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同性婚、全米で合法 / ウェルズ・ファーゴのCM

新聞記事・コラム
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■ 「人権」擁護は「ROE」向上と同じくらい企業にとって大事なモノ

コンサルタントのつぶやき

いいタイミングで2つの新聞記事が順に掲載されました。企業も社会の公器のひとつ。存在を許してくれている社会の中でどう立ち振る舞うか、その姿勢が常に問われます。

2015/6/27|日本経済新聞|朝刊 同性婚、全米で合法 連邦最高裁「禁止の州法、違憲」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は26日、同性婚は合衆国憲法の下の権利であり、州は同性婚を認めなくてはならないとの判断を下した。これにより全米で同性婚が合法となる。最高裁が同性婚そのものを容認したのは初めてで、米社会を二分してきた論争は法的に決着することになる。」

こうした「人権」擁護と「宗教」信仰は、一部で鋭く対立することがあります。

2015/6/27|日本経済新聞|朝刊 オバマ氏「大きな一歩」 同性婚容認、政権に追い風

「合法化の背景には世論の後押しがある。米紙ニューヨーク・タイムズとCBSテレビが6月10~14日に実施した世論調査では米国民の57%が同性婚の合法化を支持した。
 ただ、キリスト教右派などの保守派には反対論が根強い。宗教上の理由から同性婚カップルの受け入れを拒否する教会や結婚式関連の業者も少なくない。世論調査によれば、保守派の共和支持層が反対、民主支持層が賛成するという構図で、同性婚問題は大統領選の争点の一つになっている。」

 

■ 従来は、「宗教」は「科学」とも対立していました

「生命倫理」の問題など、「代理母出産」や、「iPS細胞」による各種「遺伝子治療」や「予防医学」について、バイオサイエンス企業や、医療機器製造企業、現代では、それらの研究にAIやビッグデータ解析などが用いられるのが一般的になったため、IT企業までもが、「宗教観」に基づく、「生命倫理」の問題について、大きな論争に巻き込まれています。

常に、最先端の科学技術で社会を良くする、ということは、従来の価値観・世界観を逆に打壊すことにもつながります。しかし、そもそも近代科学は、ヨーロッパにおいて、「キリスト」への信仰心を証明するために、宇宙の完全性を証明しようと発達してきました。この種の逸話は、ケプラーで代表させましょう。

ケプラーは、神が創り給うた宇宙は完全・整然と構成されているものであり、天体は真円に基づく運行をしていることを、観測により証明しようと汗をかきました。ところが、その努力はむなしく、真逆の方向で自分の正しさを証明してしまいます。

以下がケプラーの法則として有名なもの。

第1法則(楕円軌道の法則)
惑星は、太陽をひとつの焦点とする楕円軌道上を動く。
第2法則(面積速度一定の法則)
惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積は、一定である(面積速度一定)。
第3法則(調和の法則)
惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する。

なんと、惑星(天体)は、真円活動をしていなかった。ここから、近代科学が始まりますが、と同時に、「宗教」への「信仰」と「科学」が示す「真実」がどんどんかけ離れていくことにもなりました。

 

■ 次に、現代では、「宗教」は「人権」とも対立しはじめました

キリスト教(厳密には旧約聖書)では、神が「アダム(男)」から「イブ(女)」が生まれ、その経緯から、「男」と「女」は両性として、著しく異なる者(この辺詳しい人は、いかに女性がだめで、男性とは違うと、キリスト教では強調されていることをご存知でしょう)として位置づけられています。そして、結婚(両性が結ばれること)することで、完全体に戻る、とされています。

一方で「人権」、「人間としてそもそも有している社会的権利」「自由権」「人格権」など。ホッブス、ロック、ルソー、カントあたりから、国家から侵されない「自由意思」「私権」を「社会契約説」のコンテクストから生み出しました。その国家を代表とする何人からも侵されない神聖なものとして「人権」が位置づけられることになりました。

「国家(ここでは政府としておきましょう)」の他に、同じく社会を構成する組織として「企業」も当然の帰結として、「人権」は侵すべからざる神聖なモノとして尊重すべき対象となります。

しかし、冒頭で触れました、「人権」尊重 の思想から生まれてきますこの「同性婚」というものは、宗教的見地からは、存在自体が許せないものとして否定されるべきものという位置づけになっています。

 

■ 「LGBT」に対する企業の姿勢

このブログは、会計・経営を主なトピックとするものなので、そろそろ企業活動についての言及に入ります(ここまで前置きが長すぎました)。

2015/6/25|日本経済新聞|夕刊 (ウォール街ラウンドアップ)ウェルズ・ファーゴの「躍進」

「米金融界で一気に存在感を高めたウェルズがいま論争の渦中だ。4月から流すテレビ・コマーシャルがきっかけだ。
 あるカップルが耳の不自由な女の子の孤児を養子に迎え入れるのに備えて、手話の習得に励むという内容。家族が増えたらウェルズ・ファーゴへ――。こう訴える1分ほどのイメージ広告だ。
 動画サイトのユーチューブでも視聴できる。心温まる異例のCMに映るが、一部で猛反発を招いた。登場するカップルが2人とも女性だからだ。
 米国のある保守系キリスト教団体は6月、支持者に呼びかけた。「ウェルズをボイコットせよ」。まずは団体の預金を全額引き出し、他行に移し替えるという。
 どこの国も銀行は社会的、宗教的、政治的な問題に表だって関与するのを好まない。だがウェルズは「異論は覚悟のうえ。LGBT(性的少数者)は大事な顧客だ」とCM続行を宣言した。」

まずは、その動画を見て頂きましょうか?

広告としては、大変よい作品だと思います。人間が持つ友愛・慈愛など、本来的に有する良心に訴えかけるものがあります。

しかしながら、マーケッター/クリエーターとしてこのイメージ広告をつくった人たちの才能には脱帽しますが、個人的な感想としては、「あざとい」という印象をぬぐえません。「人権」尊重は、それ自体が否定できないコンセプトになっています。しかし、そのことを、価値観が分かれている論争対象、

(27日の新聞記事より)
「合法化の背景には世論の後押しがある。米紙ニューヨーク・タイムズとCBSテレビが6月10~14日に実施した世論調査では米国民の57%が同性婚の合法化を支持した。」

と、社会的に過半数をやや上回る程度のものを、人間が持つ善性に訴えて、広告に利用するのは、ちょっとやりすぎ感があると思います。

企業のCSR活動は、社会のためにどう貢献して、企業が社会の中で存在を許してもらえるかが重要で、社会がもつ価値観を利用して、自社のイメージアップを図るものではないでしょう。

少なからず、こうした反発が起きかねない事象については、もう少し落ち着いた姿勢で広報担当は挑んで頂きたいと思います。

「「銀行はお得な金利や手数料を宣伝していればよい」と「一線を越えたウェルズ」のボイコットに賛同する意見もある。ボイコットの呼びかけはフェイスブック経由。そのフェイスブックはLGBTに優しい企業の一つで、その「矛盾」を皮肉る向きもある。」

(ちなみに、この投稿を書いた筆者のLGBTへの個人的な判断とは無関係に、あくまで企業活動の進め方についてのコメントのつもりです。「同性婚」自体について、ここでは賛意も反意も示すつもりはありません。)

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