■ 管理会計は本当に経営の役に立っているのか?
私は、「管理会計」が個人的に最大の趣味であり、ビジネスキャリアとしても最も長く、現在の職業としています。そして、人によって「管理会計」の定義が異なり、「管理会計」に対する思いもそれぞれであることも知っています。それゆえ、これから吐露する「管理会計」に対する思いは、あくまで個人的な意見であることも自覚しています。
私が「管理会計」に出会って現時点で26年が過ぎました。四半世紀以上も、管理会計学の学徒として、管理会計の実務家として、管理会計のコンサルタントとして、26年過ごしてきた個人的な考えとは、いささか極論に聞こえることを承知で申し上げると、
(1)「管理会計」は大して経営の役に立たない
(2)「管理会計」よりも経営やビジネスに重要なことはたくさんある
(3)「管理会計」は使う人のレベルにあったものにすべきである
(1)「管理会計」は大して経営の役に立たない
ビジネスにおける勝利の方程式があるとしたら、経営学の大家であるドラッカー氏が言うように、「顧客の創造」の一言に尽きると思います。これは氏の「企業の目的とは?」という自問自答に対する答えでもあります。そして、「企業の目的は利益を上げることではない。結果として利益がついてくるのだ」という言説にも大いに賛成するところです。
つまり、「管理会計」を使って、細かいセグメントでどれくらい儲かったか、を把握できるようになったとしても、それは企業活動の結果をより詳細に見ているだけで、その数字ができる前に、既に企業の目的も達成されているし、勝利したかどうか(結果として儲かったかどうか)は、既に定まっていると思っているのです。
(2)「管理会計」よりも経営やビジネスに重要なことがたくさんある
結局のところ、「管理会計」で把握できると考える会社内における諸所の活動の数字は、あくまで結果であり、どういう活動をしたらいいか、結果としての利益を得るために、考えるべきことは、マーケティングやイノベーション、効率的なオペレーション等だと思うのです。それは、「管理会計」で結果数値を眺める前に、リアルに現場でビジネスをやっている人なら、肌感覚で分かっているのではないか、そう考えています。
(3)「管理会計」は使う人のレベルにあったものにすべきである
「管理会計」の領域では、予算管理、原価管理、収益性管理、財務管理等、企業内の様々な計数、特に金額換算された数値を扱います。では予実管理を引き合いに出して説明しましょう。詳細な予実管理したから高収益体質になるのではなく、高収益体質になるために、予実管理をするのです。では予実管理とは何か?
これは、あくまで個人的な見解ですが、
「社会的意義と投資収益性が相応にあるビジネスプランを立てて、そのビジネスプランの成功要因や成功の程度を知ることで、当初のビジネスプランを結果評価し、次のビジネスプラニングに活かす」
事だと考えています。それゆえ、自分自身が理解できる、納得できるビジネスプランのストーリーを会計的数字で認識できる必要があります。つまり、四則演算しか分からない人には、加法・減法で、微積分が分かる人には極限値で、理解できる数値を示してあげる必要があるということです。背伸びをして、同業や他業種の成功していると考えられる企業で実践されている「管理会計」の仕組みをものまねしただけで、自社の成功がもたらされることは決してないでしょう。
先端技術の革新で競っている会社は、どうやったら新技術をどこよりも早く開発し、製品化できるかが重要成功要因(CSF、KSF)であり、コモディディ商品を取り扱っている会社は、どこより生産効率を上げたり、物流やマーケティングの工夫でお客に手に取ってもらいやすさで勝負すべきなのは自明の理でしょう。
最後の一言、
「経営に一番大切なことは、自社にとっての重要成功要因が何かを見抜くこと。管理会計はその目利きの検証程度にしか役立たない」
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