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業務プロセスの管理(3)生産ラインの生産性・効率性・収益性を評価できるようになるためには

経営管理_アイキャッチ組織管理(入門)
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生産性を考える例にふさわしい例について

モノの移動と完成に向けた変化が目に見えるので、ハードウェアの生産工程が一番、作業工程(生産工程)の在り様を説明するのに都合がよい事例になります。今回から、ハードウェアのものづくり工程を例に、高い生産性をもたらす作業管理、工程設計を考えています。

前回、ずんだ餅ときなこ餅をつくる食品工場を例に引きました。今回も同じくこの餅工場でバランスの取れた生産工程とは何かを見ていきます。よくある教科書は、より現実的な数字を使ったほうが現実味があるとして、例えば、餅工場だと、日産〇〇個、月産〇〇万個という数字例を出しますが、このシリーズでは、考えられる限り、小さい数で例を作ります。いたずらに大きい数を用いても、頭の中での検証のための計算に手間取るだけなので。

食品工場の工程のあらまし

この食品工場では、2工程、「餅こね工程」「粉つけ工程」、2製品、「ずんだ餅」「きなこ餅」から構成された生産ラインを想定します。「餅こね工程」と「粉つけ工程」は直列で連結されています。工程を直列でつなぐということは、「粉つけ工程」の1日とか時間当たりの作業量は、「餅こね工程」のアウトプット(こねられたお餅)の数に依存してしまい、制約を受けるということを忘れないでください。この工場で働く従業員の質や数、間接部門の存在は、必要に応じて後から例に加えていきます。

食品工場のあらまし

上図のように、1日当たりの市場需要が、ずんだ餅×1個、きなこ餅×1個だったとすると、食品工場側も、1日当たりの生産をずんだ餅×1個、きなこ餅×1個だけに限定すれば、無駄を生じさせることなく総需要数と製品ミックス(製品アソートメント)に対する顧客ニーズを満たすことができます。

生産ラインにおける生産性とは

生産ラインを準備するのにもコストがかかるので、準備している生産能力を余すことなく使い切ることが、儲かる生産ラインの設計ということになります。ここで、「儲かり体質になる工程設計」で大事な3つのポイントを復習します。

生産ラインに投下しているリソースが一定である場合、その生産ラインからのアウトプットが増えることは、「生産性」がより高いことを意味しています。それは銀行預金と似ています。1万円を預金して、預金利率(年利でかつ単利の場合)が1%だと、100円の利息が付いてきます。預金利率が10%になれば、1,000円の利息が一年後につくことになります。このことから、「生産性」はアウトプットの量を測定することで明らかになります。

食品工場の生産性

上図では、食品工場の中に「ずんだ餅」生産ラインと、「きなこ餅」生産ラインの2つが併存する状態を示しています。同じだけの機械設備と担当者を配備しているのにもかかわらず、ずんだ餅は2個、きな粉餅は1個の生産高とアウトプット基準で差がでています。ここから、ずんだ餅の生産ラインのほうが「生産性」は高い、といえます。

生産ラインにおける効率性とは

次は、生産ラインの「効率性」を見ていきます。

食品工場の効率性

上図を見る際に、ひとつ要注意事項がありまして、大前提として、ずんだ餅の生産ラインときなこ餅の生産ラインをそれぞれ構築するのに、同じだけのコストと経営資源を使っていることです。この前提は、どちらも同じお金をかけて、同じ生産能力(2個)を保有していることを意味しています。

そのうえで、きなこ餅の生産ラインには、餅をこねる工程には、1個分しか蒸したもち米が投入されなかったとすると、きなこ餅の生産ラインは、2個作る作業能力があるのにもかからず、1個しかきなこ餅を作れない状況に陥ります。この無駄にした生産能力の分だけ、きなこ餅の生産ラインは、おなじリソースが投入されたずんだ餅の生産ラインと比較して、効率性が悪い(=言い換えると、ずんだ餅の生産ラインのほうが効率性がよい)ということができます。

これも、銀行預金を例にとって説明することができます。1万円を預金して、それが1年後に100円の利子を生むとしたら、100円÷1万=1%(利率)ということになります。これが、1年後に1,000円の利子を生むとしたら、1,000円÷1万円=10%(利率)という利回りになるということです。効率性はこの利回りの差と同じ意味を持つのです。

生産ラインにおける収益性(その1)

今度は、それぞれの生産ラインの収益性を見ることにします。

食品工場の収益性1

ずんだ餅の生産ラインも、きなこ餅の生産ラインも、等しく1個当たりの生産コストは10円と仮定します。それぞれ、2個の生産能力を持ち合わせていますので、@10円×2個=20円という生産ラインの運営コストがかかるとします。

(注1:管理会計の分野における、固定費、変動費、共通費、個別費、限界利益などの概念を知らなくても生産ラインの採算性が把握できるように簡便な例で説明をしています。これらの概念の組み合わせをより詳しく知りたい方は、本ブログの「管理会計(基礎編)」「意思決定会計(入門編)」をご覧ください)

(注2:会計の世界では、「収益」は一般的に「売上」のことを意味います。いわゆる「利益(profit, earnings)」「損益」と「収益(Revenue)」は、対価としてのコストを含むか含まないかで大きく異なることになります。ただし、「収益性(profitability)」という経済資源のインプットからアウトプットが産出される交換レート、代替率を意味するように、「性」という言葉がつけられると、途端にコスト(=投入された経済的資源の多寡)を含む概念になります。それは、英語が「profitability」という「profit(利益)」という言葉の派生語になっていることからも推測できます。まったく、日本語への誤訳以外の何物でもありません)

