行き過ぎたクライアントファーストは本当に存在するのか? - 過剰品質と長期部品供給を例にして

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■ 顧客本位にはしかるべき限界があるのだろうか?

私が風聞で伝え聞いたお話ですが、こういうことがありました。お客様訪問と社内会議がかち合ったときに、先にお約束していたお客様訪問の方を優先して、社内会議の欠席届をだしたところ、上司から「あいつのは、行き過ぎたクライアントファーストだからな」と茶化して周囲の人間にお話しされていました。当然、私はそれを聞いて憤慨したのは言うまでもありません。

須らく、私企業、いいえ公の行政組織といえども、顧客や住民の都合や要望が最優先で取り扱われる必要があります。上記の例では、先約である顧客とのアポイントメントを優先することが、一点の曇りもない、真のクライアントファーストの実現形です。そこには、「行き過ぎた」などと揶揄される理由はどこにもないのです。

誠心誠意、お客様に尽くすことこそ、ビジネスの基本であると断言します。かのドラッカーも「事業の目的とは顧客の創造である」といっているではありませんか。

お客様あってのビジネスであり、企業の存在価値とは、顧客への価値を届けることであり、財やサービスを通して実現されるのです。そういう価値観の中で、顧客との先約より社内会議を優先しないことを揶揄される組織は、早晩傾くことでしょう。

これはビジネスパーソン個々人のマインドの問題であり、と同時に、会社・組織の基本方針の問題でもあるのです。

では、強いて言うと、クライアントファーストにもしかるべき限界や制限は想定できないのでしょうか?

 

■ 長期部品供給のコスト倒れは本末転倒である!

逆に、「お客様は神様です。絶対服従です」とは決して考えていません。私も一人のコンサルタントとして、クライアントからいろんな要望を出されたとき、それがクライアントのためにならないと思ったら、堂々とやめるべき、こっちの施策の方が適切であると、アドバイスすることを避けません。それが短期的に、直面するクライアントの不興を一時的に買うことになっても、中長期的には必ず理解して頂き、長期の信頼関係構築につながるからです。

しかし、世の中には「NO」といえないビジネスパーソンが多いようです。例えば、部品改廃のお話。明文化された長期供給契約もないまま、お客様が必要としているからと、いつ出庫されるかもしれない部品をそれは気が遠くなる間、倉庫にいくつも眠らせているケース。そして、そういう場合、決まって顧客採算としては赤字になっていることが往々にしてあります。

これは逆に、お客様にとっても中長期的にはよくない事である可能性があります。お客様がその部品を必要とするビジネスが、こちら側が採算度外視で部品供給しているからこそ成り立っているビジネスであるとしたら、本当の意味でお客様は価値創造をしていないビジネスをいつまでも惰性で続けていることになります。これは、お客様の経営資源について機会損失が発生している可能性大です。

さらに、部品供給側の赤字によって支えられているビジネスは、供給者側の経営判断でいつでも供給ストップになる可能性をはらんでいます。つまり、お客様のビジネスが供給者側の論理で急に停止するリスクをはらんでいるのです。

それゆえ、Win-Winで共にビジネスを盛況にしていくなら、長期の部品供給にかかるコスト的・技術的な相応の負担をお客様に求めていく姿勢がどうしても必要になるのです。

 

■ 過剰品質はお客様のビジネスの破壊の種になる!

また、お客様からあれもこれも、要求事項が積み上がり、過剰ともいえる品質や機能になってしまう製品/サービスを供給してしまうことも良くあります。BtoBtoCの場合、最終顧客の便益まできちんと考えた時、目の前のお客様の要求が過剰で、そのビジネスの永続性と収益性が見通せない場合、勇気をもって進言すべきです。「その要求は過剰なもので、お客様のお客様が本当に求めているものなのですか?」と。

過剰品質は高コストの元になります。高コストは、誰かの負担になります。製作者負担だったり、供給者負担だったり、最悪の場合は、最終顧客負担だったりします。最終顧客が過剰品質のものを高コストで負担させられたら、その最終財の市場はなくなってしまうか、代替財の市場に取って代わられることでしょう。

そうなると、製作企業も供給企業も市場を失い、共倒れになる可能性大です。

それゆえ、お客様の言いなりになることが、必ずしもビジネスにとっていいこととは限らないのです。

 

■ 社内行事を優先する組織の行く末とは?

翻って、冒頭の「行き過ぎたクライアントファースト」のお話。

社内行事を優先することが、回り巡って、目の前の顧客のためになるとそう断言できる場合のみ、社内会議を優先すればいいでしょう。しかし、そういうふうに、自信をもって、あなたは言い切れますか?

その社内会議が、アポイントメントを先に取っていた顧客を含めた大勢のお客様に共通の重大な問題を解決するために、関係者一同が集まって、問題解決の策を練るためのどうしても必要不可欠な会議だとしたら、そこは目を瞑って、お客様に正々堂々と、理由を断って、アポイントメントをずらせばいいでしょう。しかし、アポイントメントをずらすのに、言い訳として違う理由を持ち出したり、正直に社内会議のアジェンダを先方に伝えることができないとしたら、それは「アウト」なのです!

組織が大きくなると、管理者は顧客と対面するより、部下(社内の関係者)と対面する機会が多くなります。人間というものは、対面している人とのコミュニケーションで自分の価値観や重要課題の優先順位についての判断を結構左右されるものです。それゆえ、現場主義、大事なことですね。経営トップは役員室から出て、顧客回りを絶やさないようにしてほしい。それが難しいなら、自社の作業現場に出て、現場担当者の声をできるだけ聞くようにしてほしい。それゆえ、私の理想とするトップの一人は土光敏夫さんなのです。

顧客不在の意思決定や論理がまかり通る組織は、早晩、顧客からの支持を失い、必ず市場から退出を余儀なくされることでしょう。

私が、経営コンサルタントとして守っている原理原則はそうそう多くはありません。その中での優先順位が極めて高い「クライアントファースト」。私は、自分自身の言動の全ての適不適の判断基準を「クライアントファースト」に置いています。そこには、決して、「行き過ぎたクライアントファースト」は存在しません。

過剰品質も、コスト倒れの部品長期供給も、「行き過ぎ」ではなく、「間違った」クライアントファーストなのだ、とここに断言しておきます!

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