺産として電通「鬼十則」と、思わずあるあると言ってしまう「裏十則」

所感
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■ 大切な生命がかかっているのは理解できますが、言葉狩りで命は戻ってきません!

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

過労死でお亡くなりになった方については謹んでお悔やみ申し上げます。法令違反があれば適正に罰せられるべきで、労働現場の監督者はよりよい労働環境の整備に全力を尽くさなければなりません。

一方で、遺族の方が強く非難されていらっしゃる、昭和の匂いが色濃く漂うモーレツ社員の鑑とでもいうべき「社訓」を廃止(少なくとも来年度配布予定の社員手帳から削除)しようという動きがあるとも報道されています。

ここでは一度冷静に落ち着いて、その「社訓」である「鬼十則」(昭和26年制定)について、ご紹介したいと思います。マスコミ報道では全文すべてをきちんと紹介もせずに、今回の労働強化の遠因となった文言についてのみ、取り上げている所もあるので、まずは沈着冷静・中立的にすべてにまず目を通してみませんか?

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2.仕事とは、先手先手と働きかけて行くことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己を小さくする。
4.難しい仕事を狙え、そしてそれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…。
6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきがある。
7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.摩擦を恐れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 

Dentsu’s 10 Principles(英語版「鬼十則」)

1. Create projects on your own instead of waiting for work to be assigned.
2. Always take the initiative on your projects. Do not wait for directions.
3. Search for large and complex challenges. Small and trivial projects will debase you.
4. Tackle difficult assignments. Progress only lies in accomplishing a difficult mission.
5. Never give up on your task. Treat it as if it was your own life with utmost determination and responsibility.
6. Lead by example. Leading rather being led makes a huge difference in the long run.
7. Set long-term goals. With the right amount of effort, patience and creativity, they will bring hope for the future.
8. Be confident. Confidence will give your work edge, persistence and boldness.
9. Keep your head up and your eyes wide open. Never drop your guard, even for a moment. This is the nature of providing service.
10. Embrace confrontation. If you don’t, you will regret it. Confrontation is the mother of progress and the source of aggressive entrepreneurship.

鬼十則 – 吉田秀雄記念事業財団 より引用

第5条の「取り組んだら放すな、殺されても放すな」が、過酷な労働環境を生む素地となり、過労死の遠因となったと非難されています。

英訳では、「Never give up on your task. Treat it as if it was your own life with utmost determination and responsibility.」となっています。

いたずらに、「Never give up」と言えなくなる風潮も、それもまた病んだ社会なのではないでしょうか?

 

■ ビジネスパーソンあるある!「裏鬼十則」とは?

これに対し、元電通マン(経営計画室)の吉田氏がご自身のブログで自作のパロディを披露されています。

1)仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2)仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3)大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4)難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5)取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6)周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7)計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8)自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9)頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10)摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

裏十則 | Blog | nozomu.net – 吉田望事務所 – より引用

言葉狩りにばかり走るのではなく、これぐらいの諧謔と余裕の心をもって毎日の仕事をしたいものです。

 

■ 「膾に懲りて羹を吹く」ばかりでは社会は委縮してしまいます。

最近、座って本を読む二宮金次郎像が話題になったり、とある外食チェーン(上例と同様、過労による自殺として労災認定)の社訓で「365日24時間死ぬまで働け」が批判されていたり、同様のたたきが横行しています。本当に、遺族の方にはお悔やみ申し上げたい気持ちでいっぱいなのですが、マスコミや一部の有識者が、その企業の一部分のみを取り出して、一方的に「ブラック企業」だと、非難することは行き過ぎというか、思慮が足りない行動だと思います。

「鬼十則」は、筆者からすれば、日本産業界のビジネス遺産のひとつだと思います。松下幸之助氏の『道をひらく』、稲森和夫氏の『生き方 人間として一番大切なこと』も目を通すのに価値ある一冊だと思います。

過労死やその遠因の長時間労働は、これからのライフワークバランス重視の世の中では、適正に管理・解決されるべき課題のひとつです。そのことと、先人の尊い言葉や魂のこもった訓示は、それを受け止めた人の解釈ひとつで、毒にも薬にも、そして何の役にも立たない無用の長物にもなり得る言葉を、一方的な非難で隠蔽しようというのは、健全な社会の有り様ではないような気がします。

最後に重ねて申し上げますが、過労死された方と遺族の方へのお悔やみの気持ちを持ったうえで、多くのビジネスパーソンの道標になる『お言葉』への敬意と訓戒の気持ちを持つことも大事なことではないでしょうか?

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