それぞれのお餅を1個作り出すために必要なコストは等しく@10円かかるとしています。両者の差異は販売数だけになります。2個の生産能力を持っているのに、それを活かし切れていないずんだ餅の生産ラインはその分、損をしていることになります。したがって、収益性の点では、ずんだ餅の生産ラインの方に軍配が上がります。

生産ラインにおける収益性(その2)

今度は、もう少し例を複雑にします。これまで、ずんだ餅ときなこ餅の市場価格(売価)は同じだとしていましたが、この例では、ずんだ餅は20円、きなこ餅は90円で販売できるものとします。

食品工場の収益性2

この場合、生産性と効率性に劣るきなこ餅の生産ラインが逆にずんだ餅の生産ラインより収益性が高くなります。なぜなら、ずんだ餅の生産販売のために所要したコストは合計で20円、きなこ餅の方も同様に20円なのですが、期待できる売上高が、ずんだ餅は40円、きなこ餅は90円です。同じコストがかかっているのに、売り上げがより大きいほうが、利益もその分だけ大きくなるからです。

(注3:事例をシンプルに考えるためにコストは、材料費、人件費、設備投資、変動費、固定費などの区別をしないトータルのものと考えます)

これを理解するのにミクロ経済学の考え方を借用してもいいかもしれません。ずんだ餅の生産ラインも、きなこ餅の生産ラインも、それぞれ、設備投資と担当者を配備することで、2個の完成品(顧客に販売するお餅)を生産する機会を手に入れました。しかし、その機会を活かすためには、実際に商品(お餅)が売れないと話になりません。

ずんだ餅の方は、生産能力めいいっぱいの売上を得ることができたので、生産ラインへの投資をすべて回収できたことになります。2個分の投資をして、2個分の売上を上げることができました。先行投資分からいっさいの無駄が生じなかったのです。その一方で、きなこ餅の方は、2個分の生産能力に先行投資したのですが、1個しか生産・販売することができませんでした。

しかし、問題は、生産(=販売)数量の大小より、実際の実入り(販売金額)になります。

機会損失(機会費用、機会コスト)という概念がミクロ経済学にはあります。とある経済的支出は、実際にそれにかかったキャッシュアウト額の大小で評価するのではなくて、他に得られたであろう経済的利得をあきらめざるを得なかった金額の大小で測るメカニズムのことです。

ずんだ餅の生産ラインに投下された経済的資源の金額的測定は、ずんだ餅の生産能力獲得のためにかかった@10円×2個=20円です。これは、実際のキャッシュアウト分だけで計算されています。もし、同じ20円をかけて、きなこ餅の生産ラインを構築したとしたら、いくらの儲けが出たかを考えます。

きなこ餅の期待損益=@90×1個 – @10×2個=70円

この金額はそのまま、きなこ餅のビジネスを諦めたときに入手することを断念する価値と等しくなります。したがって、ずんだ餅の生産ライン構築にかかった本当のコストは、ラインごとの本当の収益性を見出すためには、

ずんだ餅の生産ラインの真のコスト:
=生産ラインの実際の構築コスト+ずんだ餅の生産ライン構築のために諦めた収益機会
=(@10×2個)+(きなこ餅ビジネスからの期待利益 – ずんだ餅ビジネスからの期待利益)
=20円 + (70円‐20円)
=20円 + 50円
=70円

となります。

同様に、

きなこ餅の生産ラインの真のコスト:
=生産ラインの自裁の構築コスト+きなこ餅の生産ライン構築のために諦めた収益機会
=(@10×2個)+(ずんだ餅ビジネスからの期待利益 - きなこ餅ビジネスからの期待利益)
=20円 + (20円‐70円)
=20円 + ‐50円
=‐30円

となるのです。

機会損失または機会コスト込みの採算を実際に計算してみる

ずんだ餅の生産・販売を実行すると、生産ラインの運営コストが20円かかります。きなこ餅のビジネスを諦める機会コストが50円上乗せされて、トータル70円となります。これを販売数量2個で割ると、1個あたり@35円での販売で収支トントンという計算になります。

実際に計算してみます。

ずんだ餅の利益:
=売上‐ライン運営コスト‐機会コスト
=(@35円×2個)‐(@10円×2個)‐50円
=70円‐20円‐50円
=0円

一方で、きなこ餅の生産・販売を実行すると、生産ラインの運営コストは同じく20円で、これにずんだ餅のビジネスを諦める機会コストが‐50円上乗せ(マイナスなので実際は差し引かれる)されて、トータル‐30円となります。こちらは販売数量が1個なので、販売金額=販売単価となります。1個当たり‐30円の販売で収支トントンとなります。

実際に計算してみます。

きなこ餅の利益:
=売上‐ライン運営コスト‐機会コスト
=(@‐30円×1個)‐(@10円×2個)‐(‐50円)
=‐30円‐20円+50円
=0円

機会損失・機会コストの使用法としては、

  1. ずんだ餅ときなこ餅の生産ラインどちらか一方にしか設備投資できない場合の判断基準
  2. 回避不可能な固定費(キャパシティコスト)による埋没原価(サンクコスト)の検証

が代表的です。②はこの「組織管理(入門編)」の範疇を超えるので、興味のある方は本ブログの管理会計の記事を参照してください。

なかなか生産管理における工程設計の話に入れないでいるのですが、この辺の工程の生産性、効率性、収益性(採算性)を評価するためのツール(指標)の成り立ちを理解しておかないと、生産性、効率性、収益性の高い工程設計ができるはずがないので、くどいくらい基本から説明してみました。類似解説記事にはない視点からの説明、気に入っていただけたでしょうか。^^)

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(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、過去及び現在を問わず、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

業務プロセスの管理(3)生産ラインの生産性・効率性・収益性を評価できるようになるためには

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