コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(34)レッテルの法則 - 目につくものの背後を見よう

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■ 目につくもののの背後を見よう

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら

ワインバーグ氏が前回明らかにしたのは、クライアントに「なぜの呪い」をかけて、事実を効率よく収集する方法、「なぜ」「なぜ」「なぜ」を繰り返し説くことで、クライアントの現状ヒアリングを上手にこなすやり方でした。これは、効率よく情報収集できるだけではなく、クライアントの心証までよくなるという副次的効果までもたらされることを我々は見てきました。

ただし、事の本質はその先にまだ待っています。それは、事実の背後に横たわる原則をどうやって見破ることができるのか、ということです。事ここに至っても「なぜ」は強力なツールであり続けるかもしれません。なぜなら、クライアントから「なぜ」という質問を投げかけて、ことの「原理」まで聞き出して、それをそのクライアントの問題に適用すればいいからです。しかし、通常は「なぜ」という問いかけを繰り返すだけでは、現実的には「原理」に辿り着くような回答を得るのは難しいようです。

 

■ レッテルの法則

ここでまた、ワインバーグ氏の体験談をご紹介します。友人と友人が好きな馬の品評会にワインバーグ氏が向かいます。ワインバーグ氏は馬に慣れていなかったので、馬に対して身の危険を感じておろおろしていました。逆に、ワインバーグ氏は大型犬を調教した経験があったのですが、今度はその友人が大型犬を見て怖がりました。このお話の意味するところとは?

ワインバーグ氏が大きな馬を見て怖がる様子を見て、彼の友人は「大きいことは馬ではないよ」といいました。馬の調教師は何十という特性を使い分けて馬を一頭一頭品定めします。それゆえ、「大きい」だけが馬の特徴ではないということになります。一方、大型犬を怖がる友人が「あの歯を見てくださいよ、私を生きたまま食っちゃうかもしれないじゃないですか」と言ったことに対して、ワインバーグ氏は、「犬の姿勢としっぽをブンブンと振っているところを見れば、あなたを噛むわけがないと分かりますよ」と返します。

これは、人とは、自分が良く正体を知らないものに対し、目につく特徴だけでその対象そのものを定義してしまい、それ以上の特性や属性を歯牙にもかけないことの危うさを教える例え話だったわけです。

ワインバーグ氏はこれを「レッテルの法則」と名付けました。

われわれはたいがい、商品ではなくレッテルを買う。

と同時に、同書では、言語学者や哲学者の次の言葉を引用しています。

事物の名称は事物にあらず。

われわれの傾向として、初めて出会ったものに対し名前(レッテル)をつけてしまいがちで、次からその対象物を見る際には先に貼ったレッテルが真正のものであると思い込むクセがあるといいます。馬の調教の経験があっても、大型犬に慣れていなければ、最初に目に入るのはむき出しの歯だけで、その歯が自分を噛むんじゃないかと必要以上に恐れてしまう。犬=歯というレッテルを貼ってしまっているから、というわけです。

その道のエキスパートは、状況の様々な面を落ち着いてみることができますが、初心者は、馬を見れば「大きい」、大型犬を見れば「歯」にしか目がいかず、物事の本質を見極めるのが難しいということになります。

残念なことに、本書で好例として例示されていたのが「エスキモー(現代ではちょっと範囲が異なるが「イヌイット」と呼ぶことが推奨されている)」は生活に大きく影響を及ぼす「雪」を意味する言葉がとてもたくさんある、という事例が紹介されていましたが、これは一部に誇張があるようです。現代生活では便利になったネット検索で調べてみると、それでも16種から20種程度はあるようです。「粉雪」とか「ざらめ雪」というのは、2つの言葉の合成語だから、こういうのはカウントしないでですよ。

通説を少し割り引いたとしても、エスキモー(イヌイット)の人たちは、自分の生活に深くかかわる「雪」そのものを表す言葉を何種類も使い分けている。それを見習って、コンサルタントも、クライアント先で最初に目についた現象や事象に対して、最初に頭に思い浮かぶ言葉を用いて、「これは●●の問題だ」とレッテルを貼ることをせずに、きちんと問題を定義しなさい、とワインバーグ氏は説いているのです。

うーん、名前を付けるのと、問題を定義するのは本質的にどう違うんだろうか? ですけどね、コンサルティングの現場で、コンサルタントから「これは●●という問題ですね」と、何らかの名前を付けてもらうと、今まで判然としなかった事象について、すっきりした、と胸をなでおろすことができるクライアントもいたりして。それは、ちょっと前までの日本でも、神羅万象で摩訶不思議な現象について、「神隠し」とか「かまいたち」とか、現象や妖怪の名前を付けてそう呼ぶことによって安心を得る、というのは、普通に生活の知恵でやってきたという事実もあるわけで。(^^;)

こういうのはコンサルタント特有の「屁理屈」とでも命名しておきましょうか。

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